人間の負の感情は鬼にとっては蜜の味


この小説で醍醐味の一つが少女に擬態した鬼の心の葛藤が繊細に描かれている点です。友の存在がそれに大きく寄与し、鬼の心に大きな揺さぶりをかけるのです。

概説しますね。
鬼は人間の「心のこぶ」を食べて生きる存在。それは、嫉妬、怒り、孤独、後悔……人間たちが抱える負の感情は、鬼にとって甘い蜜のようなものであります。

今回人間に成りすました鬼・灯(あかり)が狙っているのは普通の「こぶ」ではなく、『薔薇色の福耳』というもっと特別なもの。

それは生の福耳で、直接口に入れるのが最も美味という垂涎の的。
それをもつ人間は極わずかでありながら、灯の友・東雲めいがそれを持っているのを見つけるのです。

しかし、福耳を奪えば彼女との関係は終わることを灯は恐れていました。それに追い打ちをかける鬼の欲望が勝ろうとめいに襲いかかろうとする描写に圧倒されます。

灯の本能とめいの理性とが交錯する。
めいの願いは灯の欲望に打ち勝つことができるのか?
その先の展開を是非あなたの目で確かめてみてください。
きっと鬼の気持ちが心の駆け引きからわかることでしょう。

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