第2話

気づいたら夜を越していた。

 あの後寝てしまったらしい。

 全部夢だったらなあと考えるがその考えをある声が終わらせる。


「おはよう、碧様」


 ニヤッと笑った巫女のような服装なのはサクラ、父から言われておれのサポート係になったらしい。

 昨日は本当に大変だった。

 いろいろな情報が頭の中に流れてきてこんがらがっていた。

 大きなため息で今日も始まる。

 今日は待ちに待った週末の土曜日だ。

 学校も休みだが、サクラに言われてこれからある場所に向かうらしい。


 サクラに急かされながら準備をして家を出た。


「ボクたちがこれから行くのは大事な所だからちゃんとしとくんだよ」


 朝、サクラに言われたので今日は着物だ。サクラもいつの間にかいつもの格好から着物になっている。

 サクラに聞いたところ、これから行くのは陰陽師安倍晴明にルーツのある神社らしい。

 そこでぼくが跡を継いだので東の菅原家に挨拶をするそうだ。

 西日本は安倍家、東日本は菅原家と現代はこのふたつの家柄しかないそうで、ぼくは貴重な人物だそうだ。


「ほんとにぼくでいいのかな」


 急に不安になってきたぼくはサクラに聞いてみた。


「何を言ってるんだよ碧様、晴貴様が指名したんだから大丈夫に決まってるじゃないか」


 ほんとに大丈夫なのか、と思いつつも足を進めた。

 すると、鳥居が見えてき、その鳥居の前に2人の巫女さんがたっていた。


「碧様、サクラ様お待ちしておりました」


 そう言って頭を下げ、2人の巫女さんは先導してくれた。

 鳥居をくぐると普通の神社のようだった。

 本殿の右の建物に案内され、そこに上がった。

 中には畳のしかれた和室にいくつかの座布団が置かれていた。


「安倍家様はこちらにお座り下さい」


 そう言われ、ぼくとサクラは並んで座った。


「碧様、人が来たら頭を下げるんだぞ」


 サクラに耳打ちされ小さく頷いた。

 しばらくすると、神主さんのような人物が中に入ってきた。

 反射的にぼくとサクラはあたまを下げる。


「安倍様、よくおいでになりました。この神社の神主をしておるものです。」


 神主が言い終わる頃に頭を上げ、サクラも挨拶をした。


「安倍家の後を継ぎました碧と、使いのサクラと申します」


 そう言い、再び頭を下げる。

 ほぼの同時に神主さんも頭を下げた。


「おい、お前たち菅原家様はまだか」


 神主さんが巫女さん達に聞くと、巫女さんたちは小さな声でまだでございます、と答えた。

 そのとき、足音が聞こえてきた。

 音的に数人だろう。


「来ましたか」


 神主さんがそう言い、入口の方を見ると着物をしっかりと着た男女が立っていた。

 2人は入口で一礼をし、座布団に座った。


「遅れて申し訳ありません、菅原家当主義経と申します」


 その言葉にぼくたちも少し頭を下げる。


「こちらが娘の結衣です」


 結衣、と紹介されたぼくより少し年下そうな子はきっちりと会釈をした。

 こうして、安倍、菅原両家の懇談が始まった。


 

 

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