異星にいこうね

クラスメイトだった彼女は普通の人に見えた。

鈴の音のような声が特徴的で、話していればすぐ彼女とわかる。

彼女は普通に恋をし、普通に結婚し、そんな感じで人生を終えて行くと思っていた。


彼女が地球の者ではないと知ったのは偶然だ。

暇で公園に行くと、彼女はそこで見慣れぬ機械を持っていた。ふと、気になりそれが何か聞いてみた。

「ん?これ?これは、ーーーーを調べてるの。」

「え?何を調べてるって?」

「だから、ーーーーを調べ……」

彼女は少し戸惑った顔をしていた。

「あ、そっか。そう言っても、聞き取れないね。」

「とにかく、私の星では必要な事を調べてるの。」

「私の星?星ってどういうこと?」

「ん?星は星だよ。地球じゃない惑星」

冗談なんだろう。なにかはぐらかしたいのか。

「信じてないでしょ~」

「えっ」

「そうだよね。うん。ま、いっか。ちょうど調べ終わったところだし。じゃ、また学校でね。」

「えっ、おい!」

俺は何か話そうとしたが、話す前にもう彼女は去っていた。


次の日、学校に行くと彼女は友達と普通に話していた。

昨日の彼女は何だったのか。俺には分からない。宇宙人とかそういう者がいるなんて。俺には分からない。というか、何かの聞き間違いだろう。そうに違いない。というか会ったという事実も俺の見間違いで違うものだろう。

なぜなら、彼女は普通だから。強いて言うなら少し可愛げがあるくらいだ。そんな人間が宇宙人?何かの冗談だろう。


そんな事を考えてたら放課後になっていた。

俺は何も無かったかの様に帰ろうと思った。その時だった。

「ねぇ」

鈴の音の様な声が聞こえた。

俺はその音がした方向を向いた。

彼女が後ろに手を組んで立っていた。

「今日も公園に来るの?」

見間違いでも、記憶違いでも無かった。

俺はどう答えればいいか分からなかった。

宇宙人なんて冗談だろ。

俺は彼女のことを黙って見ているしかできなかった。

「一緒に公園に行こっか」

俺はどうしようもないから、彼女に着いていった。


公園に着くと、昨日見たあの機械を彼女は取り出した。

「これはね、空に向けて使うの」

そうやって彼女は実演してみせた。

しばらくすると、その機械は音を立てた。

彼女は機械を見て、不思議そうな顔をした。

不具合でもあったのだろうか。

「あ、私、もう行かなくちゃ。バイバイ」

と彼女は足早に公園を去っていった。

俺は、何も話すことができなかった。


次の日も公園に行った。

彼女は昨日と同じく、機械を空に掲げていた。

「君は本当に宇宙人なのか?」

俺は勇気をだして聞いてみた。

「どう思う?まぁ信じてなくてもどっちでもいーよ」

彼女は笑っていた。

その機械をの音が鳴ると相変わらず彼女は不思議そうな顔をしていた。


2週間ぐらいそんな感じで彼女と公園で測定(?)をしていた。

その間、話をしたが、不思議な話はしなかった。

彼女はふと、

「空が青いのって不思議だよね」

と呟く以外は、ほとんどたわいのない話をしていた。


そして、その2週間後、朝起きると、家族が死んでいた。血を流していた。

警察を呼ぼうとした。電話が繋がらない。

誰かに助けを呼ばなければ。そう思って外に出た。

「おはよー」

聞き慣れた鈴の音の声。

下を向くと彼女がしゃがんでいた。

彼女は俺をみるとすぐに立ち上がり手を出した。

「一緒に異星にいこう!」

俺は何が起きているのか分からなかった。

「俺の親父とお袋が死んでんだよ!そんな馬鹿なこと言ってる場合じゃないんだ!救急車か警察呼んでくれよ!」

「ん?あぁ。それ私がやったの。」

鈴の音がどす黒く感じた。俺は後ろに下がった。ドアの冷たい感触が背中に伝わる。

「もう、家族と一緒にいなくてもいいの。私が一緒にいるし。困ったら私が助けるよ。衣食住に関しても考えなくていいよ。だから一緒にいこう?」

何を言ってるのか分からない。

彼女が一歩前に出る。無理やり俺の手をつかんだ。

「いやだ!」

やっと俺は言った。

「何だよそれ。親殺した奴と一緒にいたいわけないだろ!頭おかしいのかよ!」

彼女はキョトンとしていた。

「おかしい?そうなの?よく分からない。何でそんなに声を荒げるの?」

分かった。全然話が通じてない。何を言っても無駄な気がする。

「一緒にいこう?」

しきりに言ってくる。化け物だ。

「だから、嫌なんだ!」

俺はついて行ったらどうなるかもうわからなくて怖い。断るしかなかった。何回も手を振り払った。

しばらくすると、

「もういいよ。知らない!」

彼女はまるで友達とちょっと喧嘩をしてしまった様な感じで俺に言ってきた。

彼女は何かに乗ってどこかに行ってしまった。



俺は警察を呼んだ。

両親が死んでいると。

でも、部屋の中をみると両親はいなかった。

数日後、海に行って溺れていたことになっていた。

学校で彼女の名前を言っても

「そんな人はいない」

と言われた


彼女は普通ではなかった。

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二次創作 シアン @HCN_solt

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