雪と空想

否定論理和

除雪中の他愛のない妄想

 雪、というものに対して抱く感情が「わくわく」から「怨念」に変わったのはいつからだっただろうか。


 一般的なイメージまでは知らないが、雪国において雪とは、敵だ。


 冬になれば頼んでもいないのに降り積もり、放っておけば生活に支障をもたらすから定期的に除雪せざるを得ない。

 

 5㎝、10㎝程度の積雪なら無視して歩けないこともないが、その段階で除雪をしておかないとあとから変に凍って路面状況が最悪なことになったり、単純に軽い気持ちで除雪できないくらいの量になってしまったりするので結局可能な限り早めに、こまめに除雪するのが一番いいのだ。


(……ファンタジー小説に出てくる冒険者がモンスターを退治するのって、だいたいこんな気持ちなのだろうか)

 

 面倒な作業をやっている時、それが単純作業かつ精密な動作を求められない時ほど益体の無い思考が捗る。


 頼んでもいないのにわらわらと湧いてくるという点では雪とモンスターは似ていると言えなくも無いし、生きていくためにそれを倒すという点では冒険者のモンスター討伐も雪かきみたいなものなのかもしれない。


(そう思えば少しは単純作業も楽しく思えるかもしれない)


 空想の世界は自由だ。そこに意味がないとしても、なんとなく僅かばかりの救いがあるような気がする。


 モンスターに剣を突き立てるようなイメージで、雪の塊にスコップを突き立てたところで


「おーい、そろそろ除雪機動かすから帰ってきなー」


 現実に引き戻される。軽油を燃料に稼働する個人用除雪車は、人力とはくらべものにならない圧倒的パワーで雪の塊を削り、近くの用水路に向けて吹き飛ばしていく。


(……うん、やっぱ俺はめんどいのは嫌だな。科学バンザイ、文明の力バンザイ)


 現実は強い。楽ができるならそれが一番いい。空想を超えた圧倒的な力を見ながら、俺は粛々とスコップを片付けるのであった。

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