元ブラック会社員な精霊王の孫、気分転換に始めたのんびり里帰り配信がバズって人生激変する
縁代まと
元ブラック会社員な精霊王の孫、気分転換に始めたのんびり里帰り配信がバズって人生激変する
「おかえりなさい、ミナト!」
「おいおい、少し痩せたんじゃないか?」
十年ぶりの我が家で俺を出迎えてくれた両親は何も変わっておらず、不覚にも泣きそうになった。
いや、一切老けてなくて本当に何も変わってないんだけどな。
長い間人間界で暮らしていたせいか不思議に感じたが、疲れ果てた俺には優しい思い出の中にいるふたりと寸分違わない姿がありがたかった。
だって、またその思い出の続きを見せてもらえるみたいじゃないか。
俺、
祖父は精霊王、祖母は人間。
祖母との縁がきっかけで精霊界と人間界の交流が始まったと聞いている。
人間界でも精霊界の存在は認知されつつあったけれど、遠い異国の話のように扱う人間が大半だった。精霊もわざわざ移住する人はまだ少ない。
俺がそんな前例の少ない移住者として挙手したのは、祖母の故郷を見てみたかったから。そしてそこで暮らして肌で感じてみたかったからだ。
だから精霊王の孫だということも伏せておいた。
このなの大っぴらに話したら普通の暮らしなんてできなくなるからな。
若葉という苗字も戸籍発行の際に向こうで世話になったご夫婦から頂いた。
でもなんとか入社した会社では無茶振りや理不尽な叱責を繰り返され――気がつけば十年経っていたんだ。
クォーターなので肉体的には元気だが、体を壊すことなく何年も耐え続けたせいか精神的にはボロボロになってしまった。
だから会社を辞めて、少し回復したところで里帰りすることにしたんだ。
「まあ、そろそろ俺が老けないのを誤魔化すのもしんどくなってたし丁度良かったんだ。こっちでならよく眠れそうだし、少し休んだらまた別の仕事を――うわっ!?」
里帰りの経緯を話しながら夕食を食べていると、いつの間にか両親が涙も鼻水も垂れ流しながら泣いていた。
無言だったから全然気づかなかったぞ。
「ミナト、そんなところに戻らずこっちにずっと居ていいのよ! というかずっと居なさい、お父様もきっとそう言うわ!」
「そうだぞ、なにも苦労することだけが『良いこと』じゃないんだから」
「いや、でも……」
最低な経験ばかりしてきたけれど、折角繋がった人間界と縁を切るのは嫌だった。
それに……向こうで住んでみてわかったんだ。
人間たちはまだ精霊のことも、精霊界のこともよくわかっていない。
人間界は憧れの地だったけれど、精霊界は掛け替えのない故郷だ。そんな故郷をみんなに知ってもらいたいという気持ちが向こうで生活している間にふつふつと湧き上がってきた。
そのためにも縁を切って精霊界に引っ込むことはできない。
そう説明しても両親は心配げな顔のままだったけれど、俺を止めることはなかった。小さな頃から人間界に憧れていた俺をよく知っているからだろう。
「でも心配してくれてありがとう、母さん、父さん。……ひとまず今はこっちでゆっくりするよ」
心配してくれる人が傍にいる温かさを感じながら、俺は久しぶりの母さんの手料理に舌鼓を打った。
***
翌日、俺は久しぶりに会った幼馴染たちに質問攻めにされていた。
水の精霊であるアイリーニアは水色の髪をツインテールにした女の子で、十年前に別れた頃からずっと人間でいう十代中頃の姿だった。
橙色の瞳の中にはこぽこぽと気泡が舞っていて、まるで夕日に照らされた水中のように見える。
今日はタンクトップに薄手のカーディガンを羽織ったショートパンツ姿という動きやすそうな格好だ。活動的なアイリーニアにぴったりだったが褒める暇がない。
風の精霊であるウィンは白髪を長い三つ編みにした男で、いつも頭から長い毛が一房飛び出ている。人間社会に馴染んだ今の俺なら名称がわかるぞ。アホ毛だ。
その反面、銀色の瞳が覗く目元は切れ長で美男子だと思わせる。
ウィンは薄緑色のフワフワが付いたコートを着ていた。
アイリーニアと並ぶと違和感があるが、精霊は基本的に四季の変化に左右されないので春夏秋冬好きな服を着ていることが多い。
そんなふたりは俺の帰郷理由を知ると眉を吊り上げた。
「なんですかそれ! ミナトは悪くないのに!」
「いや、たしかに人間界の常識に疎くて迷惑もかけたから……」
「でも予習はバッチリだったろ、新入……社員? ってやつとそんなに変わらなさそうなのに、十年も態度を改めないのはおかしい」
アイリーニアもウィンもそう言って慰めてくれる。
やっぱり良い友達だなと思っていると、これからどうするのか問われた。
「しばらくはここで休むよ。ただ何もしないっていうのはな……またあっちに戻るつもりだから」
「呆れた。――でもお前にとっては大事な繋がりなんだな」
「そういうことなら……そうだ! これならどうですか!」
アイリーニアの目は名案が浮かんだと言っている。
そんな彼女の口から飛び出たのは、
「人間界で流行ってるっていう『配信』ってやつをやるんです!」
……そんな、今まで考えもしなかった案だった。
***
許可は恐ろしく簡単に取れた。
精霊王であるじいちゃんも俺が帰ってきた理由に怒ってくれたが、それでも俺の気持ちを鑑みて許可を出してくれたんだ。あと十年分のお小遣いをくれた。
ヤバい金額だったが、人間界の紙幣しか持っていなかったのでありがたく頂戴することにした。齢五千年を越えるじいちゃんからすれば俺はまだまだ小さな子供らしいのでセーフだろう。
そのお金で撮影機器を買い、配信環境を整えていく。
精霊界は自然豊かで、人間界でいうファンタジーな世界だが技術力は同等だ。
というか十数年前まで機械もなにもなかったが、交流が始まってから技術流入が著しく、それを魔法を交えて独自に発展させていった形になる。
ただし人間界のように沢山の人間を抱える大きな会社みたいな集まりは存在してなくて、みんな個々に仲間の役に立つことを突き詰めたり趣味に没頭したりしていた。
さっきの精霊界のお金の他にも物々交換をしたりもする。
魔電化製品屋をしている主人はウチの煮っころがしのほうが好みだったようだが、しぶしぶお金で交換してくれた。
「これ、人間界の電波にも乗せられるんですよね。すごいすごい!」
「明確には電波じゃないから、精霊保護法で犯罪にもならないし本当にすごいよな」
「え? 電波って勝手に使うと犯罪になるんです?」
電波法違反とかに引っ掛かると思う。
そう伝えるとアイリーニアは「こわ!」とシンプルな驚きの言葉を口にした。
なにはともあれ配信の準備も終わった。精霊界の住人は見る側になることはあっても配信する側になることは稀らしく、大手配信サイトにも精霊界をしっかり映した動画は見当たらなかった。
(人間界も悪い人ばかりじゃないし、少しでも楽しんでもらえるといいな……)
気分転換に始めたことだが、それで楽しんでくれる人がいたら嬉しい。
そう思いながら俺たちは小さな頃によく遊んだ聖樹の根元で簡単な自己紹介配信を行なった。時間は十五分程度。アーカイブも残るようにしておく。
最初だし知名度もゼロだから、付いたコメントはふたつだけだった。
『こんばんはー』
『これどこのスタジオ?』
まったくの無反応でなくて良かった。
スタジオじゃないですよー、と答えてからなにも返事がなかったけれど、まあそういうものだろう。少しずつ宣伝もしていこう。
そんな短い配信のアーカイブに異様な数の反応が付いていると気がついたのは、翌朝に目覚めてからだった。
「に、25万再生? まだ一日経ってないのに?」
「ミナト、精霊界の聖樹なんて初めて見たってみんな興奮してますよ!」
どうやら一部の精霊界好きのインフルエンサーがSNSで紹介したことで一気に拡散したらしい。コメントからはそこから来たというものがチラホラ混ざっていた。
本当に簡単な自己紹介と聖樹を映していただけだから、コメントでは色んな憶測が飛び交っていた。
なんだかミステリーものみたいな楽しみ方をされている。
「おっ、見ろよ。俺のことモデルみたいだって。アイリーニアは……小動物みたいで可愛いってあるぞ」
「そ、そんな微妙に喜びにくいことを。ほら、これとか可愛い、嫁にしたいって言ってくれてま――嫁ぇ!?」
アイリーニアがひとりでずっと騒がしい。
しかしこれは好感触だ。精霊界のいいところを紹介していって、人間のみんなに理解を深めてもらうきっかけになるかもしれない。
俺はふたりと一緒に次の動画を撮ることにした。
***
カメラをセットし、その前に立ってレンズの向こう側にいる人を思い浮かべながら撮影を開始する。
「どうも、みなさんこんにちは! 前回は沢山の反応をありがとうございます。皆さんに精霊界の良いところを沢山知ってほしくて、今日は俺たちの大好きなスポットを紹介することにしました!」
俺はそう言ってカメラを手に取り、ぐるりと周囲の景色を映した。
淡い光を放つ白くて可憐な花が咲く花畑だ。
ここも子供の頃にアイリーニアやウィンと共に遊んだ場所で、この花で花冠を作ると夜も出歩ける優れものだった。
「これは夢の花という花で、ただ光るだけではなく人の夢を吸い取って見せると言われている植物なんですよ」
そう説明するとコメントがついた。
大きくバズったおかげか今日はアーカイブにする前から視聴者数が多く、反応の量も半端ない。
配信についてのサイトではすべて拾わなくてもいいってあったけど、ついつい返したくなっちゃうな。
『CGくせー』
『こんにちは。吸い取るって怖いですね』
『アイリーニアちゃん今日はタンクトップか。いいとおもいます』
うーん、見てるところがみんなバラバラで面白い。
「でも吸い取るのは迷信なんです。本当はみんなの記憶を読み取って現実に投射してるだけなんで怖くないですよ。それにたまにですし!」
『怖い怖いw』
『原理が謎すぎる』
そんなコメントが大半だったけれど、どうやらツッコミって形なのか荒れている感じはしなかった。
楽しんでもらえてるなら何よりだ。
そんな感じで花畑を散策し、コメントでのリクエストに応じてアイリーニアのプロフィールを公開したり、ウィンの空中散歩を披露したりする。
ただ、ウィンが空中で半透明の鳥を捕まえてきた時は『逃がしてあげてー!』と懇願されていた。焼くと美味いことは今は伏せておこう。
二回目の配信はそうして終わり、終了後も通常の動画コメントが賑わっていた。
SNSのほうは登録してないので詳しいことはわからないが、そっちでも話題になっているようだ。
こうして俺は毎日好きに配信した。
長さも時間帯もバラバラだったが、リアルタイムで精霊界を覗けるのでそれもウケたみたいだな。
この辺りで『ミナトの配信部屋』なんていう微妙なチャンネル名から『精霊の覗き窓』というものに変更した。コメントで祝われたから結構見てくれてるみたいだ。
ちょっと放送事故のようなこともあった。
精霊界の森に住む白狐型の妖精がいるんだが、俺たちはその一匹にシロモフと名付けて可愛がっていた。ちなみに正式名はアイザック・シロモフだ。
そんなシロモフが突然飛び掛かってきて転倒したんだが――視聴者のみんなは突然のモフモフ生物の登場に湧き立っていたので、致命的な事故にはならずに済んだらしい。
『名前とかあるんですか?』
『名前聞きたい』
『なんで画面越しに撫でられないんだ…』
「名前はシロモフ。本当は人間界の本に載ってた偉人にあやかってアイザック・シロモフって名付けたんだけど、結局ここしか定着しなかったんですよね」
『アイザック・シロモフww』
『草』
『長いわ。好き』
それからシロモフも人気になり、毎回とはいかないがちょくちょく登場してもらうようになった。
シロモフも久しぶりに俺に会えたことが嬉しいのか、いつもご機嫌だ。
たまに最初みたいにはしゃぎすぎて俺を転倒させるが。
――そして、精霊界のいいところは風景や妖精の存在だけじゃない。
途中から許可を貰って知り合いの精霊たちを紹介することにした。
顔出しに関しては人間界だとリスクがあるが、そもそも精霊界は厳重なチェックを受けないと入れないので危険は少ないだろう。
それに何かあっても精霊のほうが強いからな。
まずはパンを焼くのが趣味で、余ったパンを売ってくれる火の精霊のパパリアさん。ふっくらとした普通のおばさんにしか見えないが、頭から生えた炎の角を映すとコメント欄がザワついた。
そして闇の精霊のカークライクさん。カークライクさんはモノクルをした落ち着いた男性で、星を読み占いを得意としている。占い希望の声が多かったので近々企画として出してもいいかもしれない。
あとは雷の精霊のアトラスさん。
何を隠そう、彼こそ魔電化製品屋の主人だ。つまり配信開始の恩人ってことだな。
そう紹介するとコメント欄に手を合わせる絵文字が流れる。
アトラスさんにはバナナに見えたのか「そういう文化?」と言っていて、それもちょっとウケた。人間界にそんな文化はないぞ。
沢山の人に楽しんでもらえてる。
そう感じることで心も癒え、夜もぐっすり眠れるようになってきた。
――帰郷してすぐに眠れると思ったんだが、癖になった不眠症はなかなか治らなかったんだよな。眠りの精霊に助けを乞おうか迷っていたけれど、これなら大丈夫そうだ。
ただ、それを話題に出してしまったことがある。
飲み会配信というものがあると知って、アイリーニアもウィンも都合が合わなかったから夜にひとりで飲みながら配信した時のことだ。
楽しんでもらえてて嬉しい、やっと眠れるようになった。
そんな言葉から理由を問われ、今まで伏せていた帰郷理由をポロッと零してしまったんだ。会社名は出さなかったけど、これ怒られるんじゃないか?
翌朝になってそうビクビクしていたものの、好意的な反応が多くてホッとした。
もちろん辛辣な言葉もあったが、上司の叱責に比べたら全然怖くない。
そんな頃だ。
もうひとつのトラブルが起こったのは。
***
『これって精霊界の許可得てるのか?』
そんなコメントが付いたことを皮切りにコメント欄で口喧嘩が発生していた。
精霊界は配信を禁止している。だから今までほとんど見かけなかった。それを勝手に流すなんて、いくらバズっても犯罪だ――ということらしい。
その場はコメント欄を閉鎖して鎮め、お知らせで軽く触れておく。
ただ許可はありますよという説明だけでは信じてもらえなかった。しかも今度は複数のアカウントが指摘するコメントを繰り返し、常連さんがそれに怒ったり反応するなと宥めたりしている。
「これはダメじゃないか?」
「だよなぁ……」
「ミナト、はっきり言っちゃえば良いんですよ! 精霊王の孫で、お祖父様からきちんと許可を得てますって!」
そう、配信を開始しても精霊王の孫だということは伏せていた。
それは精霊の立場から見ても「これを知られたら色眼鏡で見られるかも」と危惧することだったからだ。そしてそろそろ大丈夫かなと思い始めてからも機会を失っていた。
ただ、こうなってしまったのも俺がはっきりとしなかったせいでもある。
普通は精霊王から許可を貰ってるなんて思わないよな。
それでもみんなの反応が変わるんじゃないかと心配に思っていると、ウィンが苦々しい顔で携帯端末を見せてきた。これはアトラスさん製の携帯端末だ。
「俺な、じつは色んなSNSに登録して反応を追ってたんだ。人間界でいうエゴサってやつ? お前に危害を加える奴がいないか心配でさ」
「……! いや、でも精霊界なら――」
「でもお前はいつか向こうに戻るんだろ。ほら、こういう変な奴らも湧いてるんだ」
見れば『ミナトは犯罪者。配信見てる奴も同罪だろ』『警察は何してるんですか』『サイトの方で通報しようぜ』というポストの他にも、それこそ犯罪めいた悪意満々の言葉が並んでいる。
しかも人間界の若葉南登だということまで晒されていた。
顔でわかったんだろうか。こいつは人間なのに精霊界で好き勝手やってると思われているらしい。
ウィンとしても見せたくはなかったみたいだが、さすがに放っておけなかったらしい。だって名指して殺害予告まであったんだ。そのポストには『俺がやったるw』という返信も付いていた。
それがひとつやふたつじゃない。
これはちゃんとケジメをつけないといけなさそうだ。
「――わかった、伝えるよ。ただし、ちゃんとみんなが楽しめる形で、だ」
***
そうして迎えた次の配信の日。
始まってすぐに映し出されたのは豪奢な建物だった。ただしそれは巨木の一部と融合していて、まるで根に抱かれているかのような建物だ。
それは精霊王である祖父、エクサリオスが住む場所。
つまりじいちゃんちである。
そう説明すると早速様々なコメントが付いた。
『俺の知ってるじいちゃんちじゃない』
『精霊王?』
『精霊王って言った?』
『樹齢何年なんだろ』
『CGっぽい』
CG派は今日も元気だ。初回からずっと見てくれてるのを俺は知ってるぞ。
屋敷の中に入るとイスに腰掛けたじいちゃんの姿が見えてきた。
じいちゃんの身長は五メートルくらいある。すぐに『遠近感おかしすぎwww』というコメントが付いた。俺もそう思う。
じいちゃんは新緑の髪と髭から様々な植物を生やした姿をしていて、しわしわな尖った耳に沢山の耳飾りを付けていた。浅黒い肌にも沢山のしわが刻まれていて年輪みたいだ。
生きた樹木のような巨大な精霊、それが俺の祖父だった。
「じいちゃん、今日は時間を取ってくれてありがとう!」
「いいんじゃよ、かンわいいミナトのためなら一週間や一ヶ月、一年でも一千年でも時間を取っちゃうぞぉ!」
『キャラ崩壊早』
『予想外の可愛いおじいちゃん!』
『一気に桁が飛びすぎである。』
『というかマジで精霊王の孫?』
そう、じいちゃんは可愛いのだ。
それはそれとして俺は本題に踏み込む。「じいちゃん、じつはこんなことがあって」とオブラートに包んで説明すると、じいちゃんは糸のように細めていた目をカッと開いて「許可なら出しとるわい!」と吠えた。
オ、オブラートに包んでなかったらヤバかったかもしれない。
そこで仕切り直して俺は頭を下げる。
「俺が色々と伏せていたせいで混乱を招いてすみません。俺は――ミナト、そして若葉南登は精霊王の孫です。クォーターなので四分の一は人間ですが、その」
俺は少し緊張しながら言葉を続けた。
「……人間界に憧れて、そちらで十年暮らしました。今は人間のみんなに精霊界を知ってもらいたくて配信しています。これからも宜しくお願いします!」
そうしてもう一度頭を下げる。
恐る恐るコメント欄を見ると――驚愕するコメントの中に、たしかに俺を応援してくれる言葉が混ざっていた。それがどんどん増えていく。
ああ、と理解する。
人間界に行かなきゃ縁が切れると思っていたけれど……こうして繋がることもできるんだな。
俺は鼻を啜って笑みを浮かべ、いつもの言葉を発した。
「ありがとうございます! ……また次の配信で会いましょう!」
***
それから荒らしの犯人たちは人間界の弁護士や警察に任せて捕まえてもらった。
俺のファンにも嫌がらせをしていたので手を抜くつもりはない。
ただ驚いたのは――その犯人が辞めた会社の元上司や先輩だったことだ。今はこってりと絞られているようなので、今後は関わってこないことを祈ろう。
そう言うと「絶対大丈夫だろ、夢の精霊に頼んで毎晩エグい夢見せてもらってるからな」とウィンがにっこりと笑った。
そんなこんなで今日も配信を続けていく。
人間界との繋がりを感じながら。
「さあ、精霊界の紹介はまだまだ続きます。今日の配信もお楽しみに!」
元ブラック会社員な精霊王の孫、気分転換に始めたのんびり里帰り配信がバズって人生激変する 縁代まと @enishiromato
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