新説・雪女
おじさんさん
雪
今か昔か。ここではないどこか不思議な物語。
男がある村を訪ねていた。
男は雪の季節になると、山麓のどこかにいるという白いオオカミを狩に来ているのだ。
村の人々は山に住む白いオオカミは神さまの化身だと、喜作の事を快く思っていなかった。
「喜作さん、今年も来てくれたのね」
喜作と呼ばれた男の目の前に雪よりも白い少女。雪が立っていた。
「雪、また世話になるよ」
ふたりは冬の間、一緒に過ごす。ささやかな日々が雪の幸せであった。
そして春。
「今年も白いオオカミを狩る事ができなかったな」
喜作は去っていった。
「もっと、ずっと、喜作さんと一緒に……どうしたら……」
雪はずっと喜作と居られる方法を四六時中考え、考え、そしてある結論に達した。
「そうよ、ずっと冬だったらいいのよ」
雪は山に入り、神に祈った。
「雪を、雪を一年中、雪がふりますように」
九十九日、雪は祈り続けた。
村の人々は思い詰め雪女の様に白くやつれた雪を見て、最初は心配していた人も気味悪がっていた。
100日目。
白いオオカミが雪の前に現れた。
(人の少女よ、雪はふらせてやれるがそれで後悔はしないのか?)
雪は喜作とずっと会えるならと他の事は考えず答えた。
「ハイ。あの人に会えるなら」
(わかった)
白いオオカミはそう言って去っていった。
雪 雪 雪
しんしんと雪がふる。
「これで会えるあの人に」
村の人達は畑も田んぼの作業もできずに途方にくれていた。
「これは、雪女の仕業か」
口々にそんな話が聞こえる。
しかし、喜作は来なかった。
この村だけでなく、国中に雪がふった事によって喜作は雪の村にくる理由がなくなったのだろうか。
「あの人は山で私を待ってくれているんだ」
そう言って雪は山に歩いていった。
その後、あの山には雪女がいて雪を降らせているのだ、という噂が聞こえるようになった。
喜作は本当に雪に会いに来なかったのか。
山で村人に何かをされたのか。
白いオオカミに返り討ちにあったのか。
雪はいつまでも止む事なくふっている。
新説・雪女 おじさんさん @femc56
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