動揺
宵闇月夜
うしろのしょうねんだあれ?
「何これ?」
サキはスマホの投稿アプリからある1つの記事を読みながら帰路についていた。
記事の内容は最近、この近辺で行方不明者が続出しているそうで、なんでもこの行方不明の後、黒いコートを着た男の目撃情報が多数寄せられていて警察も捜査中とのこと。なんでもその黒いコートの男と最近噂になっている都市伝説が関係しているとか…。
その都市伝説が「童謡男」という都市伝説で記事によると、
男の口ずさむ童謡に違和感覚えちゃいけないよ…。
違和感覚えたその瞬間、ひきずり込まれる異界の地。
さらにその歌従えば…二度と戻ってこれないよ。
「そんなの…迷信に決まってるじゃん…。」
サキはスマホの電源を切って歩く。
「アホらし…。みんな都市伝説なんか信じちゃって...。」
サキは歩きながら前から男が歩いて来ているのが見えた。
(あれ?)
男はサキよりも身長が高く、帽子を深々と被っていて顔はよく見えなかった。だが、服装が記事に書かれていた黒いコートの羽織っていたのだ。
(ぐ、偶然よ…。)
男が何かを歌っていた。
(なんだろう…。この歌どこかで…。)
サキは少し考えて思い出した。
(そうだ!かごめかごめだ!気持ち悪…。童謡なんか歌って…。)
そしてすれ違い様、
「うしろのしょうねんだあれ?」
男はそう言ってサキとすれ違った。
サキは歩みを止める。
(うしろの正面じゃない?なに言ってんだろ…。)
サキはそう疑問に思い、うしろを振り返った。
(…あれ?)
先ほどの男がいない…。サキから曲がり角まで走らないと間に合わないはずなのにサキが振り返る一瞬の間で男は消えていた。
(というか…)
サキの頭の中でもう1つの疑問が浮かぶ。
(私とあの男の人とは距離がだいぶあったのに私はなんであの距離でかごめかごめを歌ってるって分かったんだろう?)
背筋に冷たいものが走る。
(大丈夫よ。私の思い込みよ!気にしない気にしない...。)
サキはあまり詮索せず、歩き始めた。
少し歩きながら、
コツコツ…。
と明らかにサキとは別の足音がついてきていた。
(まさか、さっきの人…?)
サキは怖くなり歩みを早めた。
コツコツコツコツ…。
足音もそれに続いて早くなる。
(嘘…?)
足音の方がサキより早くもう少しで追いつかれる。
「だれなのよ!いい加減にして!」
サキは思い切って振り返った。
「ひっ…。」
そこには7歳くらいの男の子がいて、サキが怒った顔を見せたためか少し怯えていた。
「え…?」
「ごめんなさいサキお姉ちゃん…。僕どうしても一緒に遊びたかったからついてたの。」
サキは困惑する。
「あなた、だれ?」
「そんなことどうでもいいから早く遊ぼーよ!ねっ?サキお姉ちゃん。」
男の子がサキの腕を掴む。
「離してよ!」
サキは怖くなり男の子の手を振りほどいた。
「なんでひどいことするの…?」
男の子は目を潤ませながらサキのことを見つめてきた。
サキは動揺しつつも男の子に質問を投げ掛けた。
「あなた、なんで私の名前知ってるの…?」
こんな男の子は親戚にもいないし、会ったこともない。でもこの子は教えてもいないのに自分のことを「サキお姉ちゃん」と呼んだのだ…。
その瞬間、男の子の泣き顔が無表情に変わった。
「………ッ!」
突然の表情の移り変わりにサキは恐怖した。
「あーア、もットあソビたかっタノニなぁ…。」
「あなた…だれなの?」
サキは震えながらも男の子、いや男の子のようなものに尋ねる。
「だメダヨ…。オジさンガイったトおりニシチゃったラ…。」
男の子だったものの後ろから同じ顔をした子が何人もでてきた。同じように無表情のまま…。
「い、いや…。」
サキは逃げようとしたが足がすくんで動けない。
「「お姉ちゃん…いっショにあソボ…?」」
そう言って男の子たちは一斉にサキに襲いかかってきた。
「いやあぁぁぁ!」
サキは無数の白い手に掴まれ、暗闇に引きずり込まれた。
その空間にサキの姿はなく、画面の割れたスマホだけが地面に転がっていた。
「………。」
その光景を黒いコートの男が見ていた。
「はぁ…。」
男はため息をつき、歩きながら歌を歌う。
「かーごめかごめ…」
男は歌う。
「かーごのなーかのとーりはー…」
淡々とした口調で
「いーついーつでーやーるー…」
音程を一定に保ちながら
「よーあーけのーばーんに…」
歌い続ける。
「つーるとかーめがすーべった…」
だが男は気づいていない。
「うしろのしょうねんだあれ?」
男は自分が歌詞を間違えていることには気づいていないのだ。
男は間違いに気づかないまま闇の中へと消えていった。
男の口ずさむ童謡に違和感覚えちゃいけないよ…。
違和感覚えたその瞬間、ひきずり込まれる異界の地。
さらにその歌従えば…二度と戻ってこれないよ…。
トントン…。
「ねぇ…イッシょにアそボウよ…?」
動揺 宵闇月夜 @yamiyo
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