価値観、という名の寓話を覆すもの

灰被り姫の寓話をご存じの方は、きっと
多い事だろう。但し、この物語は一癖も
二癖もある成り上り物語である。
 然も有らん。この作品の作者とは、知る
人ぞ知る、神とも狂気の奇才とも呼ばれて
いるシルヴァ・レイシオン氏なのである。

普遍的に広まった『シンデレラ物語』とは
かなり隔たりのある、寧ろこれ程までに
読む者に予想外の驚嘆を齎す物語は、そう
あるものではないだろう。

題名に示す通り、このシンデレラは纏足を
施されたアジア人である。そして意地の
悪い継母と姉妹に扱き使われ、王の宮殿に
上がる儚い夢は、心優しい魔法使い(この
場合は乳母)の計らいにより叶う。
 だが、この物語に更に寓話性を持たせて
いるのが、宮殿で彼女の『纏足』が注目を
浴び、継母も姉達もそれを羨む点だろう。
足の小ささが美徳とされる文化に加え
女性の自由と尊厳とを奪う『纏足』。
どす黒い羨望が、血の惨劇を呼ぶ。そして
考えさせられる。
         価値観 とは。

国を跨ぐ社会問題やジェンダー論などにも
造詣が深い、作者ならではの鋭い視点が
作品に活きる。そして最後の更なる驚きの
『曇天返し』には

もはや、言葉もない。

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