第6話 ヒミツの四人組

 こ……この声は。


 聞き覚えのある声と共に、私たちの前に水の壁ができ、ウシブタキングの攻撃が跳ね返される。


「大丈夫ですか、お二人とも」


 私たちの元へ駆け寄ってきたのは、見覚えのある黒髪ウサギ耳、マユだ。


「う、うん」

「大丈夫……だけど」


 その後ろからは銀髪猫耳のツキがトコトコと走って来る。


「……待ってて。今、焼き払う」


 ツキがウシブタキングに手をかざす。


地獄の業火ヘルフレイム


 一瞬のうちにウシブタキングは真っ赤な火に包まれる。


 私とアイナがポカンとしていると、ウシブタキングを倒し終えたマユとツキがくるりと振り返った。


「実は私たち、料理のための炎魔法だとか、お洗濯のための水魔法を毎日使っているうちに、いつのまにかかなりレベルが上がってしまっていたみたいなのです」


「……このことは、みんなには内緒にして」


 困り顔をするマユとツキ。


 私とアイナは顔を見合わせた。


「うん……」

「もちろん……」


 なぁんだ。


 私たち、みんな同じだったんだ。


 ピコーンピコーン。


 電子音が鳴り響き、アナウンスが流れる。


『ボスが討伐されました。景品のウシウシアックスとブタブタの防具を付与します』


 あ、そういえば景品なんてあったんだ。


「どんな武器ですか?」

「見せて見せて」

「使えそうなやつー?」


 三人でウシブタキングを倒したツキに駆け寄る。


「……今、出してみる」


 ツキがポチリと目の前の空間をタップすると、プレゼントボックスに入っていたウシウシアックスとブタブタの防具がドサドサと目の前の地面に排出された。


「う……これは」


 私たちは目の前に現れた武器と防具を見て絶句した。


 ウシウシアックスはリアルな牛の顔がドーンと前面にあしらわれた大斧で、ブタブタの防具はこれまたリアルな豚の顔があしらわれた鎧だったのだから。


 はっきり言ってかなり悪趣味。


「……何これ」

「ダサッ」

「これはまたずいぶんと……個性的ですね」


 するとウシウシアックスを手に持ったツキがくるりと私の方へ振り返った。


「……これ、メイにあげる」


「ええっ、何で私!?」


 私が後ずさりすると、アイナとマユも笑顔で同意する。


「いいじゃん、だってアンタ、ちょうど斧が壊れたところだったし」

「あらそうだったんですの? もしかしてそれでウシブタキングを倒そうと?」


「ち、違う!」


 私が必死に否定するも、ツキは二人の言葉を聞いて納得したようにうなずいた。


「……そう。ならちょうどいいね」


 そしてプレゼントボックスをタップすると、クソださい斧と防具を私に送り付けてきた。


「ええええーー! 嘘でしょーー!?」


「良かったじゃん」

「メイさんにぴったりですわ」

「……大事に使って」


 ニコニコ嬉しそうな三人をよそに、私は頭を抱えた。


 嫌だ、絶対に嫌だ!!


「可愛くないのは絶対に嫌ーーーー!!」


 私は声の限り叫んだ。


 こうして私の可愛いゆるふわファンタジーライフに似つかわしくない、クソダサ武器と防具が手に入ったのでした。


【完?】


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女子4人ゆるファンらいふ! 深水えいな @einatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画