青春妄想箱

のらねこ。

無愛想な僕とキラキラな彼女

「ねえ、わたしの事好き?」

「……は?」

 たまたま2人きりになった教室で突然彼女が紡いだ言葉に俺は固まるしかできなかった。

「なーんだ、やっぱり好きじゃないか。」

 先程の言葉はただの冗談というように、彼女は笑った。

「え、いや、どういうこと」

「えー?なんか、友達が君と私はこんなに仲良いんだから、きっと君は私の事好きだって言うからさ?」

 彼女はやっぱ違うか〜なんて呟きながら、帰りの支度を始めた。

「さて、帰ろう?」

「あ、うん」

 彼女は今日のご飯何かな〜、楽しみだな〜なんて話続ける。

 話すのが好きなの。と普段から彼女は言っているが、今日はそれを加味したとしてもいつもより饒舌だった。

 バクバクしていた、このまま死んでしまうのではないかと思うくらいには。こんなにも僕の心臓は動くのだと今日初めて知ったのだ。

 知っているくせに。僕の答えを知っているくせに、彼女はそんな言い方をして帰ろうとするのだ。

「ね、帰らないの?」

「あ、いや……」

 なのに僕の口から出る言葉は意味の無いものばかり。僕は考えても考えても正解の答えを思いつくことが出来なかった。

 僕は僕のことでいっぱいでいっぱいだったのだ。

「ごめんね、変なこと言って」

 彼女の雰囲気が突然暗くなった。

 ぱっと彼女をみると今にも溢れそうな涙を目に溜め込んでいた。

 彼女も彼女でいっぱいいっぱいだったのだろうか。

「すき、だよ。」

 あれだけいっぱい考えていたのに出た言葉は本当にシンプルなもので、一番最初に考えた言葉だった。

 僕の心臓はまたドキドキしていた。さっきとは種類の違う苦しさや痛みも伴うような動きであった。

 受け入れられなかったらどうしようという考えもずっと付き纏っていた。

 だが、それ以上に彼女を泣かせてしまう原因が何も言えない自分ならば、受け入れられなくても正直に答えるべきだと思った。

 ものすごくいい天気なのに雪でも降ってるかのような静けさが続いた。

 彼女は顔を隠してしまっていて、何を考えているかも、今どうしてそうなってしまっているかも分からないままだった。

「…き」

「な、なんて?」

 しばらくして、彼女からか細い声が聞こえた。

 いつもは元気な彼女から想像もつかない声だった。

「私も……。」

 彼女は勢いよく僕の肩を掴んで顔をあげた。

「私も好きっ!」

 彼女の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

 しかし、僕は今まで見てきた彼女の顔で1番美人だと感じた。

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青春妄想箱 のらねこ。 @no0524

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