クロノスの目

第11話 星の子供たち (2)

私が知覚する世界は劇的に変化していた。全ての色が飽和したように見えた。赤はより赤く、青はより青く、黒はより黒くなった。鮮やかな色彩が印象派の絵画のように混ざり合っていた。

その時、私の視界が霞み、心は軽やかでありながらも明晰だった。意識の海に浮かぶ漂流者のような感覚だった。

徐々に、周囲がより知覚できるようになってきた。全ての色が元の状態に戻る中、灰色がかった霞が立ち込めていた。私の周りには、描写が難しい物体があった。物理的な次元に存在しないように見える透明な物体があった。背景には、様々な色の純粋な光の集まりが見えた。この光は独自の生命を持っているか、私には完全に理解できない膨大な知識を含んでいるように見えた。

突然、何かに気づき、それが私の意識を急激に沈め、私と融合させた。霧は急速に消え、色彩は通常の状態に戻った。明るく澄んだ後光と存在しない物体は瞬時に消えた。

部屋の光景は正常に戻ったが、頭が膨らむような感覚があった。まるで頭を引きちぎられそうな感じだった。見えていたものには数え切れないほどの残像があった。耳は空気のようなざわめきで圧倒されていた。眉をひそめ、素早く首を振った。

「視界が異常？前には聞こえなかったものが聞こえる？」と母が私の傍らで、控えめな笑みを浮かべながら言った。

「いいえ、もう大丈夫です、ママ」私は自分の体を見て、何も異常がないことを確認した。手足を動かしながら、期待と疑いの入り混じった声で尋ねた。「できたの？私は今、昇星者として認められる？」

母は水銀の鏡のような板を取り出し、私の前に置いた。

「目を見てごらん」

私は注意深く見つめ、目の色が違うことに気付いた。私の輪郭は際立ち、顔の特徴は普通に見えた。汗で顔が覆われている以外は、何も変わっているようには見えなかった。母の指示に従って、慎重に目を見た。そのとき初めて、私の青い目がより深い、紫がかった色合いに変わっていることに気付いた。

「これは通常あなたのクラスの力の物理的な現れですが、あなたのは異なるように見えます。教えてください、以前持っていなかった能力を感じますか？」

私は集中して、心の中を探ってみました。「そうではないようです。」

母は考え深げに顎に手を当てました。「不思議ね。生まれつきの能力のように見えたのに。」

「お母さん、生まれつきの能力って何？」

「生まれつきの能力とは、生まれた時から形成される能力のことよ。これらの能力は生まれた時から固定されていて、変更したり他人に教えたりすることはできないの。使用者の体、特に前頭前皮質右側に先天的に刻み込まれているわ。」

「へぇ、すごく特別そうだね。ところで、姉さんのアナスタシアは生まれつきの能力を持っているの？」

アデレードは不思議な笑顔で私を見ました。「もちろんよ。とても珍しいけど、アナスタシアも生まれつきの能力を持っているわ。間違いなければ、その名前は『竜の目覚め』よ。」

「なるほど」私は無意識に鼻筋をこすりながら、受け取った情報を全て処理しようと頭の中で考えを巡らせました。

その時になって初めて、私がどれほど疲れていて、いつでも眠りに落ちそうだということに気付きました。まるで三日間起きていたかのように頭が痛かったのです。

母は小さく笑って言いました。「坊や、休まなきゃだめよ。ご存知の通り、目覚めは簡単ではないわ。体と心への負担が大きいから、体が慣れるまでもう少し睡眠が必要よ。今は帰って、ゆっくり休んでね。明日また教えることがあるわ。」

朝早く、家族の朝食の時間は温かい雰囲気でした。窓を開けると、鳥のさえずりが聞こえました。翌日、アデレードは朝から忙しく、曲がった台所から包丁で物を切る音が聞こえてきました。

「子供たちは元気かい？」父のアトラスが特徴的な笑顔で挨拶するのが聞こえました。

本当に幸せな日々でした。これだけで幸せになれるはずでした。

「なぜ前にそれが分からなかったのだろう？」

最も普通の日々が最も大切で、過ぎ去った幸せを思い出して涙を流すのはそのためです。それが人々の日常生活なのです。

この平和な日々とこの普通の生活が奪われて初めて、このことが分かりました。

朝食を待ちながら、私は食事の準備に専念する母を観察しました。母は家全体のレトロな雰囲気に合わせたエプロンを着けていました。布地に施された薔薇色のハートは、流し台のセラミックタイルと調和していました。

アナスタシアはカウンターから見つめていました。

「みんな、食べに来てね。具合が悪い時は、おいしいものを食べる必要があるのよ。」母が用意したのは濃いスープのようなものでした。

「わあ！いただきます！」アナスタシアは興奮して走り寄り、椅子に座りました。

アデレードが彼女の分を注ぐと、アナスタシアはスープを一さじすくって、身体を硬くしました。

そして突然、輝くような笑顔を見せました。

「くぅ、やっぱり...美味しい！」そして彼女は夢中で食べ始めました。

私は食事をしながら周りの甘い雰囲気を観察しつつ、従順にうなずき、結婚というのは本当に素晴らしいことだと思いました。

愛は一瞬一瞬を特別なものに変えていました。

母はスプーンを手に持って、父に向かって言いました。

「はい、『あーん』って言ってください」といたずらっぽい笑顔で。

父は少し恥ずかしそうに答えました。

「おい、子供たちが見ているぞ...」父が緊張するのを見るのは珍しいことでした。

そして母は私たちを見て付け加えました。

「お母さんとお父さんはとても仲が良いでしょう？子供たち。」

アナスタシアと私は同時に答えました。

「ああ、はい...そうですね」そして互いを見て笑いました。

この人生で私は常にこれを経験していました。完全に私を包み込む充実感。

突然、私は時間が過ぎ去っていくような、重苦しくストレスフルな感覚に圧倒されました。

「この奇妙な感覚は何を意味しているのだろう？」

私はテーブルに座り、目の前にはスプーンを持って微笑む両親がいました。

彼らがどれほど幸せそうかを見て、私はただため息をつき、愛は本当に魔法のようだと実感しました。