【死後】

 ここは天国だろうか、真っ白な空間に大きな樹が見える。


 傍から誰かに声をかけられた。


「よかった、やっとこうして話ができたね」


 まるで過去に戻ったように、そこには在りし日のアンドレアスの姿があった。


「ボクは娘が独り残されないよう、キミが事故で亡くなるのを防ぎたかったんだけど……。それはどの世界のボクも同じ想いだったみたいだ。それと、ボクらの娘にも一度会ってみたかったかな。まぁ、どちらも上手くいかなかったんだけどね……」


 そんなことはどうでもいい、アンドレアスとまた会えたのだから……!


 私はアンドレアスに飛びつく様に抱きついた。


「キミがそんなになるまで苦労をかけてしまって……本当に申し訳ない……。運命を変えようとして余計に歯車が狂ってしまったみたいだ……」


 アンドレアスが何かを謝っている。


 私は彼と再び会えただけで、それだけで十分だ。


 そうだ、もうユキナに黒衣の振り袖の贈り物は届いただろうか。


 ごめんない、サヨウナラ。愛するアンドレアスと私との最愛サイアイの娘。

 愛しているわ、ユキナ。おやすみなさい、幸せになるのよ……。


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篠崎雪子の贈り物 ガエイ @GAEI

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