第6話 剣王の弟子

===ダジロ===


 ダジロは目の前の偉丈夫を見つめていた。

 圧倒的な筋肉、圧倒的に下手な構え。

 どこからどう見ても素人にしか見えないのだが。

 現に簡単に戦闘のプロ達を瞬殺している。


 クロルと呼ばれている元鍛冶職人らしい青年は剣を振るう。

 それは、斬撃を飛ばしているというよりかは、剣そのものから斬撃が飛んでいると言っていいだろう。


 ダジロは元剣王であるシュナイザーから指導を受けている。

 シュナイザーは斬撃を飛ばすだけで、山を破壊する事が出来るとされている。


 だが、ダジロは一軒家を両断する事くらいしかできない。

 それでも、目の前の男は手で払ってしまった。


 瞬足でクロルの至近距離に肉薄すると。

 

「これなら!」


 懐から剣で斬撃を飛ばす。


 クロルの胸が裂けて、赤黒い血が噴出する。

 だが、血は一瞬にして氷のように塊、蒸発していく。

 傷はみるみるうちに治療されていく。


「ば、化物か」


「自己再生だが、初めて使用させてもらいました」


「お前はなんなんだ」


「ただ。自由を勝ち取りたく、ただ、友達や師匠を助けたいだけなんですよ」


「そうか、友達とはアリナ・マカフの事か」


「そうですけど」


「アリナなら、もういないぞ」


「なんで分かるんですか?」


「死んだからだ」


「・・・・・・」


「アリナは突如消えた。血だるみを残してな」


「そうですか、死にましたか」


 クロルの目から一筋の光が消えていく。

 そして、顔が鬼のように切替わっていく。


「それなら、もう良いでしょう」


「諦めたか」


「ジフ卿とその周辺の者共を皆殺しにするまで止まりません」


「な、なんだと」


 迷いが消えた。

 目の前のクロルから何もかも消えた。


 一瞬だ。ダジロの目の前に氷のような槍が投擲されていた。

 武器を切り替える姿を見る事も、目で追いつける事も出来ない。


 ダジロの心臓に氷のヤイバが突き立った。 

 ダジロはそこで死んだ。


===クロル===


「さぁ、起きてください、あなたには仕事がありますから」


 死霊の杖。

 S級冒険者は亡霊のごとく蘇った。

 眼はうつろでありながら、意識は全てクロルに操られている。

 クロルのスキルで指揮者がある。

 それで完璧なまでの支配となっているはずだった。


「ぐぅうぅ」


「不思議ですね、あなたはなかなか支配出来ないようだ」


「俺は死んだのか」


「死にましたよ」


「そうか、なら、戦うか」


「無理ですね、反旗を翻せば死体に戻ります」


「俺はどうしたら良い」


「S級冒険者ダジロ、力を貸して欲しい、いえ力を貸さざる負えません」


「そうか、ジフ卿を」


「いえ、あなたには酷でしょう、アリナ・マカフを探してください」


「だから死んだと」


「いえ、あの子は簡単には死にませんから」


「どういう」


「アリナは簡単には死なない、そう俺が願っているだけです」


 クロルの瞳は優しくなっていた。

 

「さぁ、アリナを探してきてください、俺はジフ卿を殺す」


 のっそりと、クロルは次なる目的の為に城へと逃げて行ったジフ卿を探しに歩き出した。


 ダジロはデルファルド王国のどこかへと亡霊のように消えて行き。

 キングナイトと死霊達は騎士団員を皆殺しにしていた。


「さてと」


 クロルは歩きながら、100個の箱を受け取り後程開けようと決意し。

 経験値の石100個を使用した。

 レベルが116になり。体に激痛が走る。

 そんなものはもはや関係なく。


 はやく、フィルガルド師匠と出会いたかった。

 ただそれだけなのだから。


===牢獄===


 心に残像のように残っていたフィルガルド師匠の思い出。

 身よりのないクロルを鍛冶見習として助けてくれた。

 ただそれだけの存在なのかもしれないが。


 それでもクロルにとって心温かい気持ちになれるきっかけだったのかもしれない。


 だから、ジフ卿を殺しに行く前に、牢屋に向かったのだと思う。

 そこに鎖で繋がれているフィルガルド師匠の亡骸を見つけて。


 檻を折り曲げて、フィルガルド師匠の鎖を破壊して。


 ただただ。師匠の開かれた目を閉じさせる事だけをして。

 ゆっくりと右手と左手を合わせて。

 天国があればそこに行って欲しいと願い。


 クロルはゆったりとした歩調でジフ卿の元へと向かうべく歩き出した。

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Bounty hunter Quest-バウンティーハンタークエストー AKISIRO @DrBOMB

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