テロの発生ー2
拘束した男の内ポケットから拳銃を回収した。
(あらかじめハンカチに睡眠剤を染み込ませておいたのは正解だった)
一輝は残弾数を確認した。
「2発か......」
(ここへ隠れる時に見えたのは確か、全部で4人)
頭に機内の構造を思い浮かべる。
今居る場所の床に手を置いた彼は言った。
「サウンドプロフィング」
(これで今俺が居るビジネスクラスのエリアは、さっきまで居たエコノミーエリアと視覚的かつ聴覚的に遮断された。ひとまず外部に音が漏れてテロリストが暴れることはない)
少し細工ををした後に一輝は銃口部に手を当てた。
「デフォメーション」
彼が言葉を口にした途端、触れていた部分が細かいな粒子のような物へと変換され、数秒後にそれは再構築された。
銃口の先には先程まで無かったサイレンサーが取り付けられていた。
こんな魔法じみたことを出来るのが今の世界だ。
一輝は拳銃の安全装置を外した。
(準備は整った)
一輝はゆっくりと通路の方へ向かった。
通路との仕切りになっているカーテンをわずかに動かして、客席の状況を伺う。
テロリストたちの配置を改めて確認すると、彼は飛び出した。
最初に気づいたテログループの一人が声を上げる前に一輝が引き金を引いた。
サイレンサーのおかげで発射音は周囲に座っていた乗客にしか聞こえなかった。
銃口は客席全体の中央に向いていた。
放たれた弾丸はそのまま向かいの壁にめり込むかと思われたが、そうではなかった。
半分ほどの所で弾丸は爆発した。
小さな爆発音のみが鳴り、周囲にいた者たちへは一切の被害はない。
一輝の存在に気がついたテロリストたちは銃を手に取り、彼に向かって発砲を始めた。
一輝は銃口をテロリストたちに向けた。
(......ここで暴れられるのは面倒だな)
「ウェイト」
(対象の運動速度を低下させる超科学)
テロリストが銃を向ける動き、引き金を引く動き、放たれた銃弾、全てが認識できる。
自分に向けて放たれた三つの弾丸を交わしたところで一輝はウェイトを解除した。
自身の動きを超科学によって加速させ、相手の一人を地面へと倒した。
「まずは一人」
残り3人は構わず発砲を行なってきた。
そのうちの座席前方にいた一人は窓の反射で正確な位置が掴める。
一輝は迷わず天井に銃を向けて発砲した。
決してヤケクソで撃ったわけではない。
(弾丸の運動量はそのまま、ベクトルだけ調節してやればいい)
弾丸は本来ならあり得ない軌道で一人に命中した。
すぐに乗客がいない近くの座席のかげに隠れた。
「キャアアア」
女性の悲鳴だった。
乗客、もしくは搭乗員であることは間違い無いだろう。
「よく聞け、そこに隠れてる奴、ここが血の海になりたくなけりゃあ今すぐ出てこい!」
言われた通りに一輝は座席のかげから立ち上がった。
だが一輝は拳銃はしっかりと構えてだ。
「な、何してんだお前馬鹿なのか!構ってるそれ、さっさと捨てろよ!」
二人のテロリストのうち一人が人質を、もう一人が一輝に銃を向けている。
「おい、聞いてんのか!」
一人は声を荒げながら人質の女性の頭に銃口を突きつけている。
それを見てもなお、彼が構った銃を下げることはなかった。
「俺は......引き金を引ける」
彼は小さな声で呟くと、人質を抱えた方に向けて発砲した。
テロリストは自分たちに向けられていた中から発砲音が聞こえた時点で引き金を引いた。
一輝の発砲音に遅れて二つの発砲音が聞こえた。
超科学のエリミネーター 涼梨結英 @zyugatunomochituki
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