人魚の島

大学一年生の雫は冬休み、大学の同期で彼女の水森（みずもり）リナと一緒に、蛇の島と呼ばれている月白島（つきしろじま）にフェリーで向かった。
蛇好きな彼女が島に行きたいと言ったからだ。

そのフェリーの中で、雫（しずく）は十歳ぐらいまで何度も見ていた怖い夢を見る。
雫は夢のことをリナに言えずにいた。

フェリーが島に着いた。

曇天（どんてん）の下、潮風に背を押されながら島に一歩足を踏み入れた瞬間、雫の体が熱くなり、ぶわっと涙があふれた。そんな自分に戸惑いながらも足を進める。
風が強く、後ろに人がいるので立ち止まるわけにはいかないのだ。