青の都の秘密
@yuuyuu1010
青の都の秘密
サマルカンド。青の都と呼ばれるこの街に、商人アヤズは染料を求めてやってきた。
砂漠を越え、キャラバンと共にたどり着いたこの地には、彼の夢があった。
「世界一美しい青を手に入れる」
それが彼の目標だった。
青の輝き
朝日が昇る頃、アヤズはレギスタン広場に立っていた。
目の前に広がるのは、青いモザイクで覆われた三つのマドラサ。
そのタイルは、太陽の光を受けるたびに色を変えていく。濃い紺から鮮やかな空色、そして黄金が微かに混じる青。アヤズは思わず息を呑んだ。
「これだ。この青だ。」
彼は確信した。この街に来た理由は、この色を手に入れるためだった。だがその青を生み出す秘法は、街の誰もが口を閉ざして語ろうとしなかった。
秘密の工房
ある夜、バザールの裏通りで、アヤズは噂を聞いた。
「古い染色家が一人、この街の青を知っているらしい。」
彼が辿り着いたのは、小さな工房だった。薄暗い店内に入ると、染色家のジャムシード老人が待っていた。
老人の前には大きな壺があり、その中に湛えられた液体が仄かな青緑色を放っている。
「青の秘密を知りたいのか?」老人が低い声で問う。
アヤズは頷いた。
「その青は、この街の宝だ。だが簡単に手に入るものではない。素材が必要だ。それは、砂漠に咲くイスクンダルの花だ。」
砂漠の旅
アヤズはすぐに旅立った。砂漠の夜は凍えるように寒く、昼は命を奪うほどの暑さだ。
だが、彼の心を支えたのは、青の記憶だった。廟群のモザイク、バザールで輝いていた絹の布。それらすべてが、彼を突き動かしていた。
数日後、彼はついにその花を見つけた。
それは月明かりの中で青白く光り、まるで空そのものを閉じ込めたような美しさだった。
彼は花びらを慎重に摘み取り、それを持ち帰った。
青の復活
ジャムシードと共に、アヤズは花びらを染料に加工した。
その染料で染め上げた絹は、サマルカンドの青空と寸分違わぬ色を放っていた。
街中がその美しさに息を飲み、失われた青はこうして復活した。
「この青は、ただの色じゃない。」ジャムシードは言った。
「それは、この街の魂そのものだ。」
終わりに
アヤズはバザールに立ち、サマルカンドの青で染められた絹を広げる。
それを見た旅人たちの目が輝く。
「この青は、どこで手に入れた?」
アヤズは微笑む。
「サマルカンド。それだけで十分だろう。」
青の都。その名は、こうして未来永劫、語り継がれていくこととなった。
青の都の秘密 @yuuyuu1010
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