聖女、クマのような辺境伯に拾われる。

岩上翠

第1話

「クラリス、お前に聖女の力はない。侯爵領へ帰りなさい」


 王都の森のそばに建つ大聖堂の大司教はそう言い、僧兵たちに命じて、私をぽいっと大聖堂の裏口から外へ放り出させた。

 私は目の前で無慈悲に閉じる扉にすがりついた。


「ちょっ、ちょっと待ってください! お願いです、もう一度だけチャンスをください! 大司教様!!」


 聖女のローブ姿のまま、長い金髪を振り乱して扉を叩きながら、私は叫んだ。

 侯爵家の娘であり、淑女教育も受けた十八歳の令嬢が施錠された扉の取っ手をガチャガチャと回し、何度も何度もノックをする様は決して褒められたものではない。

 サファイアのようだと言われる私の青い瞳も、今は恐ろしいほど据わっているだろう。

 だが周辺は森なので、リスや小鳥以外は誰も見ていない。


 いや、クマも見ていた。

 それに気づき、私はビクッと体を震わせた。

 クマだったらさすがに逃げようと思う。


 けれども、それはクマではなく。

 クマのように見える、人間の男性だった。

 もつれた茶色い髪に半ば隠れた茶色の目、顔を覆う茶色い不精ひげ。

 がっしりとした体には、茶色っぽい地味な騎士服を身に着けている。


 少し離れた場所を通りかかったその男は、必死に扉にとりすがる令嬢を慮ったのか、紳士的に目をそらせた。 

 なので、私もふたたび扉に向き直った。


「大司教様、お願いです、開けてください! 今度はきっと浄化してみせますから!」


 クマのような男は立ち去り、私は扉を叩き続けた。



 ***



 翌朝。


 クマのような男が、昨日と同じ道をたどって大聖堂へ歩いてきた。

 私は裏口の前で、膝を抱えて座りこんでいた。


 男はぎょっと身じろいだ。

 今は夏とはいえ、森の夜は冷える。そして私は薄手のローブ一枚しか着ていない。

 不審者と思われただろうか。


 しばらく逡巡してから、男はこちらへ近づき、低い声で尋ねた。


「……君、昨日からずっとそこにいたのか?」

「そうですけど、何かご用でしょうか?」


 私は警戒心がむき出しであろう目で見上げ、一晩叫び続けて枯れた声で問い返す。

 男はなんだかとても同情したような顔をした。


「大司教から聞いたが、君には聖女の力はなかったんだろう?」


 すでにボロボロだった心に、とどめを刺されたような気がした。


「私はニセ聖女ではありません! 実家にいたときはちゃんと浄化できたんです。それなのに……」


 ぎゅっとローブを握りしめると、昨日から我慢していた涙がこみ上げてきた。

 男は焦ったように言った。


「いや、その……そういえば自己紹介がまだだったな。俺はウィル・ブラックウッド。エルン辺境伯だ」

「私はヘザーランド侯爵の次女、クラリス・バークレーと申します」


 立ち上がり、私も名を名乗った。

 カーテシーもしようとしたけれど、着ているのが聖女のローブであることを思い出してやめた。


 辺境伯とは文字通り、王都から遠く離れた辺境の地を治める人物の称号だ。

 最果ての地の国境警備という泥臭い仕事な上に他国から侵略される危険もあり、それだけに、この国にとっては重要な役目を持つ。

 クマのように見えるけれど、まさかそんな重要人物だったとは。

 辺境伯のウィル様は、親切そうに言った。


「侯爵令嬢が一晩中こんなところにいたら駄目だろう。俺が送るから、早く帰った方がいい」

「……ご親切にありがとうございます。でも、聖女の役目を果たすまでは帰れません」

「どうしてそんなに聖女になりたいんだ?」


 私はきっぱりと言った。


「王弟殿下をお救いしたいのです」


 この国において、聖女は、竜が発する瘴気を浄化する役目を持つ。

 竜は水辺に棲みつき、普段は眠っている。

 生息域には滅多に他の魔物を寄せつけないとか、気まぐれに貴重な鱗やひげを落として人に恩恵を与えることもたまにある。

 しかし、周期的に目覚めて猛毒の瘴気を発し、人を苦しめるという災厄の面の方が強い。


 国王の弟であるユージーン様は、そんな竜の瘴気問題を解決しようと長年取り組んでいる方だ。

 頭脳明晰なだけでなく容姿も端麗な方なのだが、体はあまり丈夫ではなかった。

 特にここ数年は、王都の森の湖に棲む竜の瘴気に当てられて、ずっとベッドに臥せったままだという。

 そんな殿下を、私はどうしてもお救いしたい。


 だが今現在、私がクビになったため、この国に聖女は一人もいなくなった。

 もともと稀少な存在だったが、若者の教会離れが進んでいるためか、はたまた聖女の修行が厳しすぎるせいなのか。

 聖女を目指す者も聖女の力を発現させる者も、ぱったりといなくなってしまった。


 私は侯爵領の修道院での厳格な修行を、何度もくじけそうになりながらも乗り越え、ようやく聖女の力を発現させた。

 ところが、張り切って王都の大聖堂へやってきた矢先。

 聖女の力は、少しも発現しなくなったのだ。

 一刻も早く瘴気を祓い、王弟殿下をお助けしなければならないのに――


 私の言葉に、ウィル様は面食らったようだった。


「王弟って……ユージーンのことか?」

「殿下をご存じなのですか!?」

「ああ、まあ」

「殿下のお具合は!?」

「小康状態というところかな」

「……それなら良かったですが…………私が不甲斐ないばかりに、瘴気を清めることができなくて………………」


 また泣きそうになった私に、彼は急いで提案した。


「あっ、そういえば俺の領地の海にも竜が棲んでいるんだった。そこで浄化の練習をするというのはどうだ?」

「えええ……」

「過去には伝説の聖女も輩出した、由緒正しい海なんだが?」

「ぜひご一緒させてください」


 聖女になれる可能性があるなら、どこであろうが行く一択だ。

 すぐに話がまとまった。



 ***



 エルン辺境伯領には、美しい海が広がっていた。

 長く続く白い砂浜の周辺は貴族の避暑地となっており、辺境伯の居城の他にも、豪華な別荘や辺境騎士団の館が点在している。

 それを取り巻くように、平民の家々や商店も建ち並んでいた。


「わあ、海って大きいんですね」


 潮風に帽子を飛ばされないよう手で押さえながら、辺境伯の城から歩いて砂浜に来た私は、初めて見た海に感嘆の声を上げた。

 ウィル様も笑顔で言った。


「大きいだろう? ここは砂浜も広いから、騎士団の訓練にもうってつけなんだ」

「ここで訓練するのですか?」

「ああ。毎朝走ったり、今みたいに暑い時期は泳いだり」

「水泳も!?」

「海を越えて攻めてくる国もあるからな。船での戦闘のときに、落ちて泳げなかったら困る」


 反射的に、海で泳ぎ、敵と戦うクマさんを想像した。

 ウィル様は辺境騎士団の団長も兼任しているという。

 やはり、辺境伯というのは大変な仕事なのだ。

 私もやる気がメラメラと燃え上がり、大事に持ってきた杖と祈祷書をグッと握りしめた。

 ありがたくも大聖堂の大司教からいただいた、聖女活動を行うときの必須アイテムである。


「ウィル様、私も聖女の特訓をがんばりますね!」

「ああ、がんばれ」


 翌日から私は、砂浜で聖女の特訓を始めた。

 滞在させてもらっているウィル様の城を早朝に出て、騎士団の方々の鍛錬を横目に、ひたすら祈祷書を読み杖を振って海の浄化を試みる。

 竜の棲む場所は、程度の差こそあれ、常にいくらかの瘴気が漂っているものなのだ。


 だが、日が暮れるまで杖を振り、祈祷の文句を唱えても、砂浜にかすかに漂う瘴気が消える気配はなかった。




 それから一週間後の夕方。

 毎日修行に明け暮れているものの、まったく浄化のできていない私は、今日も遅くまで一人で杖をかざし祈祷の文句を唱えていた。

 暗くなってきた浜辺に、ウィル様が心配して様子を見に来てくださった。


「クラリス、大丈夫か? そろそろ城へ帰ろう」

「すみません、もう少しだけ……」

「無理するな」


 ふたたび構えた杖に、ウィル様が大きな手をそっと乗せる。


「体を壊したら元も子もないだろう。時間はあるんだし、また明日やればいい」


 なんて優しいクマさん、いや、ウィル様なんだろう。

 でも、時間はない。私は焦っていた。


「王弟殿下が苦しんでいらっしゃるのに、私が休むわけにはいきません」

「……どうしてそんなに必死なんだ?」

「それは…………」


 私は肩を落とし、初めて王弟殿下と会ったときのことをウィル様に話した。


 三年前、愛する父が政務で出かけた先で、突然発生した竜の瘴気を浴びて亡くなってしまったことで、私は沈み込んでいた。


 喪が明けると、心配した母によって、私は王宮の夜会へ無理矢理参加させられた。

 にぎやかな夜会を楽しめる気分ではまったくなかったから、一人でバルコニーに出て夜風に当たろうとした。

 何を見ても、ここにお父様はいないという事実を突きつけられてしまうのがつらかった。

 

 バルコニーに出ると気がゆるんで、こらえきれなくなった涙がぽろぽろとこぼれた。

 だがそこには先客がいた。

 慌てて涙を拭いて謝り、立ち去ろうとした私を、その方は引き留めた。


『君はクラリス嬢だろう? ヘザーランド侯爵のご令嬢の。お父上のことは、本当に不幸な事故だった。心からお悔やみ申し上げる』


 一瞬で目を奪われた。

 その黒髪の人物が、ユージーン王弟殿下だった。


 すらりと背が高く、細身で色白の、どこか儚げな美青年。

 彼は洗練された優雅な仕草で、お気に入りだという青い飲み物の入ったグラスを私に手渡してくれた。

 銀の星が降る夜空のようなそれは、甘く幻想的な味がした。


 それから殿下は、この国から瘴気で苦しむ人がいなくなるよう、彼が主導して王立研究所で調査研究を進めていることを教えてくれた。

 殿下自身も瘴気のせいで苦しんでいるのに、体のつらさを押してまで、国民のために。


 その日から私は、私も自分にできることを全力でやろう、そして少しでも殿下のお役に立とうと、厳しいことで有名な聖女の修行を始めたのだった。

 三年の月日が経ち、ようやく聖女の力を身に着けたわたしは、念願叶って王都の大聖堂へ迎え入れられた。

 だが喜んだのも束の間、なぜか聖女の力が発動しなくなり、すぐにクビになってしまったのだが―――


「と、いうわけなんです」

「なるほど。なぜ急に聖女の力が消えたのかわかるか?」

「いえ、それがまったく……」


 しゅんとしてうつむくと、ウィル様は私の手から杖と祈祷書を取り上げた。


「意外と重いんだな」

「ウィル様?」


 彼は明るい笑顔を見せた。


「とにかく帰って、夕食にしよう。栄養をとらないと元気も出ないし、いい考えも浮かばないぜ?」

「……はい!」


 重たい杖と祈祷書をウィル様が軽々と持ってくれて、私の心まで軽くなったように感じた。




 辺境伯領へ来て一か月が経ち、同じ砂浜で訓練している騎士団のみなさんともすっかり顔馴染みになった。


「おはよう、クラリスちゃん」

「おはようございます」


 騎士さんたちが走り込み中にわたしに声をかけ、手を振ってくれる。

 わたしも笑顔で手を振り返した。

 愛想良くこちらを見て手を振り続けてくれる騎士さんたちは、ウィル様の「減給!」という怒鳴り声が飛んでくると慌てて前を向き、スピードを上げた。

 ちなみに私が侯爵令嬢だということは伏せてもらっている。ここでは、ただの聖女志願者のクラリスだ。


「貴族のクラリス嬢」ではなく、「ただのクラリス」でいることがこんなにも身軽で心地いいことだなんて、思いもよらなかった。

 幼い頃から厳しい淑女教育を受けてきたから、何はなくとも家のため、そして王家のために役立つことが第一という考えは、骨身に染みている。

 だからこそ、三年間の過酷な聖女修行も乗り越えられた。


 でも、ウィル様や騎士さんたちのいるこの浜辺で修業をしたり、お昼をご一緒したりするうちに、この状況を楽しんでしまっている自分がいた。

 ウィル様は騎士団の人たちに対しても面倒見がいいが、大聖堂で拾った私に対してもすこぶる親切だ。

 ちょいちょい訓練を抜け出して私の様子を見に来ては、「調子はどうだい?」とか「そろそろ休憩しないか?」などと声をかけてくれる。


 だから私はすっかりそれに慣れてしまって、今日もお城の厨房の人に頼んで作ってもらったおやつのマフィンを、ちゃっかりと持参している。

 ウィル様を含めた騎士団の皆さんの分と、私の分。

 ブルーベリーがたっぷり入ったマフィンなので、ブルーベリーが大好物のウィル様はきっと喜ぶだろう。

 その笑顔を想像すると、まだ朝だというのに休憩時間が楽しみで仕方ない。

 大きなバスケットをにこにこと眺めていた私は、潮風と混ざり合った瘴気が鼻をかすめると、ハッと我に返った。


 私は、失った聖女の力を取り戻すために、ここにいるのだ。


 何を浮かれていたのだろう。

 ユージーン様は、今も王宮で瘴気に苦しんでいらっしゃるというのに。

 せっかくエルン辺境伯領へ居候させてもらっているのに、ここへ来てからの聖女としての進捗はゼロだ。まだ何ひとつ浄化できていない。

 家のため、王家のため、そしてユージーン様のために、私はもっと死に物狂いで聖女の力を取り戻さなければならないのに――


 杖をにぎり祈祷書を抱え、決然と海へ向かった。

 ざばざばと膝まで波に浸かりながら、杖を振りかざし、祈祷書を読み上げる。


「真なる神の御名において、災いをもたらす竜の吐息よ、水底みなそこへと還れ」


 そのとき。

 急に、瘴気が濃くなった。

 空が暗くなり、海が荒れる。

 垂れこめた鉛色の雲から稲光が走り、はるか沖合の海に浮かぶ一つのシルエットを浮かび上がらせる。


「……竜……?」


 海上に見えるのは、小島のような半円と、そこからひょろりと伸びた鎌首。

 竜が、爛々と眼を光らせ、こちらを見ている。


 海に棲む竜は、ときどき思い出したように沖合いに現れて、船を沈め、陸地へと瘴気を吐き出す。


「撤収ー! 撤収ー!」


 騎士たちが大声で叫びながら荷物を回収し、順次、浜辺から退避を始めている。

 あくまで騎士団は対人の戦闘集団だ。竜などという災害級の生物と戦う組織ではない。


 砂浜をあとにする騎士たちとは逆に、私は沖に向かい、ざぶんともう一歩踏み出した。

 瘴気はどんどん濃さを増していき、息苦しいくらいだった。

 これでは海辺に住むすべての人たちに影響が出てしまう。

 気のいい騎士さんたちや、城や町の人たちが苦しむところは、見たくない。

 私は杖をかざした。


「真なる神の御名において、災いをもたらす竜の吐息よ、水底へと還れ」


 ほんの少し。

 ごくわずかに、辺りの瘴気が薄らいだような気がした。


 竜は敏感にそれを感じ取ったようで、こちらをにらみ、すさまじい咆哮を放った。


「っ!」


 耳をつんざくような雄叫びに体がすくむ。

 そのとき、うしろから手をつかまれた。

 振りかえると、険しい表情のウィル様が私に叫んだ。


「おい、何やってるんだ! 早く逃げるぞ!!」

「ウィル様、でも私は……」


 聖女なので瘴気を浄化しなければ、と言うひまもなく。

 遅れてやってきた衝撃波に、ウィル様もろとも吹っ飛ばされた。


 浜辺の岩に激突する――と、私はきつく目をつぶった。


 だが、痛みは感じなかった。

 目を開けると、私はウィル様の腕の中で、傷一つなく。

 反対に、ウィル様は私を抱き止めたまま背中から岩にぶつかったらしく、騎士服の背中が破れ、出血していた。


「ウィル様!!」

「……クラリス、早く逃げろ。瘴気の塊が来る」


 うしろを見ると、今度はどす黒くこごった霧のようなものが、海からこちらへ向かっていた。

 竜の吐き出した瘴気。

 猛毒の塊だ。あれを浴びたら無事ではすまない。というか死ぬ。

 だが、ウィル様は怪我をしていて、走って逃げることはできなそうだ。

 私の杖と祈祷書は、さっきの衝撃で海に落としてしまった。今、取りに行く時間はない。


「クラリス! 俺はいいから、急げ!」


 私は聖女だ。

 ウィル様を守らなければ。


 私は徒手としゅのまま立ち上がった。

 迫りくる瘴気の塊に向き合い、極限まで集中して。

 祈祷の文句を唱える。


「真なる神の御名において、災いをもたらす竜の吐息よ、水底へと還れ」


 その瞬間。

 雲間から一筋の光が差し、瘴気の塊が一瞬でかき消えた。


 辺りに漂う瘴気もゆっくりと晴れ、海が明るくなっていく。

 すると、沖に浮かぶ竜の姿はどんどん小さくなっていって、やがて、見えなくなった。


「……浄化……できた」


 それから私はウィル様に肩を貸し、途中からは私たちを助けに戻ってきてくれた騎士さんたちにも協力してもらって、城へ戻った。



 ***



「本当にごめんなさい、ウィル様」


 三日後、ようやく医師から面会の許可が下りたウィル様に、私は謝罪をした。

 彼はまだ自室でベッドに横たわっていたが、顔色は悪くなかった。

 私を見ると上半身を起こし、苦虫を噛み潰したような顔で言う。


「たまたま助かったからいいようなものの、もう絶対にあんな無茶をするんじゃない。いくら聖女になりたいからって……本当に聖女の力を取り戻したのはすごいが」

「はい。あなたが死んでしまったらと思うと、いてもたってもいられなくて……ウィル様を助けたいという一心で浄化できたようです」

「そ、そうか……」


 ウィル様が、ふいっと横を向く。

 そのはずみで羽織っている上着の前が開いて、痛々しく巻かれた包帯があらわになった。


「……ですが、ウィル様にひどい怪我をさせてしまって……ごめんなさい」

「いや、こんなのはかすり傷だ。医者が大げさに……いててっ」

「ウィル様!」


 ベッドから降りようとして顔をしかめた彼に、私はさっと近寄って上半身を支えた。


「まだ歩いてはいけません! お医者様も、あと三週間は安静が必要だとおっしゃっていました」

「冗談だろ、体がなまる……」

「ウィル様こそ、絶対に無茶をしては駄目ですよ?」


 心配になって彼を見上げたら、間近で視線がぶつかった。

 澄んだ茶色の瞳が私を捉える。


 どうしてだろう。

 ウィル様が、もう、ちっともクマさんに見えない。

 もつれて伸びた茶色の髪も、日焼けした肌に不精ひげの似合う精悍な顔立ちも、裸の上半身に包帯が巻かれ上着を羽織っただけのたくましい体も。

 とても魅力的な男性にしか見えな――


「あわ、わた、私は杖と祈祷書を探しに行きますね。どうぞお大事に」

「あ、ああ、気をつけて」


 お湯を浴びたように熱くなった顔をパッとそむけ早口で言うと、ウィル様もたどたどしく返事をした。

 最後にちらりと見た彼の顔は、日焼けのせいではなく、赤くなっていたような気がした。




 一日中海辺を探し回った結果、私はポッキリと二つに折れた杖と、海水でずぶ濡れになりページが全部貼りついてしまった祈祷書を見つけた。

 これではもう使い物にならない。

 けれども大聖堂で大司教から賜った神聖な道具だ。その辺に放っておくわけにもいかない。

 私は壊れた杖と祈祷書を抱え、とぼとぼと城へ戻った。


 城の中庭では、騎士たちが集まっていた。

 なんだか真剣な面持ちで話し合いをしている。

 私は顔見知りの騎士に尋ねた。


「何かあったのですか?」

「ああ、クラリスちゃん。なんでも、王都で大規模な瘴気が発生したみたいでさ。王都の森の湖に棲む竜が、まだ周期ではないのに突然目覚めたとか……」

「……そんな……」


 湖に棲む竜は、普段は眠っているが、数十年周期で目を覚まして湖上に現れ、瘴気を吐く。


 その湖の周辺は瘴気の危険こそあるが、特別に肥沃で、水運にも恵まれた土地だった。

 だからこの国の人々は湖を囲むように王都を構え、竜が目覚める周期に合わせて、国を挙げた大々的な儀式を執り行ってきた。

 できるだけ目覚めが遅くなるように、目覚めたとしても、被害が最小限で済むように。

 そうして警戒を怠らずにいたのに、なぜ急に?


「突然竜が目覚めたなんて、それでは、王弟殿下は……」

「……病弱な方らしいから、危ないかもしれないな……」


『この国から、瘴気で苦しむ人をなくすのが僕の夢なんだ』


 王宮の夜会で、そう言ってほほえんだユージーン様が思い出される。


 今なら。

 今なら、私は王都の瘴気を浄化できるかもしれない。

 海の竜の瘴気は、杖と祈祷書がなくても、ウィル様のために必死になって祓おうとしたら浄化することができた。

 私は聖女だ。

 王都へ行き、ユージーン様を助けなくては。


「私、王都へ戻ります」

「いや、危ないぜ? ウィル団長は絶対に許可しないと思うけど……」

「ウィル様にお願いしてきます!」


 私はボロボロになった杖と祈祷書を中庭の隅に置くと、まっすぐにウィル様の部屋へ向かった。


 ベッドの上に体を起こしたウィル様は、即座に却下した。


「駄目だ。王都は今は特に危険だ。君を行かせるわけにはいかない」

「ですが今、この国に聖女は私しかいないのです。ここの皆さんにご迷惑はかけません。侯爵家の名で馬車を手配させます。すぐに行かなければユージーン様が……」

「そんなにユージーンがいいのか?」

「えっ?」

「……いや、なんでもない。君がそれほど言うなら、俺も一緒に行く。どのみち、王都へは行かなければならないし」


 ウィル様はベッドから降りた。

 昨日よりも体調は戻っているようだが、それでも重傷を負った怪我人だ。

 私は慌ててとりすがった。


「駄目ですウィル様! お医者様は全治三週間と……」

「普通は全治三週間かもしれないが、俺は鍛えているから三日で治った」

「そんな馬鹿な!?」


 堂々とした立ち姿に一瞬彼の言葉を信じてしまいそうになったが、やはり傷が痛むのか、ウィル様はふらついた。

 だがすぐに持ち直すと、私に告げた。


「明日出立するから、準備を整えておいてくれ。俺はこれから辺境伯に話してくる」

「はい……ええと、ですが……辺境伯はウィル様では?」

「……ああ、そうだった。ともかく、父上に話さないと」


 去っていった足取りはしっかりしていたが、意識の混濁もあるのだろうか?

 心配だけれど、どうすることもできない。

 私は部屋に戻って荷造りを始めた。




 王都へ向かう馬車旅の途中、私は毎日ウィル様の包帯を取り替え、傷の手当てをした。

 彼の肌を見るのは少し恥ずかしかったけれど、心を無にして消毒し、軟膏を塗り、包帯を巻き直す。


 辺境騎士団の団長であるウィル様の体はがっしりとしていて、私を庇ってできた裂傷以外にも、いくつかの傷がついていた。

 けれど、古そうな傷は一つもなく、比較的新しい傷ばかりのように見えた。

 その新しい傷以外は、歴戦の辺境伯というイメージに反して、彼の肌はむしろとても綺麗なことが不思議だった。


 ウィル様は途中で小さな町の教会に立ち寄ると、司祭にかけあって、使い古しの杖と祈祷書を譲ってもらった。

 彼はそれを私に渡した。


「ほら。前のは壊れたんだろう? ないよりはマシだからさ」

「ありがとうございます」


 それは大聖堂の大司教様にいただいた最高級の杖と魔導書とは違い、だいぶ質素な代物だった。

 けれど、ウィル様がわたしのために用意してくれたと思うと、とても大切なものに感じられた。


 王都へ向かい瘴気を浄化すると言ったら、教会の司祭は親切にも、清めて祈祷をしたという布を何枚かくれた。これを口元に巻けば、いくらかは瘴気を防ぐことができるらしい。

 わたしたちは司祭に厚くお礼をして、その教会をあとにした。 




 王都に入ると、目に見えて瘴気が濃くなった。

 建ち並ぶ家々の戸は固く閉ざされ、窓は完全に塞がれている。あちこちの家の中から、頻繁に人の咳きこむ音が聞こえてくる。

 道を歩く人はほとんどいない。

 あんなに栄えていた王都が、今はまるで死の街だ。


 わたしたちは教会でもらった布を口元に巻いて湖へ向かったが、途中で馬車を引く馬がうずくまってしまった。布を巻くわけにはいかない馬は、まともに瘴気に当てられてしまったのだ。

 これ以上は歩いていくしかない。

 御者と従者に馬車を任せ、わたしはウィル様と共に、徒歩で王都の森の湖に向かった。


 湖の周辺は、まるで黒い霧に覆われているようだった。

 ほとりに建つ大聖堂も、瘴気の霧に閉ざされている。

 祈祷された布を巻いていても、さすがに呼吸が苦しく、目が痛くなる。


「大丈夫か、クラリス」

「私は大丈夫です。ウィル様は……」

「俺は平気だ」


 ウィル様は、顔面蒼白で肩で息をしながら言った。

 やせ我慢なのは一目瞭然だった。ただでさえ怪我が治りきっていないのだ。一刻も早く浄化をしなければ。


 昼なのに夜のように暗い湖の岸辺に立ち、私は祈祷書を広げて、杖をかざした。

 そのときだった。


「お前たち、何をしている!」


 鋭い声が聞こえ、わたしたちは振りかえった。

 そこには、険しい表情の大司教が立っていた。

 わたしは嬉々として言った。


「大司教様! 私、こちらのエルン辺境伯のお力をお借りして、聖女の力を取り戻したのです! 今からこの瘴気を浄化しようと……」

「クラリス、今すぐその者から離れなさい!」

「え……?」


 大司教は怖い顔をしてウィル様をにらみつけた。


「その者は辺境伯などではない。エルン辺境伯はもう五十になるし、息子は夭折している。その男は辺境伯をかたり、よからぬことをたくらむ悪党だ!」

「なっ……」

「その男はお前を聖女に祭り上げようとしているようだが、騙されるな。何をしようが、もう王都は終わりだ。猛毒の瘴気が蔓延し、人間が生きられない地となった。人間の堕落を、神がお怒りになったのだ」


 呆然と、私はその言葉を聞いていた。

 教会の序列は絶対的なものだ。

 大司教は神の代弁者で、迷える子羊たちはその言葉に従うのみ。


 私は、ウィル様から離れた。


「クラリス……!」


 ウィル様の呼び声を聞きながら。

 私は真っ黒な湖へ向かい、杖をかざした。


「真なる神の御名において、災いをもたらす竜の吐息よ、水底へと還れ」


 大司教は神の代弁者とされているが、神ではない。

 だから間違えることもあるだろう。


 ウィル様が悪党? ありえない。


 たしかに神は堕落を嫌うが、同時に何よりも重要なものとして、愛の大切さを説いている。

 

 ウィル様を、王都の人々を、救いたい。

 誰かを想うその気持ちはきっと、神の御心にかなうはずだ。


 すると、分厚い瘴気の霧がカーテンを開けるように晴れてゆき、重たい雲がゆっくりと消えていった。

 湖も明るくなり、湖水の一部がキラキラと光っている。


 しばらくすると、瘴気は完全に浄化された。

 湖は元の青く澄んだ水面を輝かせ、大聖堂はそのほとりに神々しくそびえ立っている。


「なん……だと? あれだけの瘴気を、浄化した…………!?」


 大司教は青ざめ、怒ったように震えながら湖を見つめている。


 さっき光っていたあたりの湖水上に、一頭の竜が頭を出し、私たちを見ていた。

 竜はこちらへ近づいてきた。

 この距離で瘴気を吐かれたら、ひとたまりもない。


 ウィル様がふらつきながら、私を庇うように前に立ちふさがった。

 自分の体もつらいのに……と、胸がキュッと締めつけられる。


 だが、竜は瘴気ではなく、何か別の物体を岸辺にグエッと吐き出した。

 それから、私たちにゆっくりと背を向け、湖に潜っていった。


「大司教……あんたが竜に毒を飲ませ、瘴気を吐き出させていたんだな?」


 ウィル様が竜の吐き出したものを手に取って言った。


 それは、大司教の帽子だった。

 帽子の中には崩れかけた大きな肉塊のようなものが入っていて、肉の内側から、どろりと銀色の液体がこぼれ落ちた。

 あれは水銀だろうか。

 水銀は、竜をも苦痛にのたうち回らせるという、猛毒だ。


 大司教は膝から崩れ落ちた。


「……頽廃した王都は滅びねばならんのだ……神は、怒っておられる……」

「だったら、あんたが救ってやればよかったんだ。民を救うはずの聖職者が、民を苦しめてどうするんだよ」


 大聖堂からバタバタと聖職者や僧兵たちが出てきた。急に瘴気の霧が晴れて明るくなったので、様子を見に出てきたのだろう。

 ウィル様は僧兵たちに命じた。


「大司教を捕えろ! 故意に竜を怒らせ、王都に瘴気を蔓延させた張本人だ!」


 彼らは戸惑っていたが、ウィル様が手早く事情を説明すると、ともかく大司教を大聖堂へと連行した。

 抜け殻のようになった大司教は、抵抗一つしなかった。




 そのあとウィル様は、「修行の成果が出たな」と私をねぎらってくれた。


 彼は、私がエルン辺境伯の城の中庭に置きっぱなしだったあの壊れた杖と祈祷書を調査し、内部に巧妙に魔石が仕込まれていたことを発見したのだそうだ。

 魔石は神聖力を吸い取り、無効化する。

 大司教は以前から内部の協力者たちと共に、聖女たちに魔石を仕込んだ杖と祈祷書を使わせ、無力化させていた。

 そして王都を竜の瘴気で一度滅ぼし、彼の理想とする清らかな神の国を創り上げようと目論んでいたそうだ。


 大司教から賜り、ありがたく使っていた杖と祈禱書に、そんな細工がされていたなんて驚きだ。

 だがそれにも関わらず、エルンの海で一か月ひたすら修行に励んでいた私には、強い神聖力が身についていたらしい。

 そのため、徒手でも海の竜の瘴気を祓えたし、使い古しの杖と祈祷書でも、湖の竜の強力な瘴気を浄化することができた。


 その実力が認められ、私は晴れて、王都の大聖堂付きの聖女に返り咲いた。

 近々王弟殿下が、王都を救った聖女の私と婚約をするのではないかという噂も、しきりに囁かれている。

 けれど、私の心は霧に閉ざされたかのように沈んでいた。


 私が本当に望む居場所は、王都の大聖堂でも、素敵な王弟殿下のお側でもなく。

 一見クマのようだけれど、実はとても紳士で頼りがいがあって温かい、ウィル様の隣だということに気がついてしまったからだ。


 それなのに、私が大聖堂付きの聖女となってからのこの数週間、ウィル様はちっとも私に会いに来てはくださらなかった。

 すでにエルン辺境伯領へ帰ってしまったのかもしれない。


 もう私のことはどうでもいいのかしら?

 面倒見のいいウィル様は、私が大聖堂の裏口で困っていたから拾ってくれただけで、聖女に戻れば、あとはお役御免ということ?


 まだ王都のあちこちに瘴気が吹き溜まりとなって残っているらしく、毎日浄化作業に追われて、私から彼に会いに行くことはできなかった。


 貴族は家のため、王家のために生きる義務がある。

 それはよくわかっている。

 けれど。

 王弟殿下との婚姻以外にも、私が皆の役に立てる方法はあるはずだ。


 一生に一度だけ、私は自分のために、我儘わがままを言ってもいいだろうか?



 ***



 とうとう私は王弟殿下に呼び出され、王宮へ行くことになった。


 謁見の間で私は、殿下が入室する前から、低く頭を下げて待っていた。

 周囲には王弟の側近や護衛たちが居並ぶが、私の目には床の絨毯しか映らないほど。

 ユージーン王弟殿下が入室したようだ。

 足音が私に近づいて、声をかけた。


「クラリス」


 私は真下を向いたまま、頭の中で用意しておいた内容をひと息に伝えた。


「王弟殿下、本日はお招きいただきありがとうございます。ぶしつけではございますが、お願いがございます。こたびの王都浄化の功績に免じて、私をエルン辺境伯の教会付き聖女に任命していただけないでしょうか? もちろん、ふたたび王都に瘴気がはびこるようなことがあれば、すぐに戻って参りますので」


 私は先手を打って、自分の望む褒賞を口にした。

 少々礼を失してはいるが、殿下が婚姻の話を持ち出してからそれを断るよりも、ずっとましだと思ったからだ。


 ウィル様とは何の約束もしていない。

 でも、「そんなにユージーンがいいのか?」と言った彼の低い声が、ずっと頭から離れない。

 私が会いに行ったら喜んでくれるかもしれないと、少しだけなら、期待してもいいだろうか。


 沈黙が落ち、困ったように王弟殿下が言った。


「顔を上げてくれないか、クラリス」

「はい」


 さすがに怒られるかしらと思いながら、顔を上げる。

 そしたら。


「………………えええええええっ!!??」


 私の正面に立っていたのは、髪を切り、ひげをきれいに剃って、王族の礼装を完璧に着こなした美丈夫の――


 ウィル様だった。


「えっ、ウィル様? いえ、でも、ユージーン王弟殿下? ええええ……??」

「黙っていてすまない。俺がユージーンだ」 


 ウィル様が告白する。

 目を白黒させる私に、ウィル様は事情を説明してくれた。


「俺は昔から体が弱くて、民のために生涯を捧げようと誓った瘴気の研究もままならなかった。それに王都に俺の命を狙う動きもあったから、兄である陛下は三年前、極秘で俺に空気のいいエルン辺境伯領行きを命じたんだ。辺境伯は兄上の古い友人だし、足を悪くして前線には立てずにいた。俺は辺境伯代理の、ウィルという架空の甥のふりをして、エルンへ赴任した」

「そ、そうだったのですね……」

「ああ。そこで俺は、騎士団に散々もまれて鍛えられた。海水と潮風で黒髪は脱色して茶色になったし、口も悪くなったし、声も連日の訓練と酒宴のせいでガラガラだ。三年前の姿からかなり変わった自覚はある」

「それにしても変わりすぎでは……!?」


 私はまじまじと王弟殿下を見た。

 儚げな美貌の王弟殿下から、屈強なクマさんになるなんて――いえ、今のきれいなウィル様には、クマらしさはあまり感じられないけれど。


 だがたしかに今のウィル様の姿には、三年前のユージーン様の面影がある。

 それに、ウィル様はブルーベリーが大好きだ。

 今思えば、三年前の夜会でユージーン様が渡してくれたのも、ブルーベリーのサイダーだった。

 しゅわしゅわと星屑が流れるような、幻想的な青いグラス。


 彼は凛々しい目元をかすかに赤く染め、私に言った。


「三年前の夜会で会ったとき、君は瘴気をなくすために聖女を目指すと言っていただろう? 俺はエルンで騎士団の厳しい訓練に耐えながら、あの子はどうしているかなって、君のことをときどき思い出していたんだ。そんなときに王都の大聖堂で怪しい動きがあると報告を受けて、ウィルのふりをして調査に出向いたら、君を見つけた。俺はあんななりだったから最初は声をかけるのを躊躇ったんだが、さすがに二日目となると放っておけなくて」

「……お恥ずかしいところをお見せいたしました……」


 私は羞恥にさいなまれ、ふたたび真下を向いた。

 人目もはばからず、一晩中大聖堂の裏口を叩いていた姿なんて今すぐ忘れてほしい。

 けれど、クマだと思っていた通りすがりの男性が、まさか憧れの王弟殿下だったなんて誰が思うだろう?


 ウィル様がこちらへ歩み寄り、片膝をついた。

 私が顔を上げると、彼は後ろ手に持っていた花束を差しだした。


「クラリス、君に再会してエルンで一緒に過ごすうちに、君のひたむきさや優しさ、飾り気のない笑顔に、俺はどうしようもなく惹かれていった。君を愛している。俺と、結婚してくれないか?」


 自然に、涙がこぼれ落ちた。

 彼も私と同じ気持ちでいてくれたことがうれしかったし、まっすぐにそれを伝えてくれた言葉が、胸に響いて止まなかった。

 顔をほころばせ、私は返事をした。


「はい、喜んで。私も愛しています……ユージーン様」


 ユージーン様はうれしそうに笑って、私の涙を拭ってくれた。




 そののち、ユージーン王弟殿下と結婚した私は、夫婦で瘴気の研究に取り組んだ。

 国中の研究者とも協力して、二年後には瘴気を弱毒化する成分を発見し、五年後には周辺諸国の研究者や聖女たちをも巻き込んで、とうとう竜を半永久的に水中に封じる方法を編み出した。


 今のところ、人々は竜の瘴気で苦しめられることのない平和な生活を享受し、私は聖女としてよりも、王弟の妻として公務をすることの方が増えた。


 ユージーン様は今もときどきエルン辺境伯領へ行き、辺境伯の手伝いをしたり、騎士団の訓練に参加したりして、クマのようになって戻ってくる。

 私は焼き立てのブルーベリーマフィンを用意して、そんなユージーン様をお迎えするのだった。

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聖女、クマのような辺境伯に拾われる。 岩上翠 @iwasui

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