第3話

全員が座り、神主さんが話し始めた。


「お集まり頂きありがとうございます。安倍様、この度はお父様の晴貴様がお亡くなりになられてお悔やみ申し上げます」


 そう言って神主さんは頭を下げた。

 それに合わせて僕たちふたりも形式的に頭を下げる。


「それに応じて、碧様が跡を継ぎになられたこと大変喜ばしく感じます。義経様、何かありますでしょうか」


 神主は菅原義経に話を振った。


「改めて、菅原家よりも晴貴様が亡くなられたことお悔やみ申し上げます。この度は、碧様が跡を継ぐことによって安倍、菅原両家に対するいい影響と捉えております。結衣の教育も、碧様よろしくお願い致します」


 義経はそう言い終えて頭を下げた。


「ありがとうございます。碧様、良ければ挨拶をお願いします」


 急に振られてぼくは焦り始める。

 焦っていると、隣のサクラが囁いてきた。



「碧様は口をパクパクさせといてよ、ボクが言うから」


 そう言われたので、ぼくは口を動かし始めた。


「安倍家当主になりました、碧と申します。隣のサクラと共に精進して行きますので、義経様はじめ菅原家様にもご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願い致します」


 勝手に喋った、ぼくが。

 驚きを隠せないまま、ぼくとサクラは一礼をした。

 

 あの後も、形式的に懇談は進み終了となった。

 サクラと共に部屋を後にすると、菅原家の2人がこちらに近づいてきた。


「お二人方、今日はありがとうございました」


 そう言って頭を下げる、義経。


「義経さんたちも、東京から来てくれてありがとうございます」


 サクラも義経に続いて頭を下げる。

 それをみたぼくは、頭を下げといた。


「碧くんにひとつ、お願いがあるんだけどいいかな」


 予想外の一言に驚きながらも返事をする。


「はい、なんですか」

「ありがとう。よければ結衣と連絡先を交換してあげて欲しいんだけどいいかな」


 そうして、義経の横でモジモジしている結衣さんと連絡先を交換して2人とは別れた。

 帰る途中、サクラが話しかけてきた。


「まあまあの態度でよかったぞ、碧様。それにかわいい女の子とも連絡先交換できたし来てよかったな」


 ぼくの横でニヤニヤするサクラ。

 個人的には大変だったと思う、ずっと正座だったし。


「もともと、先代の晴貴様の頃は仲良くなかったんだけどね菅原家と。なんか碧様の時は優しかったね」


 その言葉にぼくは頷く。

 ぼくも義経さん達は優しいと思った。

 初めましてのぼくにとてもいい態度で嬉しかった。


「碧様、明日も出かけるからね」

「休日なのにどっか行くの、ゆっくりさせてよ」


 サクラに適当に放った言葉にサクラは笑う。


「いいじゃない碧様、こんな経験碧様しか出来ないよ」


 確かにそれはそうだとぼくは納得する。

 友達の佐藤でもこんな経験はした事ないし、知る由もないだろう。

 そう思うと、ワクワクしてくる。

 何がこれからあるのかとても楽しみだ。

 その気持ちで空を見上げると雲ひとつない晴天だった。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空想みたいな現実で ゆすらぎ @yusura_gi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画