ロッカールーム

@GYRO95

第1話

俺達の夏が終わった。


いや、正確には3年生の引退が決まった。


今日、今この瞬間に。。。


俺達の高校は

決勝トーナメント常連高校。

そんな高校が予選敗退。


実際には俺は2年だし、まだ来年もある。

でも、今いる3年生とはもう一緒にプレイが出来ないと思うと

自分が引退するのと同じくらい悲しいし悔しさがある。

ましてや、あの時俺が決めていれば

延長PK、流れだって変わっていたはず。

チームのみんな、コーチ、監督にも期待されていただけに気持ちは奈落の底にまで落ちていた。


そこに

監督の話を終えた3年キャプテンの直也が

ロッカールームに入ってきた。


すぐに椅子から立ち上がり

「直也先輩、すいません、、、!

お、、、俺があのチャンスに決めていれば、、、!!」

蹴人は情けなくなった。

泣いている姿を隠しながら出た言葉はよくあるフレーズだっただけに更に情けなくなった。


「蹴人、泣いてんのかよ!?」

先輩は笑いながら

「お前のせいじゃないだろ?他にもチャンスがあったしな。」

そう言うと立っていた蹴人の隣に座って持っていたスポーツドリンクを飲んだ。


「でも!あの場面は、、、!」

蹴人が続けようとすると

直也はそれを遮るように

ニヤつきながら

「あー!確かにあれはお前のせいだわ!あれ決めたてらなー!エースの蹴人がなー!」

そういって蹴人を椅子に座らせた。


「よく聞けよ、蹴人。一発勝負なんて何があるか

わからないんだよ。勝負事に絶対はないからな!

相手は俺らより勝負運があった。

運を掴むのも努力しないと巡り会えない。」

蹴人は小さく頷く。


直也は続けて

「絶対がないからこそ

絶対に近づけるために俺たちは練習すんだ。


どんな時でも努力した分は裏切らない。

次に絶対繋がるから。」


直也は立ち上がり

「来年優勝してるチーム見せてくれよ、

キャプテン!」

蹴人は突然のキャプテン任命にびっくりした様子で

「俺がキャプテンですか⁉︎いや、俺は」


そう話してる途中に直也はロッカールームを出て行ってしまった。

その後ろ姿は泣いている姿に見えた。


そして次の年、宣言通り東京F高校は優勝。

蹴人はプロにスカウトされサッカー選手になり

海外で活躍する選手にもなった。


そして、

今日、日本代表として日本に帰る。

直也の言葉を心に秘めて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロッカールーム @GYRO95

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画