第2話 隠された取引
夜の帳が東都テレビのビルを包み込み、街のネオンが幻想的な光を放っていた。芹沢孝次郎は、局を出てすぐにタクシーを拾い、スターライトプロのオフィスへ向かっていた。
助手席には、警部補・斉藤が座っている。
「本当にここまで踏み込んで大丈夫なのか?」
斉藤は低い声で尋ねた。
「時間がない。」
芹沢は短く答え、スマートフォンでスターライトプロに関する過去のニュース記事をスクロールする。「この事務所はこれまでに何度もスキャンダルの噂があったが、その度に火消しが入っている。異様なほどに、な。」
「まあ、芸能界なんてクリーンな世界じゃねえが……。」
斉藤はタバコに手を伸ばしかけ、思い直してポケットに戻した。「だが、あの女子アナが関わったとなると、話は別か。」
「白石優奈が何を知ったのか、それが鍵だ。」
芹沢の視線が、夜の街を流れる光をじっと捉えた。「今のままじゃ、局内の証言だけでは埋められないピースが多すぎる。直接、事務所の動きを見る必要がある。」
タクシーは、港区にそびえるガラス張りの高層ビルの前で停車した。
「スターライトプロ」と書かれた看板が、洗練された字体で掲げられている。
「ここか……。」
斉藤が腕を組み、ビルを見上げた。「いかにも金が動いてそうな場所だな。」
芹沢は、スマートフォンの画面をスクロールし、スターライトプロの役員リストを確認した。
「この事務所の代表、神崎達也。元々は広告代理店のやり手だったが、十年前にこの芸能事務所を設立し、急成長させた。」
「裏で相当な取引をしてるんだろうな。」
斉藤はビルの入り口付近をじっと観察した。「……ん? あの男、さっきから妙な動きをしてるぞ。」
芹沢も視線を向ける。スーツ姿の男が、周囲を気にしながら裏口へ消えていくのが見えた。
「社員か?」
「いや、あの男……」
斉藤がスマホで検索をかけ、顔認識ソフトを使う。「……飯田康弘。東都テレビの映像技術部の社員だ。」
「飯田?」
芹沢の目が鋭く光った。「なぜテレビ局の技術者が、アイドル事務所の裏口へ?」
二人は直感的に、これは偶然ではないと確信した。
「ついていくぞ。」
芹沢が歩を進める。
スターライトプロの裏手は、静寂に包まれていた。倉庫のようなシャッターが閉ざされ、その隣には黒塗りの高級車が止まっている。
芹沢と斉藤は、物陰に身を潜めながら、裏口の様子を窺った。
そこには、飯田ともう一人の男が立っていた。
「おい、証拠はちゃんと消したんだろうな?」
男の声が聞こえた。
「……問題ない。東都テレビのシステムから、例の映像データは完全に消去した。」
飯田の声だった。
「バカめ。消去しただけじゃ不十分だ。バックアップの確認は?」
「それも確認済みだ。ただ……」
「ただ?」
「白石優奈が、その映像を事前に持ち出していた可能性がある。」
その瞬間、芹沢と斉藤は顔を見合わせた。
「やっぱり、白石は何かを掴んでいた……!」
芹沢は心の中で呟いた。
「くそ……だから失踪したのか?」
男の怒りの声が響いた。「今さら持ち出されたとか言われても困るんだよ! もし外に漏れたら、俺たちだけじゃ済まないぞ!」
「分かってる……だが、どこに行ったかは分からない。」
「今、奴の家族や知人は誰か動いてるのか?」
「姉の美里が、探偵に依頼したらしい……。」
その瞬間、男の声のトーンが変わった。「探偵?」
「……心理学者探偵、芹沢孝次郎だ。」
「芹沢……?」
男の声が、明らかに警戒の色を帯びた。
芹沢は一瞬、わずかに息を止めた。
「奴に情報を掴まれたら厄介だな……。消すか?」
その言葉に、斉藤がわずかに身を乗り出そうとしたが、芹沢が腕で制した。
「焦るな……まだ情報が足りない。」
しかし、斉藤のスマホが小さく振動し、通知音が鳴った。
「……!?」
男たちが振り向く。
「誰だ!」
芹沢と斉藤は、一瞬の間にその場を離れ、建物の影に隠れた。
「クソッ、誰かに聞かれてたかもしれねえ……!」
「今すぐ確認しろ!」
足音が近づいてくる。
芹沢は斉藤を見つめ、静かに唇を動かした。
「逃げるぞ。」
選択肢
1.そのまま様子を見て、さらに情報を得る
•男たちが次に何をするのかを見極め、より核心に迫る証拠を掴む。
•リスク:見つかる危険性が高い。
•メリット:組織の全貌がより明確になる可能性がある。
2.いったん身を引き、飯田を個別に追跡する
•飯田を後で単独で追い詰め、証言を得る方向にシフトする。
•リスク:現場の情報を逃す可能性がある。
•メリット:リスクを最小限に抑え、確実な証拠を掴むことができる。
応援コメントへの選択番号記載依頼
「いよいよスターライトプロの闇に迫ります!
次回の展開を決める選択肢、1または2をコメント欄に記載してください。
締切は明日7時までです。
あなたの選択が物語の行方を決定します!」
読者様へのメッセージ
「ここまでお読みいただきありがとうございます! 白石優奈の失踪の謎が、ついに大きな組織の陰謀へと繋がり始めました。次回、物語はさらに緊迫した展開へと突入します。ぜひコメントで選択番号をお知らせください。あなたの選択が、このミステリーを導きます!」
『沈黙のステージ』: 「表は笑顔、裏は涙。華やかなテレビ業界で起きた女子アナ失踪事件。その真相に迫る心理学者探偵の知性と冷静な推理!あなたの選択が、真実を解き明かすカギとなる――。」 湊 マチ @minatomachi
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