オーバーロードクリスマス

雲井

オーバーロードクリスマス

 (……ホワイトクリスマスかよ……)

 寒さのあまり鼻水をすする柊斗《しゅうと》とは対照的に、周囲からは初雪を喜ぶ歓声が上がる。

 大学が冬休みに突入したこの日、柊斗はイベント警備のバイトに入っていた。

 催しが行われるメインステージに、クリスマスマーケットを模した屋台たち。会場ど真ん中に立つ巨大クリスマスツリー。幸せを具現化したようなキラキラした空間の中で、柊斗に割り当てられたのは関係者用裏口のポジションだった。一般客が間違えて入ってこないように見張る……のだが、そもそも関係者も大して来ない。小さく足踏みしたりして、ただひたすら寒さに耐えているだけだ。

 (警備服、まじで寒いんだよな)

 空を仰げば白い雪。ご丁寧に会場の裏手にまで張り巡らされたイルミネーションにもさすがに飽きてきた。

 メインステージで行われていた聖歌隊の合唱が終わったらしく、盛大な拍手が漏れ聞こえてきた。確かこの後は売り出し中のタレントのトークイベントだ。イベントが始まったら、すぐ交替の時間のはず。

 ……だったのに。

「おい!こっちにはいないぞ」

「そっちは?建物の中入っちゃったとか……」

「そんなんすぐ気づくだろ!早くしないともう時間が!」

 にわかに周囲が慌ただしくなる。大人達がバタバタと走り回り、人気のなかったこっちにまで何人かが駆け込んできた。

「警備員さん!こっち来なかった?」

「?誰がっすか?」

「セイヤ!清水星哉だよ!会場には来たはずなのに、どこにもいないの!」

 さすがの柊斗も寒さを忘れて驚き、密かに握りしめていたカイロを落としてしまう。

 清水星哉 《しみずせいや》。最近バラエティやらドラマやらに引っ張りだこのイケメンタレントで、今日のトークイベントの主役、張本人だ。……もしかして、大事件発生?

「鈴木くん、交替」

 すると後ろから声を掛けられ、同じイベント会社から来た人とポジションを交替する。休憩できるのは嬉しいが、この状態できちんと時間通りにイベントが終わるのだろうか。

 (なんでこの時期に休憩所が外なんだよー)

 あくびをしながら、柊斗は広場の方に向かった。休憩用テントが極寒のため、自販機でホットコーヒーでも買おうと思ったのだ。

 そこかしこでイルミネーションが瞬き、幸せそうなカップルか家族連れしか歩いていない、ホワイトクリスマスイブ。こんな日にこんな場所で、悪態つきながら1人歩いてるのなんて自分くらいじゃないだろうか。

 なんてことを考えながらコーヒーを買って歩いていると、正面から来た人とぶつかってしまった。

「あ、すみません」

 反射的に謝り、ぶつかった人と目が合う。瞬間、柊斗はギョッとしてしまった。

 マスクをして帽子を目深にかぶった、黒いダウンの若い男。ずいぶんと身長が高く、自動的に柊斗が見上げる形になる。その目がやたらとキラキラしていて。きっと、イルミネーションのせいではない。

 ……1人で、泣きながら歩いてる?

「……大丈夫すか?」

 柊斗が思わず声を掛けると、今度こそ彼はぼろぼろと大粒の涙を流し始めた。マスクの色が徐々に変わっていく。

「……大丈夫、じゃないかもしれない……」

「……とりあえず、向こうのベンチ行きます?」

 警備のおかげで会場内の地理は頭に入っている。理由は分からないが、とりあえずベンチで落ち着いてもらおう。――と思っていたのに。

「いた!」

 ふいに響き渡った大声に柊斗が振り向くと、さっき走り回っていた大人達が見えた。人混みをかき分けながら、こちらに向かってくる。

「もうとっくに時間過ぎてるよ!セイヤ!」

 え。

 柊斗は改めて彼の方を振り返る。じゃあここで号泣しているのは。

 瞬間、何が起きたのか全く分からなかった。

 柊斗は彼――星哉に強く手首を引かれたと思うと、気がつけば一緒に走り出していた。イルミネーションのきらめきが走馬灯のように猛スピードで通り過ぎていく。

「ちょ、え?!」

 帽子にマスクの厳重警戒男と警備員が、手を繋いでホワイトクリスマスのイベント会場内を爆走している。あり得ないシチュエーションに、周りもびっくりしたように道を空けていた。そのど真ん中を、星哉はひたすら走っている。

 その細い背中に降る雪が、どうしてか柊斗の目に焼き付いた。



◆◆◆

 どれくらい走っただろうか。

 イベント会場も遠くなり、雑居ビルが立ち並ぶ薄暗いエリアでやっと星哉はスピードを落とした。柊斗の手首を握ったまま、とぼとぼと歩き続ける。

「……あのー。本当に大丈夫っすか。色々」

 柊斗はそう言うと同時に、盛大にくしゃみをした。爆走して体は熱いが、警備服は防寒に優れていない。すると。

「……ごめんなさい」

 急に星哉が振り向き、自分のダウンジャケットを脱いだ。ふわり、と柊斗の肩に掛けてくれる。

「え、どうも」

 素直に礼を言って柊斗がダウンに袖を通すと、急にああ!と叫んだ彼がしゃがみ込んだ。

「俺は……とんでもないことを……」

 頭を抱える星哉の手は、微かに震えている。

「仕事飛ばして……警備員さんまで巻き込んで……」

 星哉の被っている黒い帽子に、雪が静かに降り積もっていくのを柊斗は黙って眺めていた。

「仕事の有難みなんて自分が一番わかっているのに……こんなんじゃ……」

 そう言うと、またボロボロと泣き始めた。さすがに心配になり、柊斗もしゃがんで彼と目線を合わせる。俯いたままの彼の顔を覗き込むと、綺麗な二重の瞳が見えた。いつの間にか外されたマスクの下の素顔は整っているのに、今は涙と汗でぐちゃぐちゃだ。

「キツかったんですか、仕事」

 柊斗の言葉に、星哉は小さく頷く。

「……気がついたら、あそこにいた」

「……これ飲みます?」

 急な柊斗の言葉に、星哉は驚いたように顔を上げた。

「さっき買ったホットコーヒーっす。もうだいぶぬるいけど」

 ぴと。柊斗は缶コーヒーを星哉の頬につける。上着を脱いで泣く星哉が、あまりに寒そうだったのだ。

「……あり……ありがとう……」

 缶コーヒーをそっと受け取ると、星哉は再び大粒の涙を流す。

「警備員さんの職を奪ったかもしれないのに……こんなに優しくしてもらって……」

 ……何故か彼の中で自分がクビになっている。

「一方俺はポッと出のタレントもどきのくせに……いっぱいいっぱいとは言え突然逃げ出して……この後仕事も干されて、ネットでもたくさん叩かれるんだ……絶対そうだ……」

 ……段々雲行きが怪しくなってきた。柊斗は彼のファンではないので詳しくないが、バラエティとかで見るときはもっとこう、爽やかで王子様みたいな感じだったような……。

「……もしかして、清水さんてだいぶマイナス思考の人っすか」

 柊斗がそう言うと、星哉は動きをピタリと止めて黙り込んでしまった。沈黙の間を、静かに雪だけが通り抜ける。

「あ、いや全然責めてるわけじゃなくて」

 慌てて柊斗がぶんぶんと顔の前で手を振ると、みるみる星哉の顔が赤くなっていった。

「だ、誰にも言わないで……」

 とうとう星哉は地べたに三角座りをし、顔を隠してしまった。

「泣き虫だしすぐ弱音吐くし陰気だし。本当に俺……駄目人間すぎて……」

「……びっくりはしたけど、別に駄目人間とは思わないっすよ」

 柊斗がゆっくり話しかけると、星哉が少しだけ顔をのぞかせる。真っ赤な目の奥にある、小さなきらめき。

 雪降る薄暗い路地。クリスマスにそんな所で、泣きながら膝を抱える人が頑張っていないはずがない。

「まあ今日のことは一旦置いといて。お疲れ様です」

 柊斗がそうして小さく笑いかけると、星哉は対照的に目を見開いた。またまた、涙が溢れ出す。ネガティブなだけじゃなく、泣き虫でもあるらしい。

「け、警備員さん……」

 ついに鼻水まで垂らし始めた星哉に、柊斗はハンカチを差し出した。会社から何かあったときのために持ってこいと言われていたのだが、まさかイケメンの鼻水に使うことになるとは。

 激しい音を立てて鼻水を噛む姿は、売れっ子芸能人とは到底思えない。すごいギャップだなあ、と柊斗は少し笑ってしまった。



◆◆◆ 

「落ち着きました?」

 柊斗の言葉に、ビルの花壇に座って缶コーヒーを飲んでいた星哉が小さく頷く。

「……謝りに行かないと……」

 柊斗が腕時計をちらりと見ると、もう既にトークイベントは終わっている時間だった。イベント会場も撤収作業に入っているだろう。

「この時間だと現場に関係者いないかもなんで、電話の方が……」

 そう言いながら、ふと柊斗はあることを思いつく。

「その前に付き合ってもらえます?」

「え?!?!」

 柊斗が尋ねると、何故か星哉がバネ仕掛けのおもちゃのようにびょんと飛び上がる。心なしか顔が少し赤い。

「いやそんな、嬉しいけど名前も知らないし!」

「?あ、俺は鈴木っす」

 星哉の言っている意味がよく分からないが、そういや名乗っていなかったと気づいて柊斗は改めて自己紹介する。

「お時間取らせないんで、良かったらついてきてくださいよ」



 さすがに警備服は目立つので、柊斗は途中立ち寄ったコンビニで売っていたスウェットに上だけ着替えた。ついでにホットコーヒーも2杯買うと、闇に紛れるようにコンビニの外で隠れている星哉にひとつ渡す。

「コーヒー好きでした?」

「……さっき好きになりました」

「なんすかそれ」

 星哉の答えに柊斗は思わず吹き出す。とりあえず飲めるならそれでいい。外は一層冷え込んでいた。

 クリスマス感など微塵もない、無機質な街をふたりで歩く。雑多なビル群に明かりはなく、通る人もほとんどいない。静かな夜だ。

「クリスマスソングでも聞きます?って警備服だからスマホないんだった」

 柊斗は有名なクリスマスソングを口ずさみかけて、ふと思う。

「クリスマスソングって悲しいの多くないっすか。現実のクリスマスはみんな楽しそうなのに」

 少なくともイベント会場にいた人達の中に、クリスマスソングのような切ない想いを抱えている人はいないように思えた。でも。

「……幸せそうに見える"みんな"も、本当の心の奥底は色々あるのかも」

 星哉の答えに、柊斗は少し驚く。

「それでも、幸せであろうと頑張ってるのかな……」

 自分に言い聞かせるようにそう呟く星哉の横顔を柊斗は見つめた。伏せられた長いまつ毛に、一瞬目を奪われる。

「――優しい見方っすね。そっか、みんな出さないようにしてるのかな」

 柊斗はコーヒーに口をつける。熱さと、少し遅れてじんわりとした苦味が舌に広がった。

「自分でクリスマスにバイト入れたのに、ちょっとうんざりしてた自分が恥ずかしいっす」

 柊斗の言葉に、星哉はそんなことない、と真面目な顔で首を横に振った。

「俺だって同じだよ。……自分で望んでこの仕事を始めたのに。本当は、誰かの笑顔のために頑張りたかったのに」

「じゃあ俺たち似た者同士ってことっすかね」

 まあ俺は誰かのためじゃないけど、と柊斗が苦笑いすると、星哉は何故か少し嬉しそうに微笑んだ。

「――俺、元々売れない地下アイドルやってて」

 星哉がぽつりと呟いて夜空を見上げた。釣られて柊斗も見上げると雪はだいぶ小止みになっていて、漆黒の空にちらほら冬の星座が瞬く。

「辞めてすぐ今の事務所に拾ってもらって、そしたら色んな仕事ができるようになって。だからせめて期待に応えようと思ってた」

 星哉の白い息が、夜の虚空に溶ける。柊斗は静かに、その行方を見守った。

 ――弱い自分を隠し続けて本当の自分が分からなくなって、頑張ってるつもりでも実力不足を思い知らされるだけで。休みなく働いてるけど、これが誰のためになってるんだろうって思ったり。ぐちゃぐちゃと、ずっと1人で考えて。

「……それが今日、クリスマスの幸せな空間を見たら全部溢れちゃった」

 弱々しく笑う顔すら美しい。それが余計悲しくて、柊斗の胸が少し痛くなる。脳裏に流れる切ないクリスマスソングが、星哉の心を代弁しているようで。

 ……何を言っても、慰めにすらならないかもしれない。それでも、言わずにはいられなかった。

「……今日の反省は必要かもだけど、誰にでも限界はあるし」

 星哉が目を見開く。うまく伝えられない自分がもどかしい。その代わりに柊斗は、星哉の目をじっと見た。

「誰かを幸せにしたいって思えるの、すごいことですよ」


   

  

 しばらく歩くと、目の前に階段が見えてくる。迷いなく登る柊斗の後ろを、星哉は黙ってついてきた。

「はい。見てください」

「わ……」

 そこは、歩道橋の上。左側からはイベント会場のクリスマスツリーが遠くに見え、右側からは並木道のイルミネーションが見渡せる。そしてクリスマスツリーの更に奥には、東京タワー。

 それぞれ少し遠いのと交通量の多くない裏道なこともあり、人気がない穴場だった。

「こないだ別のイベントバイトの時通って気づいたんすよね。綺麗」

 柊斗は柵に頬杖をつき、ぬるくなったコーヒーを啜った。小さく見えるクリスマスツリーは、自分があそこにいたとは思えないくらい別世界のように映る。

「ちょっとくらいクリスマス気分味わってもバチは当たらないってことで」

 そうやって柊斗が笑うと、星哉はすぐ隣に並んだ。帽子を外し、北風に長めの髪をなびかせる。

「――クリスマスって仕事の思い出しかないんだよね」

 そう言うと、星哉は柵に腕を掛け、そこに腕枕のように顔を乗せてこちらを向いた。斜め下から覗き込まれるような形で、柊斗とばっちり目が合う。

「……こんなこと言ったら駄目かもしれないけど、今日が人生で一番記憶に残るクリスマスになった」 

 出会ったばかりの相手に手を引かれてクリスマスイベントを走って抜け出して、コーヒーを買って遠くからイルミネーションを眺めている。確かに、そんなクリスマスあり得ない。柊斗にとっても絶対忘れられないクリスマスだ。

 ――柊斗のポジションが女子なら、ドラマのワンシーンになりそうだ。残念ながらイケメンのお相手は警備バイトの大学生男だが。そんなことをふと思った時。

「鈴木くんがいてくれて良かった」

 ふにゃりと、星哉が笑った。その崩れた表情は、今まで見てきたどの星哉とも全く違っていた。

 キラキラした芸能人としての顔とも、苦しそうに泣く顔とも、悲しそうに笑う顔とも全く違って――……まるで恋人を見るかのように、甘くて柔らかい笑顔。

 ――心臓がちょっと騒がしいのは、クリスマスのせいだろうか。

 それからしばらく、ふたりでただただ景色を眺めていた。



◆◆◆

 それから少しして。

 清水星哉は芸能活動休止を発表し、数ヶ月の休養のあとに復帰した。

 柊斗は自転車を一時停止させ、大きなデジタルサイネージに映し出される星哉の広告に目を留める。

 復帰後の星哉は以前にもまして忙しそうで、テレビで見ない日はないほどだ。次は映画で主演をやるらしい。ホワイトクリスマスに出会った男女が、運命的な恋に落ちる恋愛映画。

 あの日のことは、幻だったみたいに思える。


 結果的に、柊斗はお咎めなしだった。警備服で連れ出される姿が多くの人に見られていたこと、そして何より星哉本人が柊斗に非はないと会社に謝ってくれたらしい。

 でも、さすがに噂になりすぎた。興味本位で蒸し返されるのにうんざりしたし、こっちのほうが時間の融通も利くことから、今はフードデリバリーのバイトをしている。

 配達が一段落すると、柊斗はスーパーに立ち寄る。長ネギやら豚バラやらをカゴに入れ、舞茸も手に取ってからふと思い出した。

 ――キノコは駄目だった。

 代わりに甘い缶チューハイを選んだところで、レジ前に並んだ小さなポインセチアの鉢が目に留まる。季節外れの特売品だ。少し悩んで、鮮やかな赤いものをひとつだけ買うことにした。

 お高そうなマンションのエントランスで鍵を回す。自分のアパートにはこんな立派な設備はないので、最初に来た時は仕組みが全く分からなかった。

 部屋に入って手早く鍋の準備を整えると、食卓のカセットコンロに乗せてテレビをつける。生放送の特番でたくさんのタレントが座っている中に、彼もいた。

――『星哉の理想のデートコースはどんなんや?』

『イルミネーションを一緒に見たいですね。いかにもクリスマスでロマンチックじゃないですか』

『なんやその教科書1ページ目みたいなうっすい答えは』

 MCのツッコミにスタジオがドッと沸くのを柊斗は薄目で見る。

 ――彼女を作ったら作ったであれこれ文句言われるのに、恋愛の質問を振られるのも変な話だ。

 遠い世界で頑張る、爽やかで健気な人。

 それを眺めていたら、段々眠気に襲われてきた。バイトでほぼ1日走り回ったせいだ。卓上にある鍋の火を止めると、柊斗はそのまま微睡みに落ちていった。


 ……どれくらい寝ていただろうか。柊斗がメッセージアプリの着信音で目覚めると、もう日付が変わる寸前だった。生放送特番はとっくに終わっている。

 柊斗がメッセージを見るより先に、バン!と勢いよく玄関扉が開かれた。柊斗は急いでヨダレを拭うと、息を切らして肩で呼吸をする彼にヒラヒラと手を振って微笑む。

「――生放送お疲れ様っす。鍋でもどうです?」

「……うっ……柊斗くん……」

 赤い顔で飛び込んできた彼――星哉は柊斗の姿を見た瞬間、その整った顔を大きく崩してボロボロと泣き出した。

「全然うまくできないし、なかなか帰れないし……」

 玄関に座り込んでしまった星哉に、柊斗は去年のことを思い出していた。雑居ビルの前で膝を抱え、歩道橋で幸せそうに笑っていた姿。

 遠くなっても、売れっ子になっても、星哉は星哉だ。

「……今日、家に柊斗くんがいてくれなかったらもう駄目だったかもしれない……」

 ぐすぐすと廊下で泣く星哉の前に、柊斗はしゃがみ込んで小さなポインセチアの鉢を置く。真っ赤な鼻と目をした星哉は、それを恐る恐る両手で持ちあげた。

「……これは?」

「スーパーでセールになってて買ってきちゃいました。ちょっとしたプレゼントっす」

 柊斗がそう言うと、星哉はまた目を潤ませてしまった。いつの間にか、耳や頬も真っ赤だ。

 こんなんでよく芸能界やってけてるよなあ、と柊斗は笑ってしまう。

 純粋で弱くて、頑張り屋で。……だから、ほっとけないんだけど。

 その瞬間、つけっぱなしだったテレビから歓声が上がる。

「あ、新年……」

 うるうるとした目をした星哉と、同じ高さで目線がぶつかる。柊斗は微笑むと、ポインセチアを持つ星哉の手に自分の手を重ねた。

「今年もまたよろしくお願いします」


 


 

 

 

 

 

 


 

  

 

  

 




 

 



 

 

 

 

 

 

 


 

 


  

 

  


 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

   

 

 

 

 

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オーバーロードクリスマス 雲井 @honkumoi_choushi

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