特に思い当たる節は無いのだけれど、そういえばそうだったかもしれない

縦縞ヨリ

特に思い当たる節は無い

 特に思い当たる節は無いのだけれど、地下鉄から地上に登る階段を登っている時、なんだか酷く頭が痛かった。

 階段を登っているのに、パンプスを履いたつま先の感覚がちょっとおかしい。

 なんだろうなあと思ったが階段は登れたので、あんまり気にせずそのまま会社に向かった。


 特に思い当たる節は無いのだけれど、地下鉄から地上に登る階段を登っている時、ふとつま先に違和感を覚えた。

 階段を登っているのに、パンプスを履いた足の感覚がちょっとおかしい。ヒールに乗ったかかとは普通なのだが、つま先の方に感覚が無いというか、雲を踏むような感じなのである。

 なんだろうなあと思ったが階段は登れたので、あんまり気にせずそのまま会社に向かった。


 特に思い当たる節は無いのだけれど、地下鉄から地上に登る階段を登っている時、ふと足に違和感を覚えた。

 階段を登っているのに足の感覚がちょっとおかしい。雲を踏むような感じなのである。

 なんだろうなあと思って見てみると、パンプスを履いた足のつま先が少し透けていた。が、階段は登れたので、あんまり気にせずそのまま会社に向かった。


 特に思い当たる節は無いのだけれど、地下鉄から地上に登る階段を登っている時、ふと足に違和感を覚えた。

 階段を登っているのに足が無い。なのに階段は登れていて、なんだか雲を踏むような感じなのである。

 なんだろうなあと思ったが階段は登れたので、あんまり気にせずそのまま会社に向かった。


 特に思い当たる節は無いのだけれど、地下鉄から地上に登る階段を登っている時、違和感を覚えた。

 手を見てみると、なんだか指先が透けている。足も無いし、そもそも私はなんで足が無いんだっけ?

 なんだろうなあと思ったが階段は登れたので、あんまり気にせずそのまま登った


 無いのだけれど、階段を登っている時、ふと違和感を覚えた。

 わたしは何だったんだっけ?

 なんとなく手を見てみると、肘から先が無くて、お腹から下もないし、困っているけど何に困っているかわからない。

 でも、登った。登らないといけない。


 思い当たる節は無いのだけれど、のぼらないと。

 ふと下を見ると、私には身体が無かった。身体が軽いというのは変かなあ。とりあえず無かったけど、いっそ軽くて良いような気がした。

 私はいつも疲れていたし、身体は鉛のようだったし、ずっと頭が凄く痛かった。今はどこも痛くない。とっても身体が楽だ。

 でも、なんだかこのまま消えてしまいそうで不安だ。


 ずいぶん長い間、階段を登っていた気がする。


 首だけの私はやっと身軽になって、階段を登り切ると明るい日差しが降り注いでいた。

 キレイだなあ。いつから私、ここに居たんだっけ。

 ふと、つま先に触れたような気がした。

 見ると、地下鉄の入口の横に何か置いてある。

 お花だ。

 赤い小さな菊と、黄色い菊と、白い百合の花。

 

 そっか、――――――が、きてくれたんだ。


 声は出なかった。顎が無いんだろう。でもそう呟いたらほっとして、私の心はそれきり、頭のてっぺんまで溶けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

特に思い当たる節は無いのだけれど、そういえばそうだったかもしれない 縦縞ヨリ @sayoritatejima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画