第4話 少年からの提案
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トントンッ トントントンッ トントンッ ジューッ
「ンンッ ン、、、、」
心地よい包丁の音と太陽の日差しで目が覚め、机に置いてあったスマホを見れば、午前9時半だった。いつもより、目覚めも良いし、長く寝れたな。すぐさま、起き上がり音のするキッチンに向かえばそこには。
「ぁ、
「、、、、
「朝ごはん作ってるんですよ。お味噌汁は昨日のが残ってますしウインナーそろそろ使わないといけないですから」
「そーなんだ。その長ネギは?」
「これは、お味噌汁に入れようかなって、あ、卵焼きとウインナーと玉ねぎと後、ほうれん草を炒めたのを作りましたので」
「後は炊き終わったご飯をよそってくれませんか?」
「、、、、ぅ、うん、了解」
そう言いながら、切った長ネギをお味噌汁に入れる華奈は何処か、綺麗で美しく見惚れてしまった。俺はご飯をよそおうとキッチンに入ると、華奈の格好を見てしまって驚いてしまった。
「!!か、華奈君、そのエプロンどこにあったの?」
「え?、、ぁ、昨日片付けてた時に見つけましたよ?」
「マジで、、、、(何処に行ったかと探してたら、と言うか)」
「まるで、奥さんじゃん(小声)」
俺はボソッとそう言うと少し聞こえたのか不思議そうな表情をしながら俺を方を見てくる華奈君。俺は咄嗟に誤魔化す。
「何か言いましたか?」
「いえ!何でもありませんが!?」
ヤバ!と思い、瞬時にそんな考えをなくすために炊飯器にしゃもじとお茶碗を持ち手をかける。自分のご飯を大盛りに盛った後、華奈君の分のお茶碗を持って華奈君に問いかける。
「華奈君はどれぐらい食べる?」
「優輝さんと同じぐらいで良いですよ?僕、結構食べるんで」
「そう?分かった」
華奈君がそう言ったので俺と同じぐらいに盛り、華奈君に見せた。すると驚いた表情をしてお椀と俺の顔を交互に見る。
「どう?これでも」
「、、、、優輝さん、大盛りって知ってます?」
「そんな量は僕、食べれませんが?」
「?」
「貴方って細身なのに結構食べるんですねって、意味ですよ」
呆れ口調で言いながらお味噌汁を皿に注ぐ華奈君の表情があの人にそっくりで俺は一瞬見惚れてしまって硬直した。
「さ、洗濯機もそろそろ終わるので、食べますよ」
「さっ、洗濯機かけてくれたの!?」
「えぇ、殆どそのままにしてたYシャツとか服やタオル、靴下など干しますから」
「別に良いのに」
「そう言いますけど、優輝さんみたいなタイプって、「時間がなくて〜、や、やろうと思ってたんだけど〜」とか、言い訳とかしそうですよね」
「、、、、こっち見なさい」
笑顔で言いながら椅子に座る華奈君は結構怖くてやっぱり、美人って怒ると怖いって本当なんだって分かってしまったのと、図星だったので顔を背けてしまった。コラッと言いながら怒る姿も完全にあの人そっくりで少しほのぼのする。
「では、いただきます」
「いただきます」
2人でご飯を一緒にご飯を食べる。最初に卵焼きに手を付ける。卵焼きの一切れを箸で一口大にし、口に入れる。その瞬間、卵の甘みを感じ後に塩胡椒のしょっぱさが感じた。口の中に旨味が広がった。
「ぅ、美味!今まで食べた卵焼きで1番美味いかも!」
「えへへ、卵焼きは1番作ってきたので結構自信作なんです」
「これだけで、ご飯一杯食べれるかも!」
「それは辞めて下さい」
そう、嬉しそうに言いながらお味噌汁を口に入れる華奈君。次にウインナー炒めに箸を伸ばし、ウインナーと玉ねぎとほうれん草を取り口に入れた。
瞬時にウインナーを噛めば汁が口の中に広がり、玉ねぎの甘みとほうれん草の良い苦味が感じ、これもご飯が進むな。そしてご飯を口に掻き込む。
「ちゃんとした朝食、久しぶり食べたかもしれない」
「いつも何食べてるんですかね?」
鋭い眼光で俺を見つめる華奈君に嘘は通用しないが怒られるのは何か嫌なので小さい声で、言う。
「、、、、コンビニのおにぎりとかサンドイッチ、後は菓子パン、惣菜パンとか」
「はぁぁ〜、優輝さん。そんなんじゃ、栄養の偏りで倒れたりしますよ?」
「分かっています。これから、もっと気を付けたいと思います」
「本当ですかね。カップラーメンとか買ってませんでした?」
「良い加減にしないと捨てますよ」
そう言いながら、水を口に入れる華奈君にウグッと思いながら頭を下げてから口を開く。
「善処しますので、勘弁してください」
「そこまで言うんやったらええんですけど」
そう言い水を口に入れる華奈君に俺は少し安心してご飯を食べ進める。華奈君は怒らせたら絶対にダメなタイプと言う事が分かった。
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ご飯を食べ終わって俺は食器類をシンクに運んで置いてあとは洗うだけの状態。すると、
「じゃ、僕、洗濯物干してくるんで、優輝さんはお皿を洗っといて下さい」
大量の洗濯物が入ったカゴを持ちながら、言う華奈君。俺は右手にスポンジ、左手に食器用洗剤を持ちながら華奈君に感謝を伝える。
「本当、何から何までありがとうね」
「いえ、何かほっとけないって言うか、姉とか従兄弟に似てるので、こーゆうのって慣れてるんで」
「へぇ、優月ってお姉さん居るんだ」
「はい、10歳上と7歳上に姉、14歳上と4歳上の兄が居ます」
「へぇ、5人兄弟なんだ。俺は4人兄弟なんだ〜」
「優輝さんは何番目なんですか?」
「俺は4番目、10上の姉と7歳上に兄貴に6歳下の妹が居るんだ」
「ぁ、華奈君って末っ子なんだ。確かに末っ子ぽい!」
「あぁ〜、確かに奏馬さんって4番目っぽいですね」
「それ良く友達とかに言われるんですけど何でですかね?」
不思議そうな顔をしながら、ベランダに出て、ハンガーなどに洗濯物をかける華奈君。そして俺は滑って落とさないように気を付けながらお皿を洗いながらタオルで拭く。
「、、、、ぁ、僕、これ干し終わったら出て行きますね」
「えっ、、、、そっか。分かった」
そう干しながら思い出したかの様に言う優月。そう言われて、少し落ち込んだ。そっか、昨日と今日だけの関係なんだもんな。ちょっと寂しいなって思いながら答える。
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「よし、終わりましたよ。優輝さんも洗い物、ちゃんと洗えましたか?」
「俺だってちゃんと洗えますからね?華奈君は俺のことどう思ってるのかな?」
「え?ポンコツ男子じゃないんですか?」
「ウグッ 確かにそうかもしれないけどね」
あっけらかんと悪気のなく言う華奈君に怒れる気は出なかった。実際、本当だし、それにこの顔で言われると怒るに怒らない。
洗濯カゴを洗面台に戻してリュックを背負おうとする華奈君。すると、スマホの電話音が部屋全体に響く。
プルルルルルッ プルルルルルッ
「「ビクッ 」」
「?ぁ、俺の電話や。出てもええですか?」
「ぁ、うん、どうぞ」
俺がそう言うと机に置いてあったスマホを手に取って電話に出る華奈君。俺は気にせずに、華奈君に感謝の気持ちとして何かあげようと書斎に向かう。すると、数分後、、、、
「はぁ!!!?!?どー言う事ですか!?」
「ビクッ、、、、ぇ?」
華奈君の大きく焦って驚いた声がリビングから聞こえて来て俺は少しビックリしてしまったが、気になってリビングに向かうと、
「アパート取り壊すってどー言う事ですか?!」
「ワォ、、、、修羅場?」
想像以上にヤバい事が電話の向こうで起こっているっぽいな、これは。俺は電話を終えた華奈君に近づいて声をかけてみる事にした。
「はい、はい、、、、ぇ、2日後!?、、はぁ、はい。了解しました」 ピッ
「華奈君?電話終わった?」
「ぁ、優輝さん。はい、終わり、ました」
声をかけて振り返った華奈君の表情は少し疲れと焦りが伺える表情をしていて俺は少し心配しながら質問をする。
「何か、電話相手と揉めてた?」
「ぁ、いえ。その、電話相手僕が住んでるアパートの大家さんなんやけど、実はアパート取り壊すって伝えて来て、何か急に決まった事らしくて」
「2日後にアパートを退去しろって言われたとか?」
俺がそう言うと無言でコクリと頷く華奈君の表情は困った表情をしていて俺は同情してしまった。
「はぁ〜、次の家探す大変やのに、、、、、、、、ぁ」
華奈君はそう言ってから少し沈黙しながら考えたらしく、何かを思い浮かんだのか、ニマッとした表情で顔を上げて俺の方を見つめる華奈君。俺は少し嫌な予感がした。
「暫くこの家に住まわせて貰えませんか!!!」
「、、、、嘘ん」
「次の家探すまでの間でええので!お願いします!」
「う〜ん、」
「住まわせて貰うまでの間家賃は払わせて貰うので!高校生活残りわずかなんです!家族に心配かけたくないんです!」
そう言って勢い良く頭を下げて俺に頼んでくる華奈君に俺は断ると言う選択はなかった。何故なら、この子のおかげで自分を卑下する様な事を考えたり、ネガティブな事や自分を否定する様な言葉を考えたりする事がなくなったから。
それに、、、、、この子といれば、あの人を思い出すから、、、、俺はまだ頭を下げている華奈君に声をかける。
「、、、、はぁ、頭を上げて、」
「お願っ! 「断る訳じゃないよ。住まわせる条件として、、、、俺に料理を教える事。これが条件ね」、!、、、、はい、!」
俺がそう言うと、途端に暗い表情が明るくなって笑顔の表情で頭を上げて俺の方を見る華奈君に可愛らしいな、ってそう思っていると、俺のスマホが鳴った。
「、、、、!ごめん、部長からだ」
「ぁ、どうぞどうぞ」
「じゃ、ちょっとごめんね」
俺はそう言って電話に出ると、部長の第一声が耳に響く。
「
「キーンッ ぶ、部長、、ど、どうしました?休日にこんな。それと、落ち着いてください」
「ぁ、ごめん。本当に大変で」
電話越しの部長はいつものほのぼのさとはかけ離れて焦った声だった。
「で、どうしました?」
「じ、実は工場に発注して届いた洋服の値札が全部間違った金額になってたんだ」
「ぇ!!?本当ですか!?」
「あぁ、新作大特価って事で通常の30%オフにするところを通常の値段のままになってたんだ」
「今日中に各支店に届けるトラックに運ぶまでに全部の値札の書き換えをしないといけなくてな」
「そうですか」
「今、部署の社員全員に電話をかけて会社に出社して貰って居るんだが、」
部長が焦りながらも、しっかりと説明してくれた。俺はそれを聞いて瞬時に理解して、不思議な顔をして俺の方を見る華奈君に目配せをしながら、口を開く。
「分かりました。俺も今から出社します。少しお時間をいただきますが」
「是非そうしてくれ、!まだ4分の1しか終わってなくてな」
「では、後ほど」 ピッ
俺はそう言って電話を切ると、華奈君の方を見る。電話先の声が聞こえたのか少し心配そうな表情をしている。
「ごめん、今から会社に出社しなきゃ」
「電話先の話聞こえて来ましたし、そうですよね。ぁ、おにぎり作りましょうか?食べないと元気でませんし、!」
「良いのか?」
「はい!僕はここに居座らせて貰う立場やし、それぐらい簡単ですよ。やけど、アパートに帰って荷物とか取りに行かないと行けませんですけど、笑」
華奈君はそう苦笑いをしながらキッチンの方に向かってしゃもじを持って炊飯器に向かう。何か頼りになるな〜、何て思いながら、華奈君の言葉で書斎に向かってある物を手に取って華奈君の元に戻る。
「はい、華奈君、これ良かったら、」
「これって、、鍵ですか?」
「うん、ほら俺今から会社でしょ?で、華奈君も一旦家に帰るし、それならって合鍵、」
「優輝さん、!ありがとうございます!無くさない様にします!」
華奈君はそう言って鍵を受け取った。数分後、華奈君は簡単に少し大きめの塩おにぎり4つを作ってくれた。俺はその間にスーツに着替えておいた。
「じゃ、俺先に家出るね。華奈君も気をつけて家出るんだよ」
「はい、ぁ、僕を家に上げてくれてありがとうございます、!」
そう笑顔で、俺の目を見て言ってくれた華奈君を見て、嬉しくなって心が温かくなった。俺の方こそ、君に救われたんだよ、って言いたかったが、少し恥ずかしくなって言えなかった。ので、他の事を伝えようと思った。
「ぁ、ちょっと待って、」
「?、何ですか?」
「その、連絡先交換しない?」
俺はそう言うと、一瞬で目を大きく開き驚いた表情で俺の方を見る華奈君。
「連絡先ですか?」
「ぁ、一応一緒に暮らし始めるし、何かあった時に連絡出来る様にって、」
「、、、、、、」
焦りながら言ってしまい、俺は大混乱してるし華奈君は無言のまま俯いている。俺はそれを見てさらに焦る。
俺は馬鹿なのか!?確かにちょと、俺は寂しかったけど、急に「連絡先交換しない」とか言うとか、俺ヤバすぎんだろ!?
確かに一緒に暮らすけど、そんないちいち連絡する事ってないし、華奈君は普通に怖いに決まってるだろ!!俺やっぱり馬鹿か!
「ごめん、華奈君!また、俺変な事言ったわ!この事は忘れて!!」
「いえ、連絡先交換しても良いですよ?」
「だよね!そうだよね!連絡先交換しても良い、よ、、ね!!???」
「えっ!!良いの!!?」
「はい。僕もしたかったですし、優輝さんが言ってくれて良かったです」
「ではすぐにしますか、、、、優輝さん??」
そう警戒心無くあっけらかんと言いながらスマホを出す華奈君と驚きのあまり固まってしまった俺。そんな俺を不思議そうに見つめて来た華奈君。
「いや、その、良いよって言われるとは思わなくて、さ」
「僕が断ると思ったんですか?確かに、見ず知らずで何も知らない人にそう言われたら、すぐに断りますけど」
「優輝さんのこと、何も知らない訳ではないじゃないですか?」
そう素直に言って来た華奈君の言葉に少し照れてしまいながらも嬉しいと言う気持ちを言葉に俺も出す。
「、、、、何か、嬉しいな笑」
「そうですか?てか、そもそも一晩泊まった相手で今日から一緒に住む相手は見ず知らずの相手ではないですよね笑」
「だね笑」
そうストレートに至極真っ当な事を言われながらも一緒に笑いあい、俺もスマホを出し連絡先を交換した。LINEと電話をどっちも交換したよ。何かあった時に連絡出来る様にね?
「では、優輝さん、気をつけて行って来てくださいね」
「はい、気を付けますよ」
「、、、、ぁ、!ちょっと待ってください!」
俺が玄関扉に手をかけて開け様とした瞬間、華奈君に呼び止められてしまった。俺は華奈君の方に目を向けると、少し恥ずかしそうにしながら、こちらを見ている華奈君。
俺は少し不思議そうな表情で見ていると、少ししてから顔を赤くしながら俺の目を見て、
「ぃ、行ってらっしゃい!!////」
「!!、、、、ぇ、ぁ、うん。ぃ、行って来ます、!」
久しぶりに誰かにそう言われて、俺は少し懐かしくなって嬉しかった。誰かに行ってらっしゃいなんて言われるなんて、久しぶり過ぎたし、心のこもった声で言ってくれて心から嬉しかった。俺は笑顔になって返事をして玄関扉に手をかけて開けて家を出る。
これが、訳あり少年と訳ありサラリーマンのほのぼの涙あり笑ありのラブストーリーの始まりだった。
クズ男とダメ男の恋の話 橋本衣 @yuitakahasi
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