プロローグ2 ~中ボスと街~

翌日に笛を使う事とし、今夜は街へ戻ってギルドで色々と説明して、そのあとイアの泊まるとこも一緒に探さないといけないな

「大丈夫かな…僕、魔族だし泊めてくれるだろうか…」

「なんとかするよ。宿だったらアテは沢山ある」


色々なとこに泊まり歩いてるので宿屋定員の顔見知りが多い。見知った人の中で泊めてくれるとこを探そう


「ギルドも…なんか心配になってきた」

「人が多く集まるところだからな。幸い夜も大分更けてきた頃だから人は少ないだろうけど、なるべく他の人に見られないようにしないと」

「…うん」

「街もこの時間帯は人が出歩かないし、多分大丈夫」


森を抜け、街が見える平原に出た

「街だね…」

「怖いか?」

「怖くはない、僕の故郷もこれくらい大きくて栄えてる…親近感」

「そうなんだ、意外と俺たち人間とは暮らしもそんなに変わらないのかもな」

「僕のとこはこんな時間でもうるさいけどね」


魔族は夜行性と聞く。そして陽の光を好まない種族が多いらしい

「僕は夜行性の種族…とは言っても早寝するからあと3、4時間したら寝るけど」


ステータス画面を開き右下に書いてある時計を見た

もうすぐ23時になる頃だった

…因みにステータス画面は見たい時に見たいと思えばいつでも目の前に現れる半透明のホログラム画面だ


「もうこんな時間だったか」

「夜遅くまでお勤めご苦労さま」

「夕飯食べたあとに依頼受けたから大分早い方だよ」


会話してるうちに街へ到着していた

大門の前にいる門番の人に事情を説明した

「この子魔族なんだけど、街に入れてもらえるかな…?」


すると門番の人はゆっくりと目を上下に動かし、イアの角から足まで体を見ている

やがてうーん…と門番の人は唸った

「一応上の人と相談してみるけど、あまり期待はしないでおくれよ…」


門番の人は「少し待ってて」と急いで大門の脇の詰所へと走っていった



5分くらいで戻ってきた門番の人は複雑そうな顔をしていた

「通していいらしいけど、その代わり"鍵付きの魔封じの腕輪"を装備しろってさ…なんだか悪いね」


イアは首を横に振った

「いえ、寧ろこの程度の処置で助かりました」

「しっかりした魔族だねぇ…こんな子が多ければいいのになー」


イアは受け取った腕輪を装備し、門番の人に軽くお辞儀をした

「色々とありがとうございます」

「いいって事よ。鍵は俺含め同僚が持ってるから、街から出る時は言ってくれよ…と言っても俺たちは朝6時から夜中0時までの間だけいるから、その時間に言ってくれ」

「分かりました」

「おう、楽しんでけよー」


俺たちは街中へと入っていった



「いい人でした」

「魔族相手だからというか、イアだからだろうね」

「どういう事?」

「…人間と変わらない雰囲気を纏ってるからじゃないかな」

「?」

「俺もイアだから、ここへ連れてきたんだ」

「なるほど…?」


納得がいってない様子だけど、上手く伝えにくい…

街の大門からすぐ近くにギルドがある為、歩いてすぐに到着していた


扉を開け、中へと入る

「―――あ、ヴァルフさん!」

ヤアコにカウンターから声をかけられた。資料を片手に持っている様子から事務仕事も並行していたようだ


「終わったよ」

「さすがです。ヴァルフさんならやり遂げると信じていましたよ」


受け取っていたクエストスクロールをヤアコに渡した

「……あれ?クエストクリア扱いになってませんよ?」

「それなんだけど―――」

「僕が説明するよ」

後ろから割って入ってきたイア


「あなたは……って魔族ですか!?」

「まぁ…色々訳があって」

「訳?———て事は察するにこの人、討伐相手の中ボスですか!?」

「声がデカい…そんなに声出るんだな」

小さい声で話してるとこしか見た事ない俺はそっちに驚いてしまった


「あの…」

「は、はははいなんでしょう!」

ガチガチに緊張してる…大丈夫か?


「中ボスという立場が退屈だったから丁度いいと思って一緒に来た」

「はぁ………なるほど……」

自分を落ち着かせるのに精一杯の様子のヤアコ


「…信用、してもいいんですよね?」

「ああ、多分問題ない」

「多分って…知りませんよ問題が起こっても」

「問題は起こさないつもり」


複雑そうな顔をしつつも何とか飲み込んだ様子

「ふぅ…分かりました。…報酬は出ますけど、ターゲットであったあなたは、中ボスである事を隠した方がいいでしょう」

「わかってる。面倒なのは嫌だから」


「それに、あなたはもう討伐ターゲットに選ぶ事は禁止されてるので、また敵に寝返っても依頼として出る事はないでしょう」

「不正稼ぎを防ぐ為のだったか」

「ヴァルフさんはそんな事しないのはわかってますけど、一応言っておきました」


そこまで信用してくれる人がまだカウンターに居てくれて本当に助かった。もし他の人だったらややこしい事になっていただろう


「…それで、確認しますがこの街には何をしに来たのですか?」

当然の疑問。俺もただ何となくで着いてきた訳でない事くらいはわかるし、知っておきたい


イアはゆっくりとこっちに指をさした

「ヴァルフが気になって着いてきた」

「…っ!?つ、つまりそれはヴァルフさんに惚れたということで…?」

「うん、それ」


本当にそうだろうか。俺には他の目的があるように思えた

「………」

イアはこっちをずっと見つめて目を伏せ、ため息をついた


「…もう休みたい」

「0時過ぎたか…悪いなこんな時間まで」

「いいですよ、閉店時間を過ぎてまで仕事する事だってありますし…」

それは本当にお疲れ様だ




ヤアコに挨拶しギルドから出た俺たちは、近くの宿屋に訪れた

あっさりと部屋を貸して貰えた。条件付きで


「イアはいいのか、一緒のベッドで寝ても」

「問題ない」

平然とそう言ってのけたので、本当に何とも思ってないんだろうな。男として認識されてないと思うと少し悔しい


「正直、俺は緊張してる」

「別に寝首を掻いたりしないよ」

「その心配はしてなかったんだけどな…」

「…僕が魔族だから?」

「女子だからだよ。ひとつのベッドで寝たことなかったから…」

「………」


なんて女々しい事を言ってしまったんだろうと今更ながらに思った。幻滅してしまったのだろうか、イアは黙ってしまった


「…寝る」

「…そうするか」

瞼を閉じ、疲れからかすぐに眠りについた

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中ボスの魔族女子と英雄になるクール系男子 夏輝 陽 @Hinata_Natsuki

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