第1/1+1/(1+2)+1/(1+2+3)+…1/(1+2+3+…n)話

 時間になると、先生がやってきて体育館へと誘導され、始業式が始まり、いつも定番の校長先生の長い長い、ありがた〜いお話を聞いた。


 なんとか眠気を堪えて、新任の先生の紹介を聞いて、教室に戻り、ロングホームルームの時間となった。


「改めましてみなさんこんにちは。私は2年5組の担任となりました、阿部幸治あべゆきはるです。みなさん1年間よろしくお願いします」


『よろしくお願いします! 』


 僕らの担任になったのは新卒のすごく明るい男の先生だった。担当は数学らしい。この先生の授業なら面白そうだな! 


「では、諸連絡・・・・・・ と言っても特にないので、早速自己紹介と行きますか。名前と、前のクラスと、あとは・・・・・・ 部活か? そしてなにか一言。一番の安達からよろしく」


 と、いきなり自己紹介タイムを始めた。まあ、わかりきってたことなんだけどね。時間割に『ロングホームルーム、諸連絡、自己紹介』って書いてあったから。


 う〜ん何を話そうか・・・・・・ うん、無理だ。考えるのはやめよう。僕の出席番号は19番なので中間だ。みんなの流れに沿って話そう。


「はじめまして、元1年3組の安達美月です。部活はテニス部です。・・・・・・よろしくお願いします」


 自己紹介が始まった。初めは順調で何もなく、大抵みんなは一言のときに、


「よろしくお願いします」


 と、言っていた。でも、あいつは僕の予想をしっかりと裏切らずに結構派手にやった。それは出席番号13番のときだった。


「みなさんはじめまして! 元1年8組の高峰亮一です! 部活は男子バスケットボール部で、去年は部活漬けだったので今年こそは高校生の代名詞、恋愛をして、青い春を謳歌していきたいと思います! よろしく! 」


 はい、ここに自分で自分の首を絞めた大馬鹿者がいま〜す。まあ、教室の空気は一瞬凍りつき、数秒後に大きな拍手が巻き起こった。


 もう、この屈託のない笑顔。ダイヤモンドの・・・・・・ 正四面体型の面心立方格子で組み上がったメンタル。我ながら僕の親友はすごいと感心した。


 で、僕の自己紹介はというと、


「はじめまして、元1年8組の夏日星昴です。部活は・・・・・・ 化学部です。よろしくお願いします」


 とまあ、普通にやってのけた。教壇に立って自己紹介をしたので、眼の前で亮一があれやれ、これやれとワチャワチャしてる。まあ、律儀にこいつの言うとおりにする必要はないので無難に自己紹介を済ませた。


 その後も省略していいくらい普通の自己紹介だったのだが、やはり、火夏星さんが教壇に立つと、空気が変わった。


「みんな、はじめまして。火夏星彩夏です。元1年1組です。書道部に入っています。なにか一言・・・・・・ う〜ん、そうだ。私の今年度目標は書道で全国大会出場です! みんなよろしく! 」


 と、華麗に自己紹介をした。とても明るい笑顔を振りまいて。もう、その後は拍手喝采。次に自己紹介をする人が可愛そうなくらいだった。


 自己紹介が終わると、クラスの役員決めだ。これも恒例で、僕はなるべく仕事が少ないやつ・・・・・・ 副学級代表に立候補した。もちろん、というか予想通り、火夏星さんは学級代表、で、意外だったのは亮一が学校祭責任者に立候補したことだ。


 とりあえず、他に立候補者がいない学級代表がすんなりと決まり、僕は副学級代表の座をしっかりと公正なじゃんけんという方法で勝ち抜いた。


 そして、亮一は人気が多かった学校祭責任者にしっかりとなった。どうにかして自分の手で青春を手に入れたいらしい。


 そしてこの日は始業式とホームルームだけの午前授業で終わり、放課後となった。まだみんな新しいクラスメイトに慣れていないので遊びに行くだなんだかんだとはならず、1年のときと変わらず亮一と帰ることになった。


「おい、お前やっぱり火夏星さんのこと気になってるんじゃないのか? 副学級代表に立候補するくらいなんだから・・・・・・ 」


「いや、副学級代表って仕事少ないじゃん。それにあったとしても簡単な手伝いだけだし、それにうちは学級代表が優秀だから」


「あっ、なるほどね〜 お前らしいちゃお前らし・・・・・・ っておい、置いていくな! 今日2回目だろ! 」


 僕はそのまま叫んでいる亮一を置いて駅へと向かった。


「というか、今日バスケ部はオフなのか? 」


「いや、今日体育館使えなくてさ、なんでも定時制の始業式があるとかなんとかって・・・・・・ 」


 ここで、僕達が通っている明成南高校について簡単に説明しよう。


 県立明成南高等学校は全日制、定時制がある普通科の高校で、偏差値は75くらいのまあまあなエリート校だ。県内では1位だけど全国では60位くらいの位置にいる。


 俗に言う進学校らしい。入学のときは本当に苦労して、頑張って入ったのだが、入って見れば輝かしい青春などどこにもなく、勉強、部活、行事の三兎を追え状態の高校だった。


「俺らもうすぐ春季大会なんのになぁ」


「それならなんで学校祭責任者になったんだ? 本当に忙しくなるぞ」


「いや、まあ、そうだけどやっぱりせ・い・しゅ・んを謳歌したいじゃん」


「いや、矛盾・・・・・・」


「なんか言ったか? 」


「いや、なんでも」


 学校祭責任者は学校祭を普通に回れなくなるくらい忙しいのだが・・・・・・ 去年、自分のクラスの責任者がそうだった。まあ、亮一なら全部なんとかしちゃうだろう。


 そんなことはさておき、今日は家に帰ってゆっくりとしよう。明日からもう授業が始まる。

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理系と文系では恋愛できません!? 〜理系の僕と文系の君の初恋方程式〜 功琉偉つばさ @WGS所属 @Wing961

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