超科学のエリミネーター
涼梨結英
テロの発生ー1
「ふぁ......」
アメリカから日本へ向かう飛行機の中で浅野一輝は眠りから目を覚ました。
(どれくらい寝ただろうか)
時計を見ると寝はじめてから一時間ほど経過していた。
「日本に着くまであと少しか......」
呟いて再び椅子に背をもたれると彼の前の席に座ってジャンパーを着た男が立ち上がった。
後ろ姿しか見えないが、何やら服の内ポケットのあたりに手を入れている。
一輝はふと視界に入ったその男から目が離れなかった。理由は特にない、ただ直感的に気になったのだ。
男はそのまま歩き、トイレにでも向かうのかと思ったがそうではなかった。
並べられた客席の最前列、その中央で立ち止まった。男は未だにジャンパーの内側に手を入れている。
その後、空いている片手で壁に備え付けられているアナウンス用のマイクを取った。
「お客様?そちらのマイクは」
近くに居たキャビンアテンダントが男に声をかけた。
「ん......?」
首を傾げるのと同時にジャンパーの内側に入れていた手を外へと出した。
声をかけたキャビンアテンダントの額に冷たい金属が触れた。
向けられたのは銃口だった。
誰かの甲高い叫び声が静かな機内に響いた。
「うるさい、喋るな!」
「バンッ」
弾丸が放てれた音だった。
銃口は額から離れて男の向かいにある壁に向いていた。
弾丸が乗客の頭上を飛び越えたらしい。反対の壁にしっかりとめり込んでいる。
男はため息をつきながら再びマイクを取った。
「たった今からこの機は我々プロテウスが占拠した。下手なことはするな、我々は常にお前らを見ている」
一輝の隣に座っていた一人の乗客がバックに手を伸ばそうとすると背もたれの後ろから銃が突きつけられた。
(仲間がいるってことか......)
再び男はマイクを手に取った。
「我々の要求は東京特殊収容所に捉えられている仲間の解放だ」
(どうやってそんなことを......。確かに国は国民を守るかもしれないが、たかかが乗客約500人にために捕まえたテロリストを解放するとは思えない、何かあるのか......?)
一輝の疑問が解決されるのは早かった。
「聞こえてるか?内閣総理大臣の井山信雄、あんたがここに居るのは分かってる。一時間だ、空港に着くまでに決めろ」
******
プロテウスと名乗るテロリストから要求がなされてから30分ほどが経過した。
現状プロテウスの奴らにこれと言った動きは見られない。
(そろそろ動くべきか......)
一輝は腕時計で時間を確認して手を上げた。
「どうした?」
先程隣の乗客に銃を突きつけたプロテウスの一人が一輝に尋ねた。
「すみません、トイレに行ってもよろしいでしょうか?」
男は要求を突きつけた、リーダーと思われる男の方に合図を送り一輝の手を掴んで通路へと引きずり出した。
念の為かボディーチェックがなされた。
(ハンカチも取り出すのか、しっかりしている)
通路を歩く時も両手を後ろで拘束された状態。
前方の客席とを遮るカーテンを潜ったところでトイレの扉が見えた。
「ほら、早く済ませろ」
乱暴な声が聞こえたところで、一輝は振り返って男を搭乗員が業務を行う座席後方の小さな空間に連れ込んだ。
抵抗する男を床に押し倒してハンカチを口に押し当てた。
徐々に男は力を失い、その場で気を失った。
「ふぅ......」
乱れた息を整え、すぐに男の拘束を済ませた。
「ここからはあまり時間をかけられない」
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