第3話 王国歴1523年。十三歳の令嬢、冬至祭りの贈り物をすること。
王国を上げて祝われる冬至の祝い、その余興の予定されている日の少し前。
この国内で最高位に近い貴族であるミランド公が呼び寄せた隠し子、ショシャナ・アランバルリとして知られる令嬢は侍女を呼び、家人たちに心尽くしの贈り物を用意させるように命じた。
「本年は、わたくしたちは王子殿下と王宮で過ごすとお父様が仰っておられますから。貴方達は屋敷で祝うよう伝えよと」
「はい、お嬢様。寛大なお気遣い、有り難く存じます。下賜の品はどのようにいたしましょう?」
「……そうですね。円環飾りが飾られたものがいいでしょう。……皆、健康で障り無く、幸福に過ごすようにと願いをかけた印なのだそうです。昔、人に聞きました」
「承りました。出入りの商人に伝えます」
「あ、待って。……できれば、殿下にも同じ意匠のものを、何かご用意して」
一礼した侍女を見送り、スサーナははっと息を吐く。
サーイン。蔓草を象徴とする叡智と魔術師の神。
よいこには良いむくいを。わるいこには罰を。
してみれば、わたしはきっと、悪しきものなのだろうけれど。
かみさま、かみさま、どうか。
あの子だけでも守ってください。
レオくん。レオカディオ殿下。予見の夢で謀反人たちに攫われた、第五王子。スサーナの家族の男の子。
あの子はとても優秀で、あの子はとてもいい子で、あの子はとても必要な子で。
彼女は祈り、それから微笑んで出入りの商人たちのもとに歩いていった。
短編出張糸織り乙女~冬至祝いの買い物風景、さまざま~ 渡来みずね @nezumi
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