第5話 ボス襲来
「カフェ・レーヴ開店でーす‼」
私が鐘を鳴らすと、どこからともなくお客さんたちが集まってきた。
「コーヒーとケバブ風サンドください」
「カフェオレとクレープ二つ!」
「お姉さん、ケバブ風サンド三つね!」
次々と注文される品。それを持ってお客さんたちが向かった先は、先ほどの掲示板だ。
「うしぶたシリーズか。久しぶりの新武器と防具だな」
「どうする? 参加する?」
「でもちょっとこの防具ダサくね?」
お客さんたちが掲示板を見ながら口々に言い合う。
実はみんなの目当てはこの掲示板。
この辺りにはゲームの情報を得られる掲示板が少ない。
だから私たちは掲示板にカフェを併設して、掲示板を見る人たちに商品を売りつけているってわけ。
つまり新ミッション発令の今こそが稼ぎどき。頑張って稼がなくちゃ。
私たちは必死にケバブサンドやコーヒーを売り捌き、気がつけば時刻は夕方になっていた。
「はあ、疲れた」
私が床に倒れこむと、ツキもクッキーの在庫を確認しながらため息をついた。
「明日も忙しくなりそうね」
「ええ。クッキーもサンドイッチもたくさん用意しておかないとですね」
マユがゴミをまとめながら笑う。
「……ってことは」
私とアイナは同時に叫んだ。
「明日も狩りに行かないといけないってこと~!?」
もう、勘弁してよ!
***
「全くもう、何でこんな朝早くからくっさい獣を追いかけなくちゃなんないのよぉ」
ぶつくさ言う私のそでを、ちょいちょいとアイナが引っ張った。
「ねえ、私に良いアイディアがあるんだけどさ」
ニヤリと意味深な顔で笑うアイナ。
「なによ。まーた良からぬことを考えてるんじゃないでしょうね」
「えーっ、いったいいつ私が良からぬことを考えたっていうのよぉ」
「いつもでしょーが」
私が腰に手を当てて呆れていると、アイナはクククと声を漏らして笑った。
「まあまあ、お聞きなさいな。あるでしょ一つ。大量のウシブタ肉を手に入れる方法が」
「まさか……」
「そのまさかよ。私たちでウシブタキングを倒しちゃえば大量のお肉が手に入ると思わない?」
「そ、そりゃそうだけど」
「実はアイナ、森で鳥や獣を採ったりしているうちに結構レベル上がっちゃったんだよね。だからボスもメイと力を合わせれば倒せると思うんだ」
確かに二人で力を合わせればボスくらいは倒せるかもしれない。
でもそれだと、私が強くなりすぎてるって他の人にバレちゃうかも……。
私が葛藤していると、急に耳をつんざくようなアラーム音が鳴った。
ビーッ、ビーッ、ビーッ。
『ボスが現れました』
ボス!?
「ウシブタキングかも。行ってみよっ」
アイナが走り出す。
「あっ、ちょっと待ってよ!」
仕方なく私もアイナの後をついて走っていく。
ほどなくして、紫色のオーラに覆われた、普通のウシブタの三倍は大きいウシブタキングの姿が見えてきた。
「なんか……キモッ」
アイナが口にする。
確かに色は紫色だし、口からはヨダレがだらだらと垂れ、目もイッちゃってる。
「あれ、食べれるのかなあ」
正直、かなり食欲が失せる見た目なんですけど……。
「それはやってみなくちゃ分かんないっしょ」
アイナが弓を構える。
「でやっ!」
アイナが放った矢はウシブタキングに突き刺さり、ウシブタは「チギャァ!」と声を上げる。
「お? いけるんじゃなーい?」
アイナが私の方へ向き直ったその時、ウシブタキングがものすごい勢いで突進してきた。
「うわああああああ!」
私は斧を構えてウシブタの攻撃を受け止めた……が。
ボロッ。
ゲームに閉じ込められた当初から使っていた愛用の斧にひびが入る。
そんなあ。一緒に木を伐り出し、家を建て、カフェのテーブルやイスを作り苦楽を共にしてきた斧ちゃんが……。
「げっ、このタイミングで壊れる!? 予備の武器は?」
アイナが叫ぶ。
「ない」
私が首を横に振ると、アイナの顔が青ざめる。
「と、とりあえずボス戦から離脱して出なおそっか。離脱ボタン離脱ボタン……っと」
だがアイナが離脱ボタンを押す前に、ウシブタキングはくるりとこちらへ向かってきた。
「うわあああ、こっちに来たあああ」
「向かってきたあああああ!」
抱き合う私とアイナ。
死を覚悟した次の瞬間、真っ白な光が辺りを包んだ。
「
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