本を買う手が震える、作る人みんなの味方な実話エッセイですよ読むべし!!
- ★★★ Excellent!!!
本好きなら一度は妄想したことがある、「このレジの人が、今買った本の作者だったら」という夢。それを実際にやらかして(?)しまったのが、このエッセイの作者です。ゲーム会社から地元の書店に転職し、自作小説の書籍化が決まっても、彼女はしれっと本屋の店員を続けます。平積みされた自分の本がじわじわ減っていき、ある日とうとうレジにその本を持ってくるお客さんが現れた瞬間、内心で「えっ、それ買うの!?」とパニックになりつつ、顔には出さず、いつもよりほんの少しだけ丁寧に会計をして、心の中で一万回お礼を言う。名乗ることも、ドヤ顔することもなく、ただ「買ってくれてありがとう」と震える作者視点が、とても愛おしくて笑えて、ちょっと胸にくるんです。
以降の話では、昔書いた同人小説を何年も前に読んでいた海外の友人との「世界狭すぎ」な再会や、ラスベガス旅行、サ◯ラ大戦愛が仕事につながったエピソードなど、創作とオタク活動が思わぬ形で人生を彩っていく様子が、軽やかな筆致で綴られていきます。第4話まで読んだ今、「本を買う」というささやかな行為の向こうに、こんなに豊かなドラマが広がっているのか、と本屋に行くたび少しそわそわしてしまうはず。作る人にも読む人にもそっと寄り添ってくれる、あたたかくて愉快な実話エッセイです。