第8話 自然との調和
ミカは静かな朝の光を浴びながらベッドから起き上がった。数週間前まで、目覚めた瞬間から肩や首の凝りが彼女を悩ませていたが、今はそれが嘘のように消えていた。ナギとの旅を終え、日常生活に戻った彼女は、学んだ本能的な動作を少しずつ生活に取り入れていた。
「さてと、今日もやってみようかな。」
ミカは深呼吸をしながら、リビングの広いスペースで体を動かし始めた。まずは軽く背伸びをして、体全体を気持ちよく引き伸ばす。次に仰向けになり、背中呼吸を行う。彼女の動きはゆっくりとしたリズムで、まるで体が自然と導いているようだった。
「あの時のナギさんの言葉が本当に役立っているな……。」
ミカはナギから教わった「動作が体と心をつなぐ」という言葉を思い返した。毎朝こうしたルーティンを行うことで、心が落ち着き、体も軽やかになるのを実感していた。
その日の午後、ミカは久しぶりに親友のユウとランチの約束をしていた。都会のカフェで待ち合わせをした二人は、再会の喜びとともに近況を話し始めた。
「ミカ、なんだか雰囲気変わったね。顔色も良くなったし、すごく落ち着いて見える。」
ユウは驚いた様子でミカに声をかけた。
「そう?実は最近、自分の体と向き合う時間を増やしてみたの。ナギさんにいろいろ教えてもらって、本能的な動作が体にも心にもいいってわかったのよ。」
「本能的な動作?それって具体的にどんなことをしてるの?」
ミカは背中呼吸やなんば歩き、踵を使った呼吸の話をユウに伝えた。ユウは興味深そうに耳を傾けながら質問を重ねた。
「なんば歩きとか、踵で息をするとか……そんなの初めて聞いたよ。でも、確かに理にかなってるかも。最近、肩が凝って辛くてね。そういうの、日常でできるならやってみたいな。」
ミカは笑顔で答えた。
「そんなに難しいことじゃないよ。例えば背中呼吸なんて、ただ仰向けになって背中を感じるだけ。でもそれをするだけで、呼吸が深くなって心が落ち着くの。」
ユウは試すように肩を回してみせた。
「なんだか簡単そうだけど、効果ありそう。ミカがそれで元気になったなら、私もやってみたいな。」
二人はランチを楽しみながら、体と心のつながりについて話を続けた。ミカは、ナギから学んだことを具体的に説明するだけでなく、それを実践して得た効果も丁寧に伝えた。
「最初は半信半疑だったけど、日常に取り入れると本当に効果を感じられるんだよね。例えば仕事で疲れたとき、ただ踵を軽く動かして深呼吸をすると、体が軽くなるのを感じるの。」
ユウは感心した表情を浮かべた。
「それ、もっと多くの人に教えたらいいんじゃない?私もだけど、周りにも疲れてる人がたくさんいるから。」
ミカは少し考え込むようにして答えた。
「確かに、これを知れば救われる人も多いかも。でも、まずは私自身がもっとしっかりと学んで、実践を続けないとね。」
ユウはうなずきながら、ミカの話に感心した様子だった。
「ミカ、本当に変わったよ。前はどちらかというと、自分のことを後回しにしてたじゃない?でも今は、自分を大切にしている感じが伝わってくる。」
その言葉に、ミカの胸の中に温かいものが広がった。
ランチの後、二人は近くの公園を散歩することにした。歩きながら、ミカは自然の中に身を置くことで、自分がどれほどリフレッシュできるかを改めて実感した。
「ユウ、少し試してみる?」
ミカはなんば歩きを提案し、ユウと一緒に実践してみた。
「右足と右手を一緒に動かす……え、難しい!」
ユウは笑いながら何度か試みたが、最初はぎこちない動きになってしまった。
「最初はそうなるよ。でも、体が慣れると自然とできるようになる。力を抜いてみて。」
数分後、ユウも少しずつコツをつかみ、自然に歩けるようになった。
「これ、思ったより気持ちいい!なんだか体が一本の線でつながってる感じがするね。」
ミカは微笑みながら答えた。
「そうなの。こういう動きが私たちの体に元々備わってるんだよね。ナギさんに教えてもらうまでは気づかなかったけど。」
夕方、公園を後にするとき、ユウは満足げに言った。
「今日は本当にいい時間だったよ。ミカ、ありがとう。私もこれから少しずつ取り入れてみる。」
ミカは微笑んで頷いた。
「無理しないで、少しずつでいいからね。大切なのは、自分の体と向き合うことだから。」
ユウと別れた後、ミカは夕日に染まる街並みを眺めながら歩いた。学んだことを自分の生活に取り入れ、さらにそれを他の人にも伝える。そんな日々が、自分らしい生き方に繋がっていると感じた。
「ナギさんのおかげで、新しい自分に出会えたな。」
ミカの歩みは軽やかで、しっかりと地面を捉えていた。それは、体と心が自然と調和した証だった。
動きが紡ぐ生命の調和 まさか からだ @panndamann74
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