緻密世界で描く航海譚。深い人間ドラマと迫力の海戦が魅力!
- ★★★ Excellent!!!
未踏の大海原へと船を進める、胸躍る冒険と濃密な人間ドラマが詰まった壮大な航海譚。
本作は異世界を舞台に、海軍革命を成し遂げた王女アンネリーベルが未知の新大陸を目指して船出する物語である。海戦や外交、政治や技術革新といった硬派な要素を、極めて緻密に、かつリアルなタッチで描いている。海戦描写は緊迫感に満ち、魔導砲や魔導レーダーといった独自のテクノロジーが鮮やかな色彩を添える。細部まで行き届いた世界設定は圧巻で、読者を飽きさせることがない。
物語のもう一つの柱は、主人公アンネと副官ファルナが織りなす、繊細かつ濃厚な百合の関係性だ。単なる恋愛にとどまらず、権力、信頼、葛藤が絡まり合った深みのある人間関係が描かれており、作品のスパイスとなっている。
全編を通じて展開される政治的駆け引きや艦隊の戦略行動は緻密でスリリング。特に黒魔力嵐の突破、新大陸上陸時の先住部族との接触、遺跡攻略といったハイライトシーンは、ページを繰る手が止まらないほどの魅力がある。
単なる冒険譚や異世界ファンタジーの枠を超え、深い人間ドラマと説得力ある世界設定が融合した秀作である。重厚かつ読み応えのある作品を求める読者に、自信を持って薦めたい。
新章の航海が始まる日を楽しみに待っている。作者に最大のエールを贈りたい。