序盤から主人公が絶体絶命。どうなってしまうんだろう、とハラハラさせられました。
主人公であるアイラは聖女だったが、ある時に「偽聖女」と糾弾されて幽閉されることが決定する。
婚約者であるザカリア王子は「雪雷の魔剣」というものを抜いたとされ、それを抜いた者こそが王になると定められている。でも、ザカリアはどう見ても男爵令嬢のカロリンに取り込まれているようで……。
そうして失意に浸るアイラは、彼女の護衛騎士であり「雷に打たれて」死んだサールのことを思い出す。
ファンタジーの世界で言えば、「剣を抜いた者」は絶対的な英雄で、その存在こそが正義というのがルールです。そんな剣のマスターであるザカリアが敵に回ってしまった段階で、アイラには逆転の手があるのか、と続きが気になってならなくなりました。
そして護衛騎士のサールのキャラがまたとても良かったです。体が大きくて無骨なんだけれど、アイラに対して忠実。
どことなくセントバーナードとかの「大きな犬」を思わせる感じで、なんだか微笑ましさがあります。
アイラには助けが来るのか。果たしてハッピーエンドは訪れるのか。
雪の降る情景の中で、ひたすら寒さが迫ってくるような展開。そんな中で小さな火が灯るような感じがじわじわと広がって行く。
読後感が良くて、すごく満足させられる一作でした。「魔剣」というアイテムが絡むことで運命や恋愛にも変化球を投じてくれる感じがあり、ハラハラしながら楽しめる作品となっていました。