あなたの中にいる、もう一人のあなたへ。

 高校2年の夏休み、美術部の作品制作のために美術室を訪れた主人公は、同学年の幽霊部員の男子がキャンバスに向き合っていることに気づきます。

 それは、ひと月ほど前に交通事故に遭って以来、長く学校を休んでいた生徒でした。
 
 久しぶりに元気な姿を見て喜ぶ主人公でしたが、彼の雰囲気は以前とは全く違っていてました。

 ――彼は幽霊? それとも生き霊?
 その彼は、本当に以前の彼なのか?

 主人公は彼の中に潜んでいたもう一人の『彼』の存在を知ります。その『彼』に名前をつけ、彼と接する内に淡い恋心が……。

 でもその淡い恋心は、自分を取り戻した彼の言葉によって打ち砕かれます。

 ――もう一人の『彼』は、その彼に支配されもう二度と会えないと思っていた時……。

 短編ながら、ぎゅっと想いが詰まった作品です。予想外の展開に驚きながらも、ラストで一瞬見えた『彼』の眼差しが切なくもあり悲しくもあり……。

 読み進めるうちに、作者様の感性と世界観に引き込まれます。

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