ユキとツララ

リュウ

第1話 ユキとツララ

 これは、さむいさむい国の話。


 どのくらい寒いかといえば、息を吸った時に鼻毛が凍ってくっついてしまうくらい寒いのです。


 森は、葉を落としてしまった樹や針のような細い葉を持った樹の枝が白い雪で飾られてています。

 その樹の下には、鳥やキツネやシカといった森に住む生き物の足元が点々と続いているのでした。


 その森に古い山小屋がありました。

 天気の良い日が続いたので、軒先には立派なキラキラとしたツララが出来ていました。

 天気が良かったので、ツララは日の光を反射して、いつも以上にキラキラしていました。

 森の動物たちも、ツララに下を通る時は、何だろうと見上げて、しばらく見とれているのでした。

 その様子を見ていたツララは、みんな褒めてくれるので得意になっていました。


「僕より奇麗なものはない。僕は最高にカッコいい」と思っていました。


 次の日は、とても寒い朝を迎えようとしていました。

 空気に針が通ったような緊張感があります。


 ツララが、何気なく空を見上げていると、小さなユキが降ってきました。

 ツララは、そのユキから目を離せなくなりました。

 ユキは、とても小さくて五角形の体から、か細い枝を伸ばして着飾っていたのでした。

 それは、自分の姿とは別な何とも言えない美しさに恋をしました。

 思わず見つめてしまい、抱きしめたいと強く思うようになりました。


 ツララは、思い切って声を掛けました。

「ユキさん、キミはとてもきれいだ」

「そうですか」ユキは小さな声で答えました。

「僕のお嫁さんになってください」

「ええ、よろしいけれど、わたしの姿はすぐに変わってしまうのですよ」

「それでも、いいです」


 それから、日が上がって来て、太陽が回りを照らします。

 ユキも少しずつ溶けてしまいます。

 細い細いユキの枝から、溶けていきます。

「これでも、わたしを好きですか」

 ユキは、ツララに問いかけます。

「ああ、気持ちは変わりません」とツララが言います。

 そのうち、ユキは完全に溶けてしまい、小さな水滴になりました。

「これでも、わたしを好きですか」

 と、ユキが言った時、水滴となったユキが地面に落ちてしまいました。

「あっ」ツララは、じっとユキが落ちていった先を見つめました。

 ツララは、自分も溶けていることに気づきました。

 ツララは、自分の体が溶けて水になっているところの移動して行き、ユキを追って落ちていきました。


 ツララの落ちた小さな水たまりから、声が聞こえました。


「わたしを好き?」

「ぼくの気持ちは変わりません」

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ユキとツララ リュウ @ryu_labo

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