雪の宿
永嶋良一
第1話
僕は窓から外を見ていた。灰色の空からは、無数の白いものが絶え間なく落ちてきていた。それらは音もなく地表に到達していく。地表は一面の白だ。音のない世界だった。
ここは、山の中にある、小さなさびれた温泉だ。細い坂道に沿って、小さな旅館が3軒だけ建っている。僕が泊まっているのは坂の一番上にある旅館だ。だから、部屋の窓から狭い温泉街全体が見渡せた。眼下の白一色の世界には動くものは何もなかった。
そんな僕の眼に初めて動くものが映った。白い着物を着た女が一人、坂道を登ってきたのだ。白い坂道に、白い女・・・
女が僕の泊まっている旅館の前まで来た。女が上を見あげた。僕と視線が合った。女が僕を手招いた。
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