第8話 新たな光~地方公演の成功と秋葉原ファイナルへの道

七瀬ひかりが所属するグループは、ここ数ヶ月で目覚ましい変化を遂げていた。かつては秋葉原での定期公演を中心に活動していた彼女たちだったが、運営方針が変わり、新たに地方公演が組まれるようになった。それはグループの人気が徐々に広がりつつある証でもあった。


地方公演は、週末を中心に日本全国で行われた。運営側にとっても、メンバーにとっても未知の挑戦だった。東京以外の地域で、どれほど観客を集められるのか。果たしてその努力は実を結ぶのか――誰もが期待と不安を抱えていた。しかし、結果は想像を超えるものだった。


会場に足を運ぶファンの数は、ひかりたちが予想していた以上に多かった。地方公演の初日、ステージの幕が上がると同時に、観客席から大きな歓声が上がった。客席を埋め尽くす人々の姿を見たひかりは、胸の中に温かな感情が広がるのを感じた。


「こんなにもたくさんの人が私たちを待っていてくれたんだ……。」


その光景に驚きながらも、彼女はすぐにパフォーマンスに集中した。ステージ上で踊り、歌い、笑顔を振りまくたびに、観客たちがそれに応えるようにペンライトを振り、声援を送ってくれる。その一体感がひかりの胸を熱くさせた。


地方公演が成功した背景には、日頃から地道に行っていた配信公演の存在があった。グループは定期公演をライブ配信し、地方や海外のファンにもアプローチしていた。SNSを通じて広まったその配信映像をきっかけに、「生のパフォーマンスを見たい」と思ったファンたちが、地方公演の会場に足を運んでくれたのだ。そして勿論、関東圏から遠征してくれたみんなの姿も見えた。


ライブ後の物販やチェキ会も盛況だった。観客の中には、「配信を見てファンになりました」という新規のファンも多く、ひかりたちはその声を直接聞くたびに、努力が報われている感覚を覚えた。ひかりもチェキ会でファンと触れ合う時間を大切にしていた。


「ひかりちゃん、今日のライブ最高だったよ!」


「地方に来てくれてありがとう。ずっと応援しています!」


そのような言葉をかけられるたびに、ひかりは胸の奥に小さな光が灯るのを感じた。かつてセンターだった頃のような大勢の視線を浴びるわけではない。それでも、自分の存在を認めてくれる人たちがいる。その実感が、彼女の心を強くしていた。


地方公演の成功を受け、迎えたのは秋葉原でのファイナル公演。これは地方公演を締めくくる、グループにとっても重要なステージだった。その前売りチケットは販売開始と同時に売り切れ、当日は立ち見客が出るほどの盛況ぶりを見せた。


ひかりたちは会場に入った瞬間、これまでにない高揚感を感じていた。楽屋ではメンバーたちが互いに励まし合い、準備を整える。運営スタッフからも「今回の公演はグループのこれからを占う重要な舞台だ」と伝えられ、その責任の重さを感じつつも、全員が闘志を燃やしていた。


ステージに立つ瞬間、ひかりの心には期待と緊張が入り混じっていた。会場が暗転し、オープニングの音楽が流れ出す。その音と共に、観客たちの歓声が一気に高まった。ペンライトの光が会場全体を彩り、その景色にひかりは思わず息を呑んだ。


「ここにいる全員に、私たちの全力を届けたい……!」


センターではない2列目のポジションから見る景色は、かつてとは異なっていた。それでも、ひかりは力を尽くした。振り付けの一つ一つに感情を込め、歌声を全身で伝える。その姿勢に応えるように、観客たちは声援を送り、ステージ全体が一つになっていく感覚があった。


ファイナル公演が無事に終わり、楽屋では歓声と拍手が響いていた。メンバーたちは互いに笑顔を交わし合い、運営スタッフからも「今回の公演は大成功だ」との言葉が贈られた。これまでの努力が形になった瞬間だった。


その光景を見ながら、ひかりはそっとノートを取り出した。そして、その日の感想を書き留める。


「地方公演は大成功。そして秋葉原のファイナル公演は、前売り段階で売り切れるほどの盛況だった。これも日々の公演や配信を続けてきた成果だと思う。この流れを絶やさず、もっと多くの人に私たちを知ってもらいたい。」


その言葉には、彼女のこれまでの努力と、未来への決意が込められていた。


地方公演から秋葉原のファイナル公演へ――この成功は、グループにとって新たなスタートを告げるものとなった。だが、ひかりにとってそれはまだ通過点に過ぎない。次に目指すのは、さらに多くの人々にパフォーマンスを届けること。そして、自分自身も新たな高みへと進むこと。


彼女の挑戦は、これからも続いていく。その先に広がる未来の光を信じて、ひかりはまた新たな一歩を踏み出していくのだった。


だが、この地方公演と秋葉原ファイナルは成功しすぎだった。運営はこれまでの投資を少しでも回収しようと行動にでたのだ。

それは再起に向けて着実に進んでいたひかりのつまずきとなるのだった。

そしてそれは次なる波乱の幕開けとなる。

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あるアイドルの軌跡〜輝きを失ったアイドルが再び夢を掴む、絆と再生の物語 かねぴー @kanepi

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