第2話 久しぶりと初めまして👋

国王と別れた後、ファムは教会に向かっていた。

ここリセス王国に唯一存在しているエマイシス教会が設立している、そこで祀られているのは世にも珍しいスライムなのだ

エマイシス教会の文献の中には

曰くそのスライムは何万という人間の病を治したという。

曰くこの国の初代国王を守ったという。

曰くスライムは竜すらも討伐できる力をもっているという。

などと本当か嘘か分からない文献が多く残されており。聖書の最初のページにはそのスライムの見た目が描かれており、普通のスライムとは違い人型に近い姿をしている。

ちなみにファムはこの国のスライムどころか別の神さえも信じていない、無宗教主義者である

そんな人間が教会に向かう必要はないと感じるだろうが、ファムにはある。

それは、、、


「大司教様お久しぶりです。」


友に会うことであった。


「おや、ファム様。今日はどうなさいましたか?」


ファムに話しかけられた、大司教クネリオ・シューベルトは一瞬目を見開いたあと、普段と変わらない柔らかい口調で喋る


「はい、少しに行きたくて」


「そうですか」


大司教は笑みを浮かべ懺悔室がある方向へ歩く途中司祭が大司教様の代わりにと申し出たが、大司教は丁重に相手を尊重しながら断った。


「ファム様つきましたよ。」


そういって連れてきたのは懺悔室ではなく、教会側の人間が休む、休憩室(大司教専用の個室)であった。休憩室にある椅子に腰掛け、暖かい紅茶とクッキーを机においた

実はクネリオ・シューベルトとファムの2人は旧知の仲である。それも悪友という関係であった


「それで、何しにきたんだい?ファム」


先程の大司教としての威厳や優しさを持つ口調ではなく、クネリオという人間としてファムに話しかける


「いやぁ~勇者チーム追放されちゃってさぁ」


頭をかきながらクネリオに話すその姿は、先ほどとは大きく違い、イリゼスの時に見せた笑みを浮かべていた

その笑みを見たクネリオは呆れたと言わんばかりにため息を吐きながら相変わらずの緩いファムを見て自然と笑みになっていた


「はぁ~、まぁ今回は良く持ったほうだね。イリゼスちゃんには?」


椅子に座った状態で足を組み、組んだ足の膝に両手を置いた状態で、やれやれと首を振りながらファムに問いかけた国王であるイリゼスに報告したのかと聞く


「もちろん言ったよ」


「ファムちゃんのことだ、あんたにも色々原因はあったんだろうけどリアちゃんにはこっちからなにか言っておこうか?」


と聖女リアのことをさす。実はエマイシス教会では、聖女や僧侶を専門に育てており、この2つの権利を教会が所有している。


「いや、良いよ。クネリオも忙しいだろうしそれに俺達が何か罰を下さずとも痛い目みるだろうしね」


「そりゃあ良かった、それで次は誰に会いに行くんだい?言っておくが今ダラスちゃんはいないよ」


軽く流しながら、膝に置いていた手を机に置き今度はアゴを支える土台として使いファムを見つめる


「うげ、、、まぁ忙しいからいないとは思ったけど、、、」

 

とは言うものの久々の再会が出来ずに明らかに残念がっていた


「あっ、バーバラならいるよ」


「まぁ、あいつはいるよな」


あいつは変わらずかと思いははっと呆れたような顔で笑い、思い出を語り合う。

数10分が経過した頃ファムが立ち上がった


「おや、もう懺悔は終わりなのかい?」


口角を上げ冗談交じりにファムに向かって言った。


「あぁ、終わったよ


「それはよかったです。


「「、、、クフ、、」」


お互いに見つめ合いながらフフッと笑みを見せる。昔のバカをやっていた時のように、そして合図をするわけでもなくガシッと互いの手を取った。


「次会う時は、うまい酒場にでも連れてってやるよ」


「そりゃあ楽しみだ、それまであたしゃ長生きしとくよ」


2人は手を離したあと懺悔室(休憩室)を後にした。

ファムはクネリオに1度深い礼をしたあと教会を後にし、バーバラがいる魔術会に向かった。

魔術会とは。魔方陣の簡略化、効率化、新しい魔法の創作、そして発表を主にした研究施設である。

しかし研究施設と言ったが魔術会は、魔術師を育てている学校であり、魔術師の権力や責任を請け負っている。


「すいません、バーバラに会いたいんですけど」


扉を開くと、大きなシャンデリアが出迎えて、紫を基調とした絨毯が敷き詰められ、10mはあるであろう絵画が飾られている。神聖な白を基調とした教会とはまた違った雰囲気を漂わせている。

しかしファムはそんなものには目もくれず、本来関係者以外立ち入り禁止区域である場所にズケズケと入っていく。そこで働いている研究者は誰もそれを止めることは無く、黙々と自分の研究に没頭していたり、生徒に魔術について教えていた。

ファムが向かったのは、この魔術会でもっとも広い研究施設と言われる部屋であり、ついでに最高責任者がいる社長室でもある


「バーバラいる~?ってきったな」


本来ならば大きなステンドグラスから見えるであろう夜景の景色は、よく分からない実験器具や魔物や人間の身体の一部がホルマリン漬けにされたものが飾られて、全く見えていないのである。

そして地面にはミスや納得がいかなかったのであろう論文のゴミ山や菓子やドリンクの容器が散乱している。


「んん~?失礼だねぇ、これでも魔法で虫1匹寄り付かないようにしているんだよぉ?」


研究のしすぎか目元に大きなクマを携た猫背の女性が奥から出てくる


「虫いてもいなくても変わらないと思うの」


先にイリゼスとクネリオに会ったせいか、余計にバーバラの部屋が汚く見えていた


「何でだい?ただゴミが辺りに散らかってて研究用の機材や材料で部屋が埋まってるだけじゃないか~」


何をそんなに嫌がるんだ?という顔でバーバラは当たり前かのように言った

ちなみにバーバラは引きこもりではあるが誰とでも気さくに喋れるタイプで、なんなら同じ研究者と魔法について一歩も譲らない口論をすることもあるぐらいである。


「まぁ、座りたまへよ」


「あ、はい」


杖をかざすと机の上に山のように置かれていた書類がフワッと浮き、適当な場所に放り

自分の席にだけ紅茶が入ったコップを置いた


「それで、今日はどうしたんだい?君がここに来るのなんて久々過ぎるからねぇ」


ニマァっと詐欺師のような不気味な笑み(無自覚)を浮かべながらファムに問いかける


「勇者チーム追放されました-」


目を一瞬大きく見開いたあと直ぐにいつもと変わらない目を細めた瞳に戻りニマァと笑う


「君がかい?」


カランと机に立て掛けていたバーバラの杖が床に倒れる。バーバラは杖を拾いながら言っていた、横顔は相変わらずニマァと口角を上げていた


「本当だよ。いや~しくったね。見せなさすぎたよ自分の力」


頭を搔きながら言うファムを見つめ小さく息を吐いたあと口を開く


「アテナちゃんにでも伝えておこうかい?勇者チームに帰れるようにさぁ~」


アテナとは勇者チームの魔術師で、主に後方支援を行っている。大人しい性格の女性である


「いやいや、アテナには荷が重いだろ。場合によっては部下に対してのいじめになるぞ」


「ハッハッハッ!流石に冗談さぁ、私とて可愛い部下に無理はさせるようなことはするわけがないだろう?」


わざとらしく大きく笑うバーバラを見たファムは(本当に冗談で言ったのか?)と内心感じていた。

バーバラは紅茶を1飲みしたあと、椅子から立ち上がある。ちなみに紅茶が入っていたコップは机に置きっぱなしである。


「あれ、もうお話は終わり?まだ4ラリーぐらいしかしてないけど」


実験器具が多く置かれている方へ向かう後ろ姿を見ながらファムは言った


「すまないね~本当はもう少し話したいんだぁが、今日中にこの実験を終わらせたいのだよ~次来たときには、もっと会話を続けるように努力するから許しておくれ」


昔から自分の世界に入りやすかったバーバラはファムの方を向かずに、よく分からない物体に杖をかざし、これまた黒一色のよく分からない液体の中に入れたりと調合をやり始めた

ファムはいつものことだなと割りきりバーバラの実験室兼社長室から出ていこうと後ろを向く


「あっそうそう、これは独り言だかねぇ。もっと人を頼っても良いと思うぞ?まぁ私が言ってもあんまり響かないとはおもうが」


一瞬の沈黙。ポコポコとバーバラが実験をしている音だけが聞こえる状態、ファムは何のことだと言わんばかりに笑みを浮かべ


「余計のお世話」


と言った。


─────────────────────


ファムがバーバラ専用の研究室から帰ったあと、バーバラはまた独り言を呟く


「ファム君は私達みたいな化け物と関わったのがいけなかったのかもね~分かるよ。私にも普通の人間は少し頼りなく少し脆い」


バーバラ。彼女の異名は赤い魔女またの名を血に飢えた魔術師。多くの魔族を葬り、また人間同士の戦争にも最前線での戦闘を好み多くの人間も葬っている。国王であるイリゼスから唯一1級、2級の魔法を禁止されている者だ。


「あ、、、また失敗してしまったねぇ、、、」


─────────────────────


魔術会を後にしたあファムは暗くなっている街中をふらふらと歩いていた。元チームメイトの勇者達はもうおらず、恐らくは宿で休憩中なのだろうと考えながら屋台で食べ歩き用にと焼き鳥を頬張っている


「ん?」


ファムは食べていた物を口から離し、視界の隅に写ったものを追い路地裏に入る。


「やだ!やだ!!やめてよ、、、!痛いよ、、逃げてごめんなさい、、、役立ずでごめんなさい、、何でもします、、!もう痛いの嫌です!!」


奴隷であろう、か細い少女が大人に囲まれて暴行を受けていた。ファムはめんどくさいと思いながらもその中に行く


「へーい!そこの人達そこの子は奴隷かな?」


一斉に大人達はファムの方をみる、今の時代奴隷は禁止されている、しかし誘拐や秘密裏に両親に売られるなどして奴隷にされたと言う、犯罪は今だに無くなっていない


「あ?あぁ違うよ。この子は奴隷じゃねぇよ、そうだよな?」


1人の男がヘラヘラと笑いながらファムに話しかけ、奴隷と思われる子の髪を掴み奴隷ではないことを言わせようとする


「いや、、隠すんならもっと上手に隠s」


話し終わるより前にファムの頭に衝撃が走る。何か固い恐らくは鉄で出来た物で殴られたのであろう。

         カラン 


「は?」


しかし勝ったのはファムであった。叩かれたと、思ったものは実は刀でありファムを切ろうとしたが刀は折れ、先端が地面に落ちていたのであった


「、、、倍返ししてくれるわ、犯罪者共」


頬張っていた焼き鳥を一気に頬張り、相手を見つめる


「1人に何ができる?俺達に勝てると思ってるのか!!?」


ある者は刀を取り出し、またあるものは魔法でファムを攻撃しようとする。

ここで、ファムの本来の戦法を紹介しよう

ファムはいわゆるバッファーという役職であり基本は後衛職である、しかしファムは相手にデバフをかけ自身にバフをかけて相手が倒れるまでぶん殴る喧嘩殺法を好んでいる


「な、なんだこりゃ??!」


急に自分の力や魔力が低くなり戸惑う男達を尻目にファムが一人の男の顔をおもいっきりぶん殴る


「おい!相手は1人だぞ?」


煽り口調で言ったその言葉を皮切りに次々と男達を殴り飛ばし一発KOを決めた、ニッコリと満足そうな笑みを浮かべたあと、ボロボロで未だに気を失っている少女に近づく


「生きてる-?」


肩を揺らしながら話しかけると、ボロボロの女の子の目がカッと開きファムを数秒見つめたあと土下座をした、ビクビクと身体を震わせながら


「眠ってしまってすいませんでした。逃げてしまってすいませんでした。殴っても良いです。蹴っても良いです。ただお願いします。命だけは、、、命だけは、、まだ取らないでください」


涙は出していないが身体が震えている、ファムは困ったように頬を搔きながら言った


「いや、眠ってたって言うか、、、まぁ良いかあとあんたのご主人様ってこいつらなの?」


的確に顔に重い一撃をもらい気絶している男達の方を指差す


「え、、、あ、、っ、、、と、そう、、です。、、で、でも、、、なん、で?」


身体はそのままに、顔だけを上げ現状把握がまだ出来ておらず戸惑っていた。


「なんでって、まぁ、正当防衛?」


「そ、、そう、なん、、ですか、、、、」


ファムの答えに戸惑っている少女は安心したのか、それとも身体の限界からか、意識を手放した。ファムは少女の頭が落ちる前に身体を支える


「スゥー、、、どうしたもんか、、」


少女をお姫様抱っこし、怪我の治療や出生など色々不明な点があり考えていたが、明日考えようと宿に入る

店主には変な顔をされたが、何とか泊めてもらわせた。

明日からどうしようかと考えながら長い1日が終わった。

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俺監視役なんだけど追放されちゃいました!!!これから自由に生きます!! 俺にゃん @orenyan0809

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