第2話 選択

~以前の流れ~

おれはこの胡散臭い毒山にあれよあれよと、手続きを済まされていった。


毒山 「伝承ヒューマンポイント・伝承ダラスについて説明しますさかいに」


母の事を考えて落ち着かない様子の市郎

市郎「行かないと…早く…」


毒山 「ほな簡単なダラスからいきますさかい。

ダラスちゅうのは、ダラス=言わば金ですわ。

以前の世界での金が、次の世界で違う形で使えるお金ですわ。

早い話が、ここはパチンコの換金所みたいなモンですわ。」


話を聞かずに落ち着きがなく、そわそわしている市郎。

市郎「生き残れんのか、おれが、あんなでかい化け物…」


毒山は、そんな市郎の態度に悪魔でも業務上の関係、言わば手続きする立場にあるため粛々と冷たく進めるのであった。


毒山「田中はん聞いてますんかいな?」


市郎「あ。!ああ。聞いてるよ」


しかしながら、市郎の頭の中を巡るのは母の事ばかりだ。


そんな中、毒山も食い下がり説明を聞かせるのに必死だ。

なぜなら今、市郎をファンタジー界に送り込む事は自分の手で人を殺すようなものであった。


毒山 「ぼくかてね、窓口の営業とは言え…

死んでるとは言え…

心の通った人間ですねん。

流れ作業でベルトコンベアみたいに…

人流して、そのまま地獄へ落としてる作業みたいなことしたいんですわ」


毒山には、今までファンタジー界へ送り込んだ人々が謎のドラゴン出現により秩序と生態系が乱れたことで死人が急増し

送り出してしまった人達への申し訳ない気持ちと率直に助けたい一心から市郎にも救世主にはなってほしいが死んでほしくない情けもあった。


しかしその後も、何度と繰り返して攻略説明をするが、何も聞かずに落ち着きのない指を咥えた赤ん坊の様な市郎を見かねたのか、業務上の関係だった2人の間に緊張が走った。


毒山 「なんでダラスっちゅうのは…」


市郎 「…。」


毒山 「おどれー!!!!!」


市郎の胸ぐらを、机越しに毒山は掴み徐々に顔を近づける。


市郎 「な、な、な、なんだよ苦しい」


毒山 「あんたなんか勘違いしてへんか

確かに、あんたは可哀想な人や

運も相当悪い、家族も失った

さぞかし悲しいて、地獄やったやろ。

それはわかる。」


毒山 「せやけどな

おどれの今進もうとしてる世界は

生きるも地獄、死に方なんか選ばれへん

1年もおれば精神なんぞイカレて当たり前の墓場や。

そんな所選んだんや。

今わしの話聞かへんのは一歩死に近づく。

…いや、1日も持ちやしませんでぇ」


温厚な市郎は、生まれてから一度も喧嘩をしたこともなく毒山の迫力に腰を抜かしてしまい薄ら涙を浮かべた放心状態であった。


毒山 「わしには責任があるんや」


市郎 「なんだよ…責任て」といい、情緒が安定しない市郎は、感情的になり毒山の手を振り払った。


毒山 「何人もの正義感ある者がこの世界を助けようと必死こいたんや」

その時、市郎に振り払われた際に毒山のスーツがはだけていた。


市郎 「な、な、なんだよ。う、う、うう腕が」


毒山は義手を外した。



毒山 「これはな、あっちの世界でやられた傷や」

そう言って毒山はスーツを脱いだ。


スーツを脱いだ毒山の体を直視した市郎は、吐き気を催し嗚咽した。


その毒山の体には、右肩を丸ごと恐竜かなにかに食いちぎられた歯形があった、右の目も義眼であったのだ。


毒山 「わしは10年前、今あんたが座っとる椅子に気付いたら座っとった…転生できるポイントも全く無かったわしわ

ダラスももちろん無く

転生がでけへん状態やったんや…


そこでな、今おれが座っとる席、言わば選別者が気を利かせてくれてな。

誰のか分からん戦利品の義手と義眼付けてもろてサーバーの選別者としてその人と交代で役割をくれてな。

このフィードバックシステムサーバに

選別者として、今こうしてここにおるんや

それでわし自身がどんな行いをしてきたんか

セルフで生前経歴書も全て確認してハンコ押してな自分で自分を供養したんや。

ただ、わしの生前経歴書は、死ぬ3日前で途絶えててな

あ。すまんすまん」


毒山は慌ててタブレットを取り出した


市郎はタブレット見た


毒山 「話それましたが、わしの選別者としての責任…

そう…

それは、少しでも長く生かせなければいけん…」


市郎 「何言ってんだよ。死ぬ前提かよ」

市郎は震えていた。

タブレットから大音量の悲鳴が聞こえていたからだ。


ー「ぎぃややややぁぁぁぁぁぁ」

手で目を覆いながらも隙間を開けて見てみた市郎。

旅人が全身骸骨で刀を持った魔物に襲われていた。

骸骨はすかさず刀を構えて大きく振り抜いた

その瞬間、一太刀で旅人は足を切断された。


切断された足が、勢いよくブーメランの様に回転し血しぶきを上げながら吹っ飛んでいった。


倒れもがき、近くの大木を背もたれに座り込み止血している旅人に、近づいた骸骨は一思いに殺さず次は大きく腕を振りかぶり人差し指をピンと月に翳した後、振り下ろし旅人の右目に思いっきりねじ込み目潰しした。


旅人 「ぎいやああああああああ」


骸骨は、旅人の目元からを指を抜き。

突いて穴が空いた旅人の目元の窪みに筒状の物を乱雑に差し込んだ。


市郎 「なんでまだ殺さねえんだよ。何入れたんだよ。」


毒山「これは分かりやすく言えばダイナマイトや。言わば爆弾。こいつらにとって人殺しは娯楽なんや」


目に差し込まれた爆弾は先に導火線のような紐がでていた。

すると骸骨は、遠くへ離れて右手を挙げた。

すぐさま違う骸骨が火の弓を持ち現れたのである。

次の瞬間、爆弾の導火線目掛けて弓を射るもう一体の骸骨。


しかし、旅人はまだ意識があり首を捻り間一髪で避けたのだ。

そしてすかさず旅人が何やら呟いたのを市郎は聞き逃さなかった。


旅人「回復の呪文…イリ…ス」


すると、骸骨達の雰囲気がガラリと変わり

言葉を発した訳ではないが

その姿が市郎には、お前避けてんじゃねえ。ただじゃおかないぞ。という様な昔いじめに遭った過去と

同じ場面を連想させた。


その後、骸骨二体が同時にゆっくりと旅人に近づいて行った。

それはいじめっ子が、いじめられっ子にヘラヘラと近付く様に市郎には見えた。

そして旅人まであと3歩というところで

旅人が呟いた。


旅人「もうダメか血が止まんねえ…ダメだ…」

そう言って、脇の小刀を取り出した。


市郎「もう勝てねえよ。無理だって」


毒山「違う!最後まで見てみぃ!」


すると骸骨は、小刀を取り上げて旅人を担ぎ

立ち去ったのである。


市郎は呆然とした。

敢えてその場で、殺さないことがこんなに怖いだなんて思っていなかったのだ。

後に待ち構える底知れない旅人への扱いは、恐怖を超えて絶望感を覚えた。

まるで、学生時代クラス替えのない学校生活で

卒業までの3年間いじめられるんだと覚悟した頃を思い出した。

いや、それもここより何百倍もマシだったのか現実世界は…

市郎はそう感じた。ここは訳が違う…


毒山 「やっぱりか…殺さんのか。

どうやらフィードバックサーバーの存在がモンスターに知られて…

田中はん悪い事は言わん、最近このファンタジー世界からここのフィードバックサーバーまで誰も帰ってきてない。

もちろん全員がここのサーバーに死んだ後、来れる訳ではないんや。

どう選ばれてるか、わしにも分かりまへん。

もしかしたら、ここ以外にも違うサーバーがあるかも分からへん。

また別に、純粋にファンタジー界で生まれて、一生を遂げて。そのまま転生せず終わる人もおる。


ただ、今のファンタジー界へは、前世のポイントやダラスを使って、課金アプリみたいに特性を付けてから生まれないともうドラゴンには勝てへん。

だから救世主の供給は、現実世界コースの人から引っ張っるしかないんや。


市郎「何言ってるか分からないってポイントとか課金とか」


その瞬間、流れたままのタブレットの映像で

旅人が十字架に貼り付けられていた。


市郎 「母さん…おれ嫌だ…嫌…」


毒山 「ええ加減にせぇ」

すると毒山は義手でない方の手で市郎の顔を張った。


毒山「ワレぇ、もうファンタジー界の署名しとるんや、一線もう越えとんやで。」


そう、市郎は母への思いと注意力が散漫になっていた際に説明を全然聞かず署名していたのだ。


毒山「あんたのいた世界でも今も書類が物言うんや。

腹くくれてんかい!!」


怯える市郎に、畳み掛ける様に残酷な映像が眼に映る


十字架に貼り付けられていた旅人が、大きなカラスの様な鳥に残りのもう一つの目をつつかれていた。

腕は括り付けられ必死に首を振って抵抗していた。

今の彼から更に最後の光も奪うのかと市郎は震えて見ていた。


それに加えて毒山の無数の傷が追い打ちをかける様にショックだったのである。


市郎 「腹くくれてるもなにも

どうすりゃいいんだよ!

道歩いててさ、あんな骸骨の剣もった奴がきたら」


毒山 「たわけ!」


毒山は、転生の書と書いてある古びた洋風で分厚い本を机に置いた。


市郎 「な、なんだよこの汚ねえ本」


毒山 「これはな、転生の書いうてな

ウジウジしてる田中はんの来世の人生設計をここで設計するんですわ」


市郎 「来世の人生設計?

いや毒山さん、おれまだ来世に生まれてないよ

何言ってんだよ…」


毒山 「まあ、見て見なはれ」



市郎は転生の書に手を伸ばした…

すると、転生の書は強い光を放ち輝き出したのである。

次第に、市郎の鼓動とリンクしたかの様に

市郎の脈に合わせ転生の書は波打った。


再び目を開けると目の前に、360度一面に広がるヴィジョンに伝承項目が参照されていた。


市郎 「なんだろう。」


市郎はヴィジョンに手を触れて見た。


急にどこかから声が聞こえた

☆16200ポイント1250万ダラスございます。

どうなさいますか?


ー光が上から差したー

まるで光が喋っているかの様で、綺麗な凛とした女性の声だった。


市郎 「どうって、、」


光の声は、囁く。

ヒューマンポイントから振り分けください。


市郎 「なんだよ、強引過ぎんだろ」


光の声は、市郎の意見は一切聞かず続ける

正面のヴィジョンをご覧ください

制限時間内にお答えください。50分です。


市郎 「どこどこ。あ、あれか」


ヴィジョンにはチェックボックスがたくさんあり、たくさんの質問がつらなっていた。


1.朝早く起きるスキル? ◻︎YES ◻︎NO


市郎 「なんだよまた、こんなくだらねえ質問かよ

公務員時代から早起きしてんだよ

ホレ!」


市郎はYESを指差した




ーその瞬間ー

ドゥクン(心臓が脈打つ)


ー光の声ー

スキルゲット 取得 ヒューマンポイント200使用です。

残り16000です。


市郎 「ん?そういう意味かよ

早く言えよ!使っちまったじゃねえか

いらねえよ別に早起きなんか出来るんだからよ」


2.筋肉質スキル YES NO


市郎 「これは生き抜くためにいるっと。

なるべく無駄撃ちはできないな…

慎重に選ぶぞ…」


市郎は、たくさんの質問に答えてゆく…


ー光の声ー

ここからはユニークスキルに入ります。


市郎 「まだあんのかよ…」


ユニークスキル1.お金持ちの家庭に生まれる

6000ポイント使用


市郎 「なんだよこれ…

くそ、6000ポイント!

金持ちの家って…なんか作られた人生でも

羨ましい…

くそ!ダメだダメだ、節約節約…

生き残ってやるんだ…」


市郎はこんな時も冷静で倹約な性格である。



ユニーク2.親戚がお金持ちである。1000ポイント


市郎 「なんなんだよこれ!

さっきからよ。

…でも、1000かあ、まだまだポイントあるし

ちょっとは変わり種いれても面白いかもな…」



市郎はYESを選択した。



3.兄弟の数は? ※こちらはルーレットになります。


市郎 「知らねえよ!なになに?

次はルーレット?」


突如現れた数字の書いた円盤が回り出したのである。


ー光の声ー

勇者よ、そこのナイフを投げるのです。


市郎 「え。これか…」


市郎はルーレットを見定める。1〜12までの数字がある円盤が回っていた。


市郎「ちょっと待てよ…そもそもこれは多い方がいいのか?…少ない方がいいのか…多いメリット…少ないメリット………」



市郎「多いと貧乏だった場合、食べ物が足りないし…現におれさっき、お金持ちの家に生まれるはNOにしたしなあ…でも少ないのは寂しいよな…」



考え抜く市郎、急にサイレンが鳴る。


ー光の声ー

10.9.8.7.


カウントダウンが始まったのである。


市郎 「え、あ、あ。」


カウントダウンに慌てだす市郎。


3.2.


市郎 「うわぁーー!」


市郎が投げたナイフは…


ルーレットの11と12の間であった…



市郎 「この場合どうなるんだ?」



近づいて見ようとすると


大きな音で

デデデデデデデンとパチンコで当たったかの様な賑やかなメロディが鳴った。


ヴィジョンを見ると

ー23人の兄弟を獲得ー


市郎 「ええええええ!

23人の兄弟?いやいや…

18歳から年子で産んだとしても

41だぞ…

ん。いけないこともないか…」



市郎 「いやいや。家族でサッカーチームどころか

試合できんじゃねえか。

おまけに審判つきだろ…」



そして続々と質問に答えていく市郎



最後の項目になります。


1250万ダラス、これは以前あなたがいた世界では…



お金で手に入らなかった物を授けることが出来ます。



市郎 「なんだよそれ。彼女とか、そういうことか?いや、でもレンタル彼女とかもあったからなあ…」




気になる市郎に、光の声が囁く。



ー光の声ー

それは☆心、技、体です。



市郎 「なんだ能力的なことか。」


ー光の声ー

ダラスの所有に対し相応のグレードの選択が与えられます。



市郎 「どれどれ。まず生命と…次に

剣士…銃士…

暗殺者…ん…暗殺者ね…

なんだよこれ…」


市郎は瞬時に理解したのであった

生命とは、RPGでよく仕様されているhpである。


市郎 「おれ、前が公務員だったんだぞ…

こんな仕事慣れねえだろうなあ…

向いてなさそう…


それに、アラサーのおっさんがアサシンやってます…

ないない…笑われるのがオチだろ…」


急に毒山を思い出す市郎。



市郎 「なに言ってんだおれは、言われただろ…

おれの住んでた世界じゃねんだ。

真剣に向き合わねえと死ぬぞ。」



市郎 「生き残るんだ。おれはよ…母さんを…」



市郎は必死に職業を見定めた。



市郎 「勇者!これだ!」



大きい音が鳴る。

ブブー


ー光の声ー

☆あなたの性格ではなれません。


市郎 「なんだよそれ!ちくしょう。」


市郎は最初に設けられたリミット50分がもうあと1分に差し掛かるのを確認したのである。

焦りだす市郎。



市郎 「まだ技も体も選んでねえぞ…

これ、これ、これ…」


大きい音が鳴る

ブブーブブーブブー


市郎 「全部なれねえだろうがこら!

これは。これは。これ…」



ピンポン


市郎 「どれだ…

バーサーカー?!なんだそれ

切れたら、暴れだす奴だっけ?

もういいや、次いかねえとやばい…」


ー光の声ー

☆技の説明に入りますここでは



市郎 「うるせえ、間に合わねえよ

おれの手持ちで1番高いダラスで、おれが使える技をくれ!」


ー光の声ー

☆かしこまりました、あなたの必殺技は…



市郎 「やべえ…もう、10秒…しかない

もういいから体に進めてくれ!」


ー光の声ー

☆体では、あなたの身体の部位を強化出来ます。

なので弱い部分を強化したりダラスを最後まで満遍なく使用…


市郎 「任せるよ!」


ー光の声ー

☆かしこまりました。



☆あなたの来世に光があらんことを…



そして、急にヴィジョンに毒山が現れた。



市郎 「いよいよなのか?

おれいよいよ行くのかよ?

前の記憶は?

どうなんだよ答えろよ!

母さんは探せるんだよな?」



足元が消えていく市郎。



毒山は沈黙していた。



市郎 「答えろよ!

なんのアドバイスもなしかよ!

ふざけんなよ!

あんたの言ってた責任てそんなもんかよ!」



消えてゆく市郎の身体は僅かに顔だけになっていた。



その時…



毒山 「田中はん…人生にフィードバックなんてないんですわ…」



市郎は消えていった。



毒山 「そもそも、あんたがサーバー内で前世の記憶があるんがおかしな話や…

わしを含め誰も…誰もが記憶がなかった筈や

たまに稀なケースも、ちらほら聞いたことはあるが…

ここまで鮮明なお人はあんたが初めてでしたで。

だからあんたに皆んな賭けたんや…」


毒山の後ろには、沢山のサーバー内の選別者が市郎が映るモニターを見ていた。


毒山「わしも、消えた3日間の生前の経歴書を捜査してる所や。恐らくわしわファンタジー界の異変に気づき当時殺されたと思ってる。

わしも仲間と気張るさかいに」


そう言ってタバコに火をつける毒山


毒山 「託したで。」



続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フィードバックライフず〜死後の世界で会いましょう 花水木 鳥夢 @sybermentaiko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ