第4話 ケバブ風サンド

 ツキはふむふむと料理本をめくり、提案した。


「カフェで出せるような料理……それならケバブ風焼き豚はどう。パンに挟んでサンドイッチにするの」


 私は口からヨダレがこぼれ落ちそうになりながら叫んだ。


「うわあ、美味しそう!」


 マユとアイナもうなずく。


「いいですね、それ」

「さんせーい!」


 そんなわけで、今日のメニューはウシブタのケバブ風サンドに決まった。


 私は愛用の大斧を取りだした。

 

「そうと決まれば……てやっ」


 近くの手頃な木を切り、ナイフで削ってあっという間にウシブタ肉を刺す串を作る。


「うわあ、相変わらず器用!」


 アイナが感心したように目を見開く。


「えへへ。でしょ?」


 今まで家や家具を作るために、斧スキルや刃物スキルをひたすら磨いたからこういうのを作るのには自信があるんだ。


 私が得意になりながら串にウシブタを挿していると、ツキが呪文を唱え、魔法で火を起こしてくれた。


「……火、起こしておいた」


 さすがは料理担当のツキ。炎魔法ならお手の物だ。


「わっ、サンキュ」


 私がツキの肩を抱くと、ツキはポッと顔を赤くし、そっぽを向いた。


「……別に、大したことじゃない」


 全く、素直じゃないんだから。まあ、そこが可愛いんだけどね。


 私は大きなお肉を串に挿し、くるくると回しながら焼いていった。


 あっという間に香ばしい匂いが漂ってくる。


「ん〜〜いい匂いっ!」


 アイナが背伸びをして鼻をクンクンさせる。


「ねぇねぇ、ちょっと味見していいかな?」


 私は小刀でお肉を削ぐと、塩を振って一口頬張ってみた。


「うーん、美味しい!」


 お肉が香ばしくて、ほっぺがとろけそーう。


 こういうのでいいんだよ! こういうので。


「えーん、アイナも一口、アイナも一口!」


 アイナがツインテールを揺らしてぴょこぴょこ飛び跳ねる。


「仕方ないなあ。はい、あーん」


「あーん」


 二人で味見をしていると、ツキが庭の菜園からどっさりと野菜を抱えてやってくる。


「……レタスとトマト、いる?」


「「いるー‼」」


 二人で同時に返事をすると、奥からパンの袋を抱えたマユがやってきてクスリと笑う。

 

「この前作ったソースとパンもありますよ」


 マユがパンとソースを持ってきてくれたので、皆で手分けしてウシブタ肉サンドを作ることとなった。


「いっただっきまーす!」


 大きな口で一気にサンドイッチを頬張る。


 モチモチのパンに、ジューシーなお肉、フレッシュな野菜と甘辛いソースとの相性が抜群だ。


「んー、美味しい!」


「次のカフェメニューに決定ですね」


 横にいたマユがミーニャさんにお肉の切れ端をあげながら微笑んだ。


 くーっ、これだよこれ!


 おいしいお料理に、仲良しな美少女たち!


 私の憧れの日常系アニメみたいで最高!


 ――ピロン。


 と、そこへ空いっぱいに大きな電子音が鳴り響いた。


『新たなミッションが追加されました』


 続いて合成音声が告げる。


「このタイミングで!?」


 私たち四人と一匹は、お店の前に飾られている大きな黒板の前へと急いだ。


『新ミッション――ウシブタキングを捕獲せよ』


 黒板には、キラキラ光る白い文字でそう書かれていた。


「ウシブタキング?」


 私たちは口を揃えて叫んだ。


「ウシブタキングってなんでしょう」

「ウシブタの王様じゃない?」

「そのまんますぎー!」

「……新しいボスかも」

「にゃん?」


 私たち四人と一匹は、掲示板に近寄ってミッションの内容をよく見てみた。


 ミッションは、どうやらウシブタキングというウシブタのボスみたいなやつを退治しろという内容らしい。


「ミッションクリアの報酬は「ウシウシアックス」っていう武器と「ブタブタの防具」っていう防具らしいよー」


 アイナが掲示板をタップし、細かい情報を教えてくれる。


 うしうし……? ぶたぶた……!?


「なんかダサッ! 絶対いらない」


 私が叫ぶと、横でアイナも腕を組んでうなずく。


「そうだね。今回はパスかも」


「でもウシブタは美味しいですし、退治するだけでも結構なお金になるモンスターだから人気ミッションになりそうじゃないですか?」


 と言ったのはマユだ。


 私もケバブ風サンドにかぶりつきながら同意した。


「なるほど、確かにそうかも」


 ウシブタキングって一体どんな味なんだろう。


 何人分のケバブが作れるのかな?


「それより、新ミッションが公開されたし、そろそろお店を開かないと」


 ツキが紫色のワンピースの上にメイドエプロンを付けながら言う。


「そうだね、急がないと!」


 私も急いでケバブサンドを頬張ると、赤いメイド服に着替えた。


 このメイド服は、マユが作ってくれた、ここカフェ・レーヴの制服なんだ。


 私は赤の制服で、アイナはオレンジ。マユは水色で、ツキは紫。


 四人それぞれの髪や目、雰囲気に合った色のメイド服で、フリルやリボンがたくさんついててすごく可愛いの。


「カフェ・レーヴ開店ですよー‼」


 私はカフェの開店を告げる鐘を鳴らした。

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