第2話

 気がつくと、僕は女と山の中を歩いていた。空からは白いものが間断なく落ちてきて、僕の身体にまとわりついた。周りは名も知らない樹々が取り囲んでいた。樹の枝には白いものが高く降り積もっている。


 足元は膝まで白いものが埋めていた。白いものから足を引き抜くと、僕は一歩先にその足を降ろした。たちまち、その足が白いものに埋まった。


 女が僕に手を差し伸べてくれた。冷たい手だった。女は僕をどこへ導いているのだろうか?


 ふいに、ここに来る途中、汽車の中で読んだ新聞記事が僕の脳裏によみがえった。


 雪の宿で宿泊客の謎の失踪事件が頻発・・・


 空からは白いものが落ちてきている。音のない世界だ。僕は女と歩いていった。


       了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪の宿 永嶋良一 @azuki-takuan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画