「ヒーローになりたい」と願いながらも、教室では舌を噛んでクラスに溶け込めないクロエ。そんな彼女が、夜になると黒衣に身を包み、寮の屋上から校舎の屋上へ影を伝って跳び移り、満開の夜桜を見下ろして自撮りし、「ばあちゃんの薔薇も好きだけど、こっちの桜も綺麗です」と画像を送る場面がとても好きでした。人付き合いは不器用なのに、人助けのときは迷わず影の力を伸ばし、クラスメイトの白亜を救い、異空間で魔獣と人間の残酷な関係に立ち向かう。群島連邦、異能史、AZテックといったスケールの大きな設定の中で、「ひとりの少女が、それでもヒーローであろうと足掻く物語」として読めるのが、この作品のいちばんの魅力だと感じました。黒衣の姫が、夜ごと躓きながらも少しずつ「ヒーローへの道のり」を進んでいく姿を、これからも見守りたくなります。