第5話 最終決戦
ネオンシティは、かつてないほどの暗闇に包まれていた。サラ・ミノルの陰謀が頂点に達し、都市全体がその影響下にあるかのようだった。レイ・キサラギは、最終決戦の場へと向かう。ここで、サラと対決し、すべてを終わらせる時が来たのだ。
ビルは都市の中心部にそびえ、レイはその頂上に向かう。アキラの情報により、サラがここで最終計画を実行しようとしていることが分かっていた。サイバネティック・アイはすでに最大限に機能し、レイはサラの痕跡を追う。
ビル内は静寂に包まれ、レイは慎重に進む。警備はすでにサラの指示で強化されていたが、レイの技術と直感はそれを上回る。最上階に到着すると、サラが待っていた。彼女の周囲には、都市のコントロールを可能にする巨大な装置が設置されていた。
「これで終わりだ、サラ。」レイは言い放つ。
「終わり?これは始まりよ、レイ。」サラは冷笑し、戦闘の準備を整えた。
二人の間で激しい戦闘が始まる。レイはウエイブと影武流を駆使し、サラの攻撃をかわす一方で反撃する。サラもまた、サイバネティック強化を用い、レイを圧倒しようとする。
しかし、戦闘の真っ只中、サラは手のひらサイズの黒いケースを取り出し、声を上げた。「停止。」すると、彼女の持つサイバネティック・ディスラプターから特定の周波数の電磁波が発せられ、突然レイのサイバネティック・アイを含む全てのサイバネティック技術が停止した。アキラの声が通信機から響く。「レイ、サラの装置がなんらかの妨害波を発している。お互いのサイバネティック強化が使えない!」
この装置は、サラが開発したもので、サイバネティック・コンポーネントの共振周波数に合わせて停止させることができる。彼女がこの装置を保持するのは、サラが心理的な優位性を確保するためだ。彼女はこの装置を使い、相手のサイバネティック技術を停止させることで不安や混乱を引き起こし、自身の戦闘能力を最大限に発揮する機会を得る。また、都市のサイバネティックシステム全体を一時停止し、彼女自身のみが制御できるようにすることで、最終的な支配を確立し、都市の制御を確実に握るためでもある。
レイは驚くが、即座に格闘技の基本に立ち返る。ネオンシティでは、テクノロジーが人間の能力を超える一方で、格闘技は生身の肉体と精神を試す最後の手段として崇拝されていた。彼にとって、格闘技はテクノロジーへの依存から逃れ、人間性を再確認する手段だった。
サラもまた、自身の肉体に頼るしかなく、二人は純粋な格闘技の戦いに突入した。レイはタックルでサラにテイクダウンを決める。彼女を地面に押さえつけ、両腕を抑えてから頭突きを繰り返す。この原始的な攻撃は、レイが持つ格闘技への深い理解と信仰を象徴していた。サイバネティック強化がなくとも、己の肉体だけが頼りだった。
「何のために戦う?」サラが問う。
レイは答えず、頭突きを止めずに続ける。
サラの反撃は弱まっていき、最終的に、彼女は意識を失った。レイは立ち上がり、都市のコントロール装置を無効化しようとする。
しかし、装置はすでに不可逆的なダメージを都市に与えていた。アキラの声が再び通信機で聞こえる。「レイ、装置を止めた…が、都市は…もう元には戻らない。ネオンシティは壊滅した。」
レイは震えながら窓から外を見た。都市は崩壊し、光は失われ、ただ暗闇と廃墟が広がっていた。サイバネティック・アイは再起動しなかった。レイは自分の肉体に頼るしかない現実を直視し、深い絶望を感じたが、同時に覚悟を決めた。
「これが…新たな始まりか…」レイはつぶやき、再び歩み始めた。その足取りは希望を完全に失ったわけではなく、新たな都市の再建、そして自分自身の再生への強い決意が込められていた。闇の中でも、一筋の光を見つけるために。
ネオン・ファイター @mandoriru11
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