人類の不滅とミーム。
- ★★★ Excellent!!!
不意に全人類が不老不死となり、どんなに身体を欠損し損壊しても集合し再生するようになった世界。そんな超常的な現象が普遍となった世界で、学者である「私」は、その意義について考察を重ねる──。
人類が繁栄を遂げたのは、離散と集合が絶えず行われていたからだと思います。それは作中で言及されるような「置き去り」とか「わびしい線香花火」と表現されるような散り散りで一過性の状態ではなく、「離れた先に身を置ける場がある」ということを指します。
人類が不滅になったことで記録に意味がなくなったと冒頭語られますが、じつはそんなことはなく、その社会でその記録が“残された”ことこそが重要なのだと思います。どんなにわびしい線香花火でも、人々は火花が散り消え失せるまでの光の過程に様々にリアルな感情を抱き、また思考するのであって、決して「線香花火」という物体に感情的になるわけではない。また、社会的には「誰が発信したか」は然ることながら「誰が受信したか」も極めて重要です。
この作品がどういった媒体に残されたものなのかはわかりませんが、運良く無傷で宇宙に放り出されれば、作中の人類よりもはるかに長い時を経て、何者かに読まれるのかもしれません。
あるいは、その瞬間こそがこれを読む我々なのかも──とかね。