第3話 カフェのメンバー
「まてまてお肉~~!」
「逃がさない!」
アイナが高速で飛びながら弓を構える。
「ていっ!」
アイナの撃った矢は黄色い光をまとい、ウシブタの足にヒットした。
「ピギッ」
足を撃たれたウシブタが動きを止める。
「ナーイス!」
その隙に、私は大きく斧を振り下ろした。
「でやっ!」
「ピギイイイ!」
斧を振り下ろすと、ウシブタブタは悲鳴をあげて、マンガみたいな茶色い骨付き肉に変わった。
「わーい、やった! お肉、お肉!」
「お肉☆ お肉☆ お肉☆ お肉ぅ♪」
私とアイナが抱き合って飛び上がっていると、急に機械音声が聞こえてきた。
『おめでとうございます、ボスを倒しました。獲得経験値は――』
「あれっ、メイ、なんかレベルアップしてない?」
アイナがきょとんとした顔をする。
「いーのいーの」
私は一応ウインドウを開き自分のステータスを確認すると、すぐにお肉に視線を戻した。
「今はお肉のほうが大事だもん!」
そう、私はここでゆるふわ日常系ファンタジーライフを送るって決めたんだ。
ボスも経験値もクエストも関係ない。女の子だけでまったり暮らす!
ゲームクリアなんて絶対にしないんだから!
***
「はあ……はあ……重ーーい!」
ずっしりと重いウシブタを背負いながら、家への道のりを歩く。
「頑張って、メイ! ファイト☆ ファイト☆」
横からアイナがツインテールをぴょこぴょこ揺らしながら応援の声を上げる。
私はキッとアイナをにらんだ。
「ファイト☆ じゃなくて、少しは運ぶのを手伝ってよ。お肉食べたいって言い出したのはあんたじゃん」
私が文句を言うと、アイナは「えー?」と口を尖らせた。
「だって重いし臭いしぃ。か弱いロリ系美少女のアイナには相応しくないっていうかぁー」
そう、マンガ肉になったとはいえ、ウシブタ肉は重かった。そして、ほんのりと獣臭かった。
ゲームの世界なんだから、こんな変なところでリアリティ出さなくてもいいのに!
クソ~! 運営め~~!
「私だって重いし臭いっつーの! ……おええええ」
私が吐きそうになっていると、アイナも顔をしかめた。
「でもメイは怪力スキルあるし……おえええ……」
確かに、情報収集や回復魔法が得意なアイナより、狩りや戦闘が得意な私のほうが力はある。
でもちょっとは手伝ってくれても良くない?
私とアイナは吐きそうになりながらもようやく家までたどり着いた。
「あらあら、これはどうしたことでしょう。美少女二人が獣臭くなりながらお肉を担いでいますわ」
うさ耳少女のマユがドアから出てきて長い黒髪をかき上げる。
彼女はここの三人目のメンバーのマユ。
お裁縫と可愛い女の子が大好きで、メンバーみんなに可愛い衣装を作ってくれるんだ。
腕の中では黒猫のミーニャさんが「にゃあん」と声を上げた。
「どうしたもこうしたもないよ!」
私はドサリと巨大ウシブタを麻布の敷いてある地面に投げ捨てた。
「アイナが『私、お肉が食べたい気分~!』とか言うから二人で狩りに行ったのに、私にばっかりウシブタを持たせるんだもん!」
「だってメイだって食べたいって言ってたじゃんっ」
口を尖らせるアイナ。
私たちが言い合いをしていると、住居兼カフェの中から銀髪ショートカットの猫耳少女が伸びをしながら出てきた。
彼女はカフェの最後のメンバーのツキ。
読書が好きでちょっぴり無口なんだけど、料理が得意で草花の栽培や魔法にも詳しいんだ。
「……朝から何の騒ぎ」
朝が弱いツキが不機嫌そうに目をこする。
「私とメイ獲ってきたの」
アイナがツキに説明する。
「でもこのウシブタどうしましょう。せっかくだからカフェで出せる料理にしたいですわね」
マユがしげしげとウシブタを眺めながらつぶやく。
猫のミーニャさんもマユの腕から飛び降りるとウシブタのにおいをフンフンとかいだ。
実は私たちはここで「カフェ・レーヴ」というカフェを経営しているの。
美味しい軽食と可愛い制服の女の子がおもてなしするってのが売りの可愛いお店。
美少女たちと愛らしい猫に囲まれて、綺麗なお洋服を着たり美味しいお料理を食べたり。
あー、なんて素敵なんだろう。
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