二次創作

シアン

ミルククラウン・オン・ソーネチカ

少女は歩いていた。ランドセルを背負っていることから、学校の帰り道だろうか。そのランドセルも薄汚れていた。ため息をつき、空を見上げる。カラスが何匹か電線の上に止まった。それを見て、少女は首を下ろして、また歩き始めた。


少女は家に着いた。家はボロいアパートの一室。玄関を開けるとゴミが散乱していることが、すぐにわかる。私用の帰宅を迎える人は誰もいなかった。家の中にも誰もいなかった。


いまならママがいないから…みてもいいよね。わたしのたからもの。パパとママとわたしのしゃしん!これは3にんでゆうえんちにいったときの。これをママのまえでみちゃうとおこって、すてられちゃうから…わたしのひみつのたからものなの。つらいときは、パパとママといったゆうえんちのことをおもいだしてがんばるの!それでもつらくなることもあるけど…あのころは、わたし、おひめさまみたいなきもちになれたの。だから、いつかまた、おひめさまみたいになれるようにがんばるんだ!


玄関の扉が開く音がした。そこにいたのは少女の母親だろうか。濃い化粧に派手な服を着ていた。しかし、服の裾はよく見ると部分部分で汚れている。


たのしいことをおもいだしていたら、あっというまに、くらくなっちゃった!

…ん?ドアがあくおとがした!ママだ!


バシッ


何かを叩く音。

「あんたのせいで…あんたがいなかったら、私はあっという間に結婚して幸せになれたのに!」

母親らしき人が叫ぶ。彼女は少女を蹴っていた。


いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい

。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。どうして?わたし、なにかわるいことしちゃった?わたし、いなければよかったの?ゆるしてください。わたしのいてもいいところをください。いたい。いたい。


…バタン!


ママ、またどこかにいっちゃった。

わたしがいるせいで、こんなことになっちゃう。わるいこなのかな。いたいな。いたい。

ゆうえんちにパパとママといってたころにもどりたいよ。パパとママと、てをつないで、おひめさまのきぶんになれたころにもどりたいよ。

もういっかいなりたいな。

おひめさま。


…は!ねちゃった!あさだ!がっこうにいかないと!


少女は慌てて学校に行った。

学校には間に合ったようだ。


いつの間にか、授業が始まっていた。

少女は先生に怒られていた。

「なぜ、お前はいつもそうなんだ!お前は…」

くどくどくどくど…

先生はずっと少女に向かって怒号を飛ばした。


どうしていつもできないんだろう。がんばってもできない。つらい。せんせいにも、ママにもずっとおこられて、もうわたしなんてだめなのかな。

もうむりだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!


少女は教室から走って出ていった。


もういや!あのときにもどりたい!おひめさまみたいになれたころにもどりたい!いや!どうしていつもこうなの!どうすればいいの!わからないよ!


少女はいつの間にかアパートに着いていた。

部屋の扉は開けることができた。

部屋をみると、天井から人がぶら下がっていた。


「マ…ママ…?」

少女はただ立っていた。

少女はあの頃のお姫様になる事は、もうできないだろう。


ミルククラウンは一瞬でなくなった。



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