第2話 喧騒と白の蛍光灯
「涼しい」適度に空調のきいたこの部屋は、A県立高校内の”読書同好会”の部室にあたる。早紀野も気持ちは同じらしく、もう椅子に座ってゆっくりしている。一見狭いように見えるこの部屋は、日々使っていると丁度いい。
部屋の中には大きめの本棚が二つと、横に広いソファが机を囲うように左右にある。そして部屋の奥には部長が座るための椅子と、その机がある。僕は部長用の机に座ると、腕を組んで先ほどの紙袋を置いた。ここに座り始めて一か月、時間が経つのが以上に早かった。
「やっぱ」ぶつぶつと早紀野は言っているが、それも理解できた。最後のあとがきを見ればわかるが、この本は中々に考えさせられる。僕も早く本を読み始めたいので、包装された本を丁寧に取り出す。本を買ってから放送をはがすまでの、どうしようもないわくわく感。それが心地よかった。
「これは」ここに来て初めて、僕はあることに気が付いた。この本、僕が書店で買った物と違っている。何故?僕は放送している最中、目を離さずにいた筈なのに。だけど今から書店まで戻るのは、少し気が引ける。仕方ないので、後で早紀野に読ませてもらうことにする。
とは言え、手違いで僕の元には小説がある訳で。もちろん後で返却しに行くつもりだが、今読まない手はない。こういった出来事も一期一会、大切にしていかなければならないからだ。流石に値段が大幅に違っていたら、今すぐに返さなければいけないが。裏面を見ると、奇跡的に値段が一緒だった。
君の申し子 椋鳥 @0054
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