朝起きたら火星が全て解決していた

らんた

朝起きたら火星が全て解決していた

 朝起きたら火星が全て解決していた。人類の飢餓も戦争も失業問題も何もかも。実は火星の重力は3分1なので火星移住には勇気がいる……わけではなかった。人類居住エリアにはグラビティ―ゾーンと言って地球と同じ重力がかかっているのだ。


 火星に旅行に来る観光客たち。一見すると地上用の航空機と変わらない。しかしこれは宇宙船なのだ。巨大な旅客機だ。1000人乗りなのだ。逆もしかり。


 もう石油とは無縁だ。火星の砂漠はナンヨウアブラギリが緑化していた。もう地球上の燃料はSAF燃料や水素なのだ。


 そう、もう石油などで争う事が無くなった。労働はすべてロボットが行う。そして膨大な食糧生産。少子化になっても問題なくなった。というか安心感からか地球の人口は90億人で止まり全世界の出生率も2.1で止まったのだ。


 「シートベルトをお締め下さい。地球に出発します」


 地球に行くのはもはや日本に例えるとグアムに行くようなものだ。なんせたったの3時間なのだ。火星は人類自治領としてどこの国にも属さない領土となった。かつて砂漠とドライアイスしか無かった火星とは思えない。


 シートベルトサインが消えるとロボットが機内食を運ぶ。3時間なので軽食にジュースなのだが。もちろん機内食のゴミもロボットが回収する。


 シートベルトサインが再び点灯した。


 「大気圏に突入します」


 すこしカタカタとなるがいつものことだ。地上の乱気流と変わらない。ただし外の光景はもう見えない。大気圏を超えると故郷だ。窓の外が再び見えるようになった。


 火星の誕生は「地球」の概念を変えた。地球はEUのような「地球連邦」という1つの国になったのだ。ユナイテッド・ステイツ・アースとなったのである。もう戦争など起きようがなかった。地球は小さい。今までなんでこんな星で醜い争いを繰り広げたのであろう。


 入星手続きを終えて故郷・日本に帰った。火星の生産物のおかげで地球上全てが豊かになっていた。


 「我、人類はすべての悲嘆を火星開拓で克服したり」


 人類は西部開拓の10倍の規模を成し遂げて国という概念すらも無くなっていた。


 今日も火星へ向かう旅客機や貨物機がひっきりなしに着陸・離陸する。

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