『異セカイ文化人類学』番外編〜つま先の嘘

所クーネル

『二手の国』について

「嘘はつま先からバレる」


 これは『二手にての国』のことわざだ。


 一番有名なのは「浮気を疑われた夫が『家にいた』と言ったのに、靴に泥が付いていて外出がバレた」という話だ。ほかにも「王に問い詰められた家来が、足をモジモジしたせいで嘘がバレる」とか、「嘘は指先からバレる」というバージョンもある。


 ちょっとした所からバレるのだから正直でいろ、という教えかと思ったら、〝嘘をつくなら細部にまで気をつけろ〟ということらしい。


 しかしこのことわざは、

「もしかしたら『嘘が上手』にみえる二手の人間を揶揄したものなのかもしれない」と、先生が言っていた。



 卵形の大陸に、十の国が時計回りに並んだこのセカイ。岩だらけの『一岩いちいわの国』の隣は、なだらかな山と美しい平原が広がる『二手の国』だ。


 この国が一番、日本と環境が似ていて暮らしやすそうに思った。しかも常春だ。


 伝説によれば、『漆黒しっこく竜』の二人目の子どもである『二手の王』は、長子を敬い支えながら、続いて生まれてくる子どもたちを補佐する役目を与えられたという。


 容姿は主に、ピンクがかった白い肌、黄色から黄緑色の柔らかい髪、目の色は薄い茶色。ひょろっと背が高く痩せ型で、目鼻立ちがしっかりしている。


 紹介用の絵を見て、俺が最初に思ったのは「見たことある気がする」だった。(先生が三十年ほど前に、別の転生者を見て「二手の国の人に似ている」と思ったのも頷ける)


 彼らは巨大な船を持っていて、その昔はきょうだいたちの御用聞きに走り回っていたが、時代が下るにつれ貿易大国となっていく。少々暴利を貪ったらしい。


 そのうえ漆黒竜と一岩の人間以外を見下す態度を取るようになったので、他国と揉めはじめたのだそうだ。これはまた別の機会に詳しく書こう。



 俺が転生したこのセカイは、まだまだ知らないことばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『異セカイ文化人類学』番外編〜つま先の嘘 所クーネル @kaijari_suigyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画