エピローグ

 逃走した強盗団の一味は無惨な死体となって発見された。車は電信柱に激突していたが、運転席と助手席に座っていた男二人がとても衝突事故とは思えないほど損傷を受けていた。


 どちらも口が耳元まで裂けていて、両脚がなかったからだ。警察は猟奇的な殺人も視野に入れて調査したが防犯カメラには不審者は一切映っていなかった。不可解な事に何の障害物もないのに車は急にカーブをして激突していたのだ。


 ドライブレコーダーも調べてみたが、男達の絶叫や命乞いをしているような声が聞こえた。しかし、肝心の映像には何も映っていなかったらしい。


 また僕の家の中で彼女達に襲われていた強盗団三人は河川敷に転がっていた。死に方もバラバラで、一人は失血死、もう一人は溺死、最後は窒息死だった。


 警察は襲われた家の主である僕を疑ったが、防犯カメラや指紋も僕らしき証拠は一切出てこなかったので、容疑者から外された。


 ネットでは『怪異の仕業』と騒いでいたが、時が経つに連れて別の事件の方に関心が移っていき、この事件は過去の遺物となった。


 僕の命を救ってくれた彼女達とは今も仲良く暮らしている。大きな屋敷で一人で住むのは寂しかったが、彼女達と一緒にいると心がなごむ。夕方から夜しか会えないけど。


 彼女達も僕と接して以来、ある変化が起きていた。社会に出ようという意志を持つようになった。


 踏切系の彼女と髪長の女性は家事が得意らしく、メイドみたいに熱心にやってくれていた。髪長の女性は顔をかきあげてゴムで結めば端正な顔立ちの女性なので、買い出しに行かせたりしている。踏切系の彼女もおめかしして車椅子に乗せれば、普通の人と大差変わりないので、髪長の女性が押して出かけたりしている。


 花子さんは見た目は子供だが、大人が棄てた同人誌を見た影響で、念じれば大人にも女子高生にもなれるらしい。なので、好奇心の赴くままに昼間はコンビニ、夜はキャバ嬢で働いているらしい。


 メリーさんも花子さんと同様、人間界に適応できるらしく、コールセンターで働いている。噂によると彼女が対応したクレームはすぐに収まるらしい。


 口裂け女はマスクを外さなければ普通に社会で活動ができるので、スーパーの鮮魚売り場のパートをしている。長年人の頬を裂けまくってきたおかげか、どんな魚の腹でも容易く裂くことができるらしく、釣り好きの人達から重宝されていた。


 そして、給料日が来たら家賃として支払ってくれている。別にそんな事をしなくてもいいのにと思ったが、居場所を作ってくれた僕への恩返しのつもりらしい。


 それにしても闇バイトの標的にされている事に気づいてから、各地の都市伝説の情報を調べて、彼女達を味方にさせて我が家を守ろうと考えたのは正解だった。


 やっぱり、頼りになるのは警察ではなく異次元の存在だね。



 完

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ホラー系女子の落とし方 和泉歌夜(いづみ かや) @mayonakanouta

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