あなたの見えている色を、私は知りたい。
- ★★★ Excellent!!!
「白が赤く見える」という特殊な感覚を持つ主人公の物語は、他者と分かり合えない孤独を抱えた現代人の心にそっと寄り添います。
幼い頃の衝撃的な出来事から始まる彼の人生は、誰とも共有できない世界の中で生きる難しさを描きつつも、希望に満ちた結末を迎えます。
特に心に残るのは、夕日に照らされた雪景色の美しさを共有するラストシーン。異なる視界を持つ者同士が、同じ瞬間を「美しい」と感じる奇跡に胸が熱くなりました。この作品は、違いを超えた「共感」の力を優しく教えてくれます。
私たちは多様性の時代に生きていますが、他人の気持ちや価値観を完全に理解することは簡単ではありません。
それでも、「知りたい」という気持ちや相手を思う心があれば、異なる価値観の間に橋を架けることができるのではないでしょうか。本作は、その一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
読後に訪れる温かさと、どこか切なくも希望に満ちた余韻をぜひ体験してください。